2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H03354
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 聖子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (10338593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江川 純一 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (40636693)
久保田 浩 立教大学, 文学部, 教授 (60434205)
木村 敏明 東北大学, 文学研究科, 教授 (80322923)
宮嶋 俊一 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (80645896)
奥山 史亮 北海道科学大学, 高等教育支援センター, 講師 (10632218)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 宗教現象学 / 宗教学 / ドイツ / オランダ / 比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(a)1990年代までの宗教現象学の成果とその突然の消滅の原因、さらに(b)日本を含む各国で宗教現象学がどのように受容されたかを解明することを全体の目的とする。初年度である28年度は、国内の宗教現象学世代に対して聞き取り調査を行うとともに、関連文献を収集、整理した。また、海外の研究者と現地で行う調査計画を具体的に詰めることができた。 聞き取りを行うことができたのは、華園聰麿氏(東北大学)、澤井義次氏(東北大学・天理大学)、土屋博氏(北海道大学)、小田淑子氏(京都大学・東京大学・シカゴ大学)、金井新二氏(東京大学)、永見勇氏(シカゴ大学・立教大学)、棚次正和氏(京都大学・筑波大学)、長谷正當氏(京都大学)、氣多雅子氏(京都大学)に対してである。宗教現象学の国内での受容の状況、自身の宗教現象学観が聞き取りの内容の中心となった。また、2017年に刊行100年を迎える『聖なるもの』の著者、ルドルフ・オットー(宗教現象学者の草分けとされる)の研究が国内でどう受容されたかについても聞くことができた。後者の情報は、日本でのオットー受容に関する英文論文を執筆する際に用いた。 聞き取り調査と同時に、どのようなデータベースが役立つかについて検討を重ねた上で、博士課程の院生の協力を得て、国内の関連文献のデータベースを作成し、必要なものを収集した。海外に関しては、宗教現象学者の詳細な一覧を作成した。 海外については、ヨーロッパ宗教学会のヘルシンキ大会に合わせて、フィンランド宗教学者による宗教現象学の受容について、Veikko Anttonen氏とTeuvo Laitila氏から聞き取りを行った。さらに、スウェーデン宗教学会会長のDavid Thurfjell氏と現地調査方法、論文集の刊行について計画を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた聞き取り調査先のうち、1件は断られ、1件は交渉中だが、調査の過程で予定になかったが有益な情報を得られる先があることがわかり、2件追加した。データベースの作成、文献の分析等も予定通り進めることができた。また、当初の予定では、1件につき2名が調査を行うことにしていたが(日程調整を鑑みるとそのような分担が現実的であろうと予想したため)、メンバーの協力により、常に3名以上で聞き取りを行うことができ、5件については全員揃うことができた。 聞き取りを通して、宗教現象学の受容史について文献には残されていない詳細を明らかにできただけでなく、宗教現象学世代の研究者の多くが宗教現象学に対してアンビヴァレントな態度を示すことがわかった。これは国内の聞き取りでもフィンランドの聞き取りでも同様であった。これは、宗教現象学がまず宗教学のディシプリン・アイデンティティとして確立され、後に批判を受けたということがあるために、受容史の語りには、語り手が自身を宗教学者として現在どのように位置づけているか、どのように位置づけられることを望むかが影響するためと考えられる。また、日本の宗教現象学がヨーロッパのそれに比べて「哲学的」であることは、以前から知られていたが、どのような意味で「哲学的」であるのかを、各語り手について確認することができた。そのことはそれぞれの宗教観や個人的信仰とも直結しているが、そのあり方が一人一人についてわかった。 日本でのオットーと『聖なるもの』の受容に関する英文論文は、代表者が予定通り年度内に執筆することができ、また初年度から海外での調査も成果があった。さらに、海外での調査方法、論文集の企画についても目途が立った。以上のことから、研究は順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
①国内調査 本年度は、初年度に収集した資料(聞き取りの内容を起こしたものと関連文献)を代表者・分担者それぞれ担当大学ごとに分析し、それについて2~3回の研究会にて報告する。その結果、さらなる聞き取り調査や文献調査が必要と判断した場合は、適宜実施する。 ②海外調査 28年度に立てた調査計画に基づき、聞き取り調査を行う。担当は次の通り。 藤原:アメリカ、カナダ、イギリス、北欧。木村:オランダ、久保田:ドイツ・オランダ、宮嶋:ドイツ、江川:イタリア、奥山:オランダ 日本からすべての調査に赴くことは不可能であるため、一部は現地の協力者に委託する。オランダは特に重要な対象であるため、複数名で(時期をずらしながら)現地調査をする予定である。 同時に、既刊・未完の関連文献のデータベースを作成し、必要なものを収集する。ここでは、宗教現象学に関心のある国内外の院生・ポスドクを動員する。 海外から本研究に関係する研究者が来日した際には、講演等を依頼する。現在、見込みがるのは、韓国のオットー研究者、イタリアのエリアーデ研究者、インドネシアの宗教学者、アメリカ・ミズーリ―大学のGary Ebersole氏である。
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Research Products
(10 results)