2018 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウムポンプに作用する海洋天然物を基盤とした破骨細胞分化抑制剤の創製
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16H03285
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
末永 聖武 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (60273215)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ビセリングビアサイド / 全合成 / ジャハナイン / 構造活性相関 / 破骨細胞分化 / 標的分子探索 / 作用機構解析 / 抗マラリア活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋シアノバクテリア由来のマクロリド配糖体ビセリングビアサイド(BLS)の種々の誘導体を調製する方法を確立した。合成の中盤・終盤でのグリコシル化は困難であることがわかったため、合成の序盤で糖部位を導入し た。また、アグリコンの合成では進行していたエステル化反応が全く進行しなかったため、アルコール体のエナンチ オマーを合成し、光延反応により収率よく目的のエステルを得た。その後に18員環構築は問題なく進行し、BLS類の合成法を確立した。マラリア原虫が哺乳類と類似のカルシムポンプをもっていることに注目し、BLS類の抗マラリア活性を評価したところ、弱いながら活性を示した。今後は破骨細胞分化阻害活性と合わせ、抗マラリア活性の評価も進める。 一方、鎖状ペプチドクラハイン(KHN)については、RAW細胞の細胞内Caイオン濃度への影響が有意には確認できなかった。そこで カルシウムポンプSERCA以外が関与している可能性も考え、合成したプローブ分子を用いて、HeLa細胞およびRAW細胞ライセートからア フィニティー精製により細胞内標的分子の探索を行った結果、標的候補分子としてプロフィビチンが得られた。今後はsiRNA 法による ノックダウン実験によりその妥当性を確認する。 また、KHNの構造類縁体Jahanyne(JHN)のビオチンプローブを用いて同様の解析を進めたところ、標的候補タンパク質として分子量20kDaのアポトーシス誘導タンパク質を見出した。今後、SiRNA実験やJHNを用いる競合阻害実験によってその妥当性を検証する。 海洋シアノバクテリアから種々の化学構造をもつ物質を単離・構造決定することができた。その中には細胞内カルシウムイオン濃度に影響すると予想される化合物がいくつかある。今後破骨細胞分化に及ぼす影響を明らかする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖結合型のビセリングビアサイド(BLS)の類縁体合成法が確立できた。破骨細胞分化阻害のシグナル解析はやや遅れているものの、当初は予想していなかったBLS類の抗マラリア活性を見出し、予想外の方向に研究が展開してきた。一方、KHNやJHNでは仮説と反する結果となったが、新たな標的候補分子が得られた。また新たな生物活性物質を発見することができ、そのものが破骨細胞分化に影響を及ぼす可能性が考えられ、さらに研究に広がりが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した合成法に基づき、ビセリングビアサイド(BLS)の誘導体を合成して構造活性相関の解析を進める。BLSのRAW細胞 におけるシグナル伝達経路に及ぼす影響をさらに調べて行くため、CaMKIV と p- CaMKIV の抗体を用いて、RAW 細胞を使ってウェスタンブロッティングを行い解析を進めていく。合成したBLS誘導体の抗マラリア活性評価を進め、構造活性相関を明らかにする。毒性を低減させることはできたので、マラリアのカルシウムポンプPfATP6とのドッキングシミュレーションなどによって親和性向上を実現し、抗マラリア活性の向上を狙う。
クラハイン(KHN)については、新たな標的候補分子としてプロフィビチンが得られたので、今後はsiRNA 法によるノックダウン実験 によりその妥当性を確認する。また、KHNの構造類縁体Jahanyneの標的候補タンパク質についても同様に妥当性を検証する。他のシアノバクテリア由来の新規物質について、破骨細胞分化を抑制するかどうか、活性評価を行う。
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