2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive Research on the Role of Fiction in the Age of World Literature
Project/Area Number |
16H03409
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武田 将明 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10434177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 正嗣 立教大学, 文学部, 教授 (20431778)
都甲 幸治 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50386570)
久保 昭博 関西学院大学, 文学部, 教授 (60432324)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 世界文学 / ナショナリズム / 近現代の日本文学 / 吉田健一 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画記載の項目のうち、フランス語作家アントワーヌ・ヴォロディーヌ氏の招聘イベント(2017年4月27日、関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス)、吉田健一をめぐるシンポジウム(2017年7月17日、東京大学駒場キャンパス)を実施した。前者は研究分担者の久保昭博が主催し、後者は研究代表者の武田将明が司会・講師を務め、英文学者の富士川義之と作家の柴崎友香を講師に迎えて行った。 韓国作家ハン・ガン氏を招聘したイベントは事情により実施を断念したが、インド系アメリカ人作家のアキール・シャルマ氏と研究分担者の小野正嗣による対話イベントを実施した(2018年3月15日、東京大学駒場キャンパス)。 また、現代文学における翻訳の意義を検討するシンポジウムを実施予定だったが、企画内容を変更した。2016年から、グルーバル化への反動としてのナショナリズムの台頭がいわゆる先進国でも顕著に見られるようになり、国民国家という近代的なフィクションに対し、文学者・研究者は再考を迫られている。こうした喫緊の課題に応答すべく、シンポジウム「魅惑するナショナリズム─文学・批評からの応答」を2017年11月3日に東京大学駒場キャンパスで開催した。武田が司会、アーティストのアニー・デュトワ、仏文学者のヴェロニク・フランバール=ワイスバート、作家の平野啓一郎と中島京子、社会学者の大澤真幸、政治学者の片山杜秀が講師を務めた。 海外での調査・研究については、小野がインドで現地の作家たちと交流を深め、国立台湾大学で現代日本文学へのフランス文学の影響について講演した。久保はドイツ、ハイデルベルク大学で近代日本文学に関する研究発表を行った。他方、研究分担者の都甲幸治がアメリカにおける現代日本文学の受容について国内で調査し、『群像』11月号に論考を発表している。その他、口頭、論文による成果発表が多数あった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究には、(1)世界文学研究の視座から近代文学史を再検討すること、(2)現代の状況に応じたフィクション論を構築すること、(3)国民国家の時代が終焉したあと、文学的フィクションの果たしうる社会的な役割を検討すること、という3つの目的がある。 これらすべて相互に関連しているので、明確に区別して論じることはできないが、(1)については、主に武田が近代イギリス文学史を再検討しつつ、地域に限定されない「近代文学」の概念を再考する作業を続けており、複数の論文・研究発表において成果を示している。また、2017年度に実施した吉田健一の文学史上の意義を再検討するシンポジウムも、この目的に関係している。(2)については、フィクション論をめぐるシンポジウムを2016年度に開催し、その成果に基づいて、『早稲田文学』2017年初夏号に座談会(武田、円城塔、西川アサキ)と論考(久保)が掲載された。(3)については、2016年度の終わりに実施したシンポジウム「複数の言語、複数の文学」(その詳細は、『すばる』2017年11月号に掲載されている)、および2017年度に開催したシンポジウム「魅惑するナショナリズム─文学・批評からの応答」で詳しく検討された。また、業績一覧を見れば分かるように、この3つの目的に沿った書籍や論考も多数発表されている。 研究成果の数量だけを見れば、「当初の計画以上に進展している」と言っても大げさではないと思われるが、これらの成果をまとめあげ、明確に本研究の独自の達成と言い切れるものを打ち出すよう、さらに研究の質を高めたいと考えている。新しい文学史とフィクションの理論を構築し、本研究が現代の文学状況の活性化に貢献するよう、さらなる工夫が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの豊かな研究成果あるいは収穫を踏まえつつ、後半の2年間でいわば素材を調理し、多くの人が味わえるような形で提供することを目指したい。多くの人、といっても漠然と市井の人々を考えているのではなく、文学フィクションの生産・消費される現場の関係者を具体的に想定している。 作家、翻訳家、編集者、出版業者など、文学の生産に携わる者は様々だが、現代の文学研究は、彼らの活動する現場との相互関係が十分とは言えない。また、こうした人々の生み出す書籍を生きる糧として読み、SNS等で意見を発しているようなアクティブな読者とも、アカデミックな文学研究は切り離されている。 本研究は、一面において世界文学に関する最先端の研究成果を踏まえ、最新理論の構築を目指すが、同時にいま文学フィクションのあるべき姿を実践的に模索している。そのため、いわゆるアカデミックな枠を超えた共同作業を進めていきたい。特に国内において、上記の方々をゲストに招き、フィクションのあり方について考察する機会を設ける。アカデミズムと出版の現場の意見を交換することは、相互によい影響をもたらすはずである。 また、国外における文学フィクションのあり方を知るため、さらには本研究の成果を国際的に発信し、多様な価値観をもつ人々との創造的な対話を生むために、海外からの作家・研究者の招聘と海外での研究発表も、今まで以上に積極的に実施したい。2018年度にはアジアの作家を招聘した国際学会を東京で実施し、2019年度には本研究の関係者が複数で組み、国際学会におけるパネル発表を実施する予定である。その際、国内外の文学者・研究者との長期的・定期的な交流を可能にするシステムの構築も目指す。これまで本研究を通じ、世界の文学状況が年々変化することを実感したため、恒常的な交流なしに、世界文学の問題を理解し、当事者として発言することなど不可能だと考えるからである。
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Research Products
(31 results)
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[Book] 教室の英文学2017
Author(s)
日本英文学会(関東支部)武田将明ほか
Total Pages
334
Publisher
研究社
ISBN
4327472352
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[Book] 漱石辞典2017
Author(s)
小森陽一、武田将明ほか
Total Pages
832
Publisher
翰林書房
ISBN
4877374108
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