2016 Fiscal Year Annual Research Report
大小摺物(絵暦)の美術史及び文化史に関する総合的研究
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16H03378
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
岩崎 均史 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 客員研究員 (50770765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 ふみ子 法政大学, 文学部, 教授 (00386335)
桑山 童奈 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 主任学芸員 (70332393)
田沢 裕賀 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 部長 (80216952)
大久保 純一 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (90176842)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本・東洋美術史 / 浮世絵 / 錦絵 / 摺物 / 暦 |
Outline of Annual Research Achievements |
浮世絵版画では、大小(摺物・暦)制作及びその交換で、明和二年の交換会により、錦絵と称される多色摺が完成することは定説である。だが、錦絵誕生期以外の大小に関して研究されたことはごく少ない。これは、まとまった大小の作品を見る機会を得ることが困難だったことに原因がある。 本研究は、国内最大の貼込帖である東博蔵「大小類聚」の大小のデータ採取し、作品名(仮題は付与)・解読・翻刻・分析・分類・大小の特定などをまとめた目録とし、加えて本研究進行中に生じた新知見、情報も適宜加えたその有用性を発信することを目的としたデータベースを研究者に公開する。これにより研究者に不足してた情報が提供可能となり、大小の活用が図られる。 現在までに完了した作業での主要データ採取項目は、①摺・写の判別:摺物(版画)が筆写を含む肉筆か、またはその混合かを判別。②作品名:文字のある場合はあるがままで採取、ない場合は課題付与。③画題特定:明確なもののみとし、推定はメモ程度にとどめる。④注文主特定:記名・印章などから判定。⑤絵師特定:落款・記名で判定、画派などの推定はメモ程度にとどめる。⑥印章等判読:印章や花王など、作品に何らか関係する人物のもののみ判読、⑦採寸確認:以前採寸したものと、異なるような場合再度採寸する(通常、縦×横㎝)。⑧大小の探索:大の月、小の月がどのように配されているか確認、貼込帖の表題年代との錯誤確認。⑨文字の翻刻:配された文字をあるがまま採取し翻刻。 現在、全冊の仮データベースの入力をしつつ、データ内容の確認作業を行っている。早期にこの作業を継続終了させ、撮影された画像と合わせて、逐次共同研究者の手元に送信し、内容の確認と合わせ、各分野の専門的視点を加えた検証を加えていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京国立博物館蔵「大小類聚」に関して、研究代表者岩崎は、東京国立博物館の客員研究員の立場で、本研究の研究分担者田沢裕賀(調査研究部長)氏とともに、行なっていた公開に向けたデータベースの構築及び同目録刊行のためのデータ採取と項目を限った調査を、継続して行っていた。当初、平成30年度四半期までは、本研究の骨幹要素であり作業に時間がかかると予測されたが、29年度中に大きく進展し、全冊の調査を終了させることができた。 並行して、上記調査の情報を元にデータ入力も行なっているが、その進展も半数を超え、ほぼ、全体の七割割程度までは完了した。 連携分担者、研究協力者らとの研究会も関西方面で開催することができ、周辺の大小関係資料収集や調査等も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
データ採取の完了した東京国立博物館所蔵の「大小暦類聚」(全20冊)全巻のデータベース入力を進めつつ、データの再検証と大小の形態(趣向及び別途分類も含む)、干支情報などもデータベース項目に加えるべく、並行して作業していく。 作業として最終年度は、データベース公開に向け、「大小暦類聚」画像及び全てのデータを全ての研究分担者・協力者(7名)で共有し、個々に確認と検討を加え、データベースに反映させる。 他に,神奈川県立博物館の長谷部言人コレクション(長谷部家寄託)に関して、いずれは平行して同様の調査を行うことと、コレクションの帰属に関しても本研究の成果を生かすことなど、また、他の未確認関連資料の存在確認と調査を計画することなど、本科研終了後も継続して作業を進めることになる。
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