2016 Fiscal Year Annual Research Report
成長期男女サッカー選手の成熟度を考慮した運動能力発達と成熟度簡易評価指標の検討
Project/Area Number |
16H03237
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
広瀬 統一 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (00408634)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発育発達 / 成長期スポーツ / 子ども / 成熟度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では成長期エリートサッカー選手の各種体力要素の発達を横断的・縦断的に検討し、成熟度の遅速も加味したトレーニング方法立案の科学的基盤を構築することを目的とする。初年度は各種運動能力、方向転換動作の年代差と性差を横断的に明らかになることとした。本研究は4つのカテゴリーで構成されており、今年度は「男女サッカー選手の方向転換動作のキネマティクス分析・横断変化」として成長期男女サッカー選手60名(男子40名、女子20名)の方向転換動作時のキネマティクス、特に方向転換時の減速期、停止期、再加速期の下肢関節の振る舞いと重心変化を年代毎、身長急増年齢(PHVA)で評価した成熟度間で比較した。また「男女サッカー選手の体力・運動能力の横断的変化」として11歳から成人までの女子選手160名、男子選手162名のスピード(10m、40m)、筋パワー(5段跳び)、方向転換スピード(10mx5CODテスト)、間欠的運動能力(Yo-Yo Intermittent recovery test level1/2)、身長、体重の横断的比較を行った。また「女子サッカー選手のMaturity Offset法の信頼性の検討」として12歳から18歳の男女サッカー選手を対象にMaturity Offset法とBTT法で評価したPHVAの差を検討した。さらに「各年代のリファレンスデータの構築」のために、成長期から成人までの各年代の代表選手およびトップリーグ選手の運動能力測定を、男子選手240名、女子選手200名を対象に実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究実施状況はおおむね順調に進んでいる。ただし初年度の測定は研究計画立案時に予定していた被験者数の80%程度の実施率であるため、継続して被験者数の増大を試みる。下記に初年度の研究成果で特筆すべき結果と進捗状況について報告する。 「男女サッカー選手の方向転換動作のキネマティクス分析・横断変化」では、男子は5mの往復走、女子選手は10mの往復走を課題として測定を行った。方向転換動作時の切り返し足の反対足着地時から切り返し足着地時までを減速期、切り返し足着地時から膝関節最大屈曲時までを停止期、膝関節最大屈曲時から切り返し足離地時までを再加速期とし、各期の膝・股関節角度、重心位置、そしてこれらの各期間の変化量を測定した。これらを説明変数、往復走タイムを独立変数として重回帰分析をおこなった結果、往復走タイムの関連因子として男子では減速期の重心速度変位量(β=0.520)及び左足離地時重心速度(β=0.372)が抽出され、女子では重心変位量が抽出された。これらは減速期に重心速度を急激に減速させること、あるいは重心位置を急激に下げることが方向転換速度を速めることに貢献することを示すものと考えられた。一方、年代間および成熟度間で比較すると、これらの要因は年齢依存的に変化し、男子において身長急増期(PHVA)前では減速期の重心高変位量が影響し、これを生み出すものとして膝関節屈曲筋群の遠心性収縮力が影響している可能性が示唆された。一方、PHV中には重心速度変位量が大きいものほど方向転換速度が速いことが示され、これを生み出すものとして足関節および膝関節の屈曲角度変位が影響している可能性が示唆された。これらのことはPHVA前では筋機能変化が動作の変化に貢献するなど、成長段階によって方向転換速度の向上因子が異なる可能性を示唆するものである。研究2~4については現在解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず初年度に得られたデータの解析を進め、国内学会での発表および海外論文への投稿を行う。 次年度の研究は初年度の研究の追跡調査であり、「男女サッカー選手の方向転換動作のキネマティクス分析・縦断変化」、「男女サッカー選手の体力・運動能力の年間変化」、「サッカー選手の体力・運動能力の年間変化と成熟度の関係」の3つの研究で構成する。 研究1である「男女サッカー選手の方向転換動作のキネマティクス分析・縦断変化」では初年度に測定した60名(男子40名、女子20名)を対象に、初年度と同様の測定を行う。そして方向転換動作時のキネマティクス変化と歴年齢変化およびPHVステージ変化との関係を検討する。次に研究2である「男女サッカー選手の体力・運動能力の年間変化」では、初年度に測定を行った362名を対象に同項目の測定を行い、各種運動能力の年間変化量を検討して成長期に向上する運動能力の年代間差を明らかにする。そして研究3「サッカー選手の体力・運動能力の年間変化と成熟度の関係」では、研究2の対象者のうち、Maturity OffsetおよびBTT法によってPHVA値が得られている選手を対象に、各種体力要素の変化とPHVAの関係を検討し、成長段階別に向上する体力・運動能力の差異を明らかにする。
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