2017 Fiscal Year Annual Research Report
Importance of postexercise calcium ion dynamics to regulate the adaptation of myocytes
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16H03240
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
狩野 豊 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (90293133)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 筋損傷 / カルシウムイオン / タンパク質合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋の収縮―弛緩サイクルはカルシウムイオンダイナミクス(細胞質中の空間的・時間的な濃度変化の連続)によって制御される.本研究は,「筋収縮に関与しない持続的なカルシウムイオンダイナミクスが運動後に起きており,この現象が骨格筋の肥大(タンパク質合成)や損傷(タンパク質分解)を制御している」という仮説の検証を目的としたものである. この仮説を検証するために,蛍光顕微鏡および2光子レーザー顕微鏡を導入し,独自に開発した in vivo(生体内)バイオイメージング技法と組み合わせることで,カルシウムイオンダイナミクスと骨格筋適応(筋肥大・損傷)の関連性を検討した. 平成29年度は,昨年度までに得られた運動誘発性筋損傷後のカルシウムイオンダイナミクスの動態特性とタンパク質合成経路との対応関係を明らかにすることを試みた.カルシウムイオンダイナミクスは筋損傷が誘発された24時間後にかけて,細胞質内の高い蓄積レベルと周期的な変動を認めた.3日後には,一時的にカルシウムイオン濃度の低下が認められたが,7日後には再び濃度は上昇に転じた.同じプロトコールでタンパク質合成経路を生化学的に検証した.その結果,1-3日後はp70S6KならびにS6,3-7日後においてmTORおよびeIF4Gのリン酸化が亢進していることが示された.現在,カルシウムイオンダイナミクスとタンパク質合成経路シグナルについての対応関係を調べている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は,ラットを用いて伸張性筋収縮が誘発する筋損傷モデルを作成し,筋損傷の特徴を組織化学的に検証した.その結果,カルシウムイメージングの対象領域となる筋表層部の筋損傷像を確認し,モデルの妥当性を確認した. 次に,in vivo観察モデル(Sonobe et al.2008, Eshima et al.2013を改良)によるカルシウムイオンダイナミクスの評価において,蛍光顕微鏡による分析を進めた.予定された2光子レーザー顕微鏡による評価は、呼吸等による振動ノイズをキャンセルできなかったことから,観察方法の再検討を進めている. 昨年度までに得られた運動誘発性筋損傷後のカルシウムイオンダイナミクスの動態特性の再現性を確認するとともに,同じプロトコールを用いてタンパク質合成経路との対応関係を明らかにした.その結果,1-3日後はp70S6KならびにS6,3-7日後においてmTORおよびeIF4Gのリン酸化が亢進していることが示された.これらの特性が,カルシウムイオンダイナミクスによって,直接的に制御されているのかについて確認することを予定している.これは,今年度の実験計画で予定されていた研究の一部を含んでいることから,研究の進展がやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,運動後のカルシウムイオンダイナミクスの役割を明らかにするために,筋小胞体やミトコンドリアの薬理的阻害(ダントロレンなど)によって,1.カルシウムイオンダイナミクスの変化 2.タンパク合成経路のシグナル変化を明らかにする. 実験モデルとして, 1) in vitroコントロール,2) in vivoコントロール,3 )in vivo筋収縮負荷(エキセントリック:ECC負荷)のグループを設定する.筋収縮負荷後,数日間(1,3,7日後)のフェーズにおいて評価する. 細胞質内カルシウムイオンは小胞体とミトコンドリアによって調節されている.そこで,小胞体とミトコンドリアに特異的なカルシウム指示薬を筋細胞に導入することによって,それぞれのカルシウムイオンを定量し,放出-取込のパターンを明らかにする.さらに,筋小胞体の機能阻害をもたらすダントロレン投与による薬理的なモデルを用いて,カルシウムダイナミクスの変化を明らかにし,合わせてタンパク質合成シグナル経路への影響や筋損傷ー回復プロセスとの関係を解明する実験を計画している.
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