2016 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム地域における物質文化史の比較研究~イベリア半島から中央アジアまで~
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16H03470
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
真道 洋子 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (50260146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 徹 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (00199952)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ブハラ・オアシス / フスタート / モロッコ / スペイン / ガラス器 / 陶器 |
Outline of Annual Research Achievements |
①海外調査:ルーブル美術館・ウズベキスタン共同調査隊によるブハラ・オアシス発掘調査に真道が参加。調査隊における研究分担の出土ガラス研究に関してパイケンド遺跡等の出土遺物の実測と撮影を完了し、様式分類を行った。1月にはパリルーヴル美術館で化学分析用資料の受け取り、今後の研究およびセミナー開催などの打ち合わせを行なった。12月から1月にかけて、イスラーム考古学の現状把握と文献資料の収集のため、真道と文献班の研究協力者野口がモロッコ及びスペイン調査を実施し、現地で考古学的発掘調査に従事している研究者と面会して最新成果の情報成果の意見交換を行った。また、カスル・サギール遺跡博物館やラバト、フェズ、タンジェなどの旧市街の博物館資料、歴史的建造物、市場内製造行調査を実施した。また、初期のイスラーム征服期のルートであるタンジェから対岸のイベリア半島に船で渡り、モロッコとアンダルシア地域の物質文化の類似性を検討し、マラガおよびマドリードでは史跡および国立考古学博物館イスラーム期の遺物の実見や観察を行った。 ②国内調査:研究協力者とともに、早稲田大学考古学資料館に保管されているエジプト、フスタート遺跡出土遺物の全体を閲覧し、特にガラス器全般とイスラーム陶器の中で黄釉陶器と土鍋について、実測、撮影、資料観察、データ化などの作業及び研究を実施した。 ③資料収集:国内外で発掘報告書や文献資料の収集を行った。 ④研究会の開催:コプト・イスラーム物質文化研究会や横浜ユーラシア文化館などと主催・共催で、考古学、文化財科学、天文学などの分野に関わる5回の研究会の開催を実施した。成果の一部は、各種研究会やオリエント学会発行のOrietn52や陶磁器関連書籍等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中央アジアのブハラ・オアシスの考古学的研究はかなり進展しており、今後の長期計画も立てられている。エジプトのフスタート関連の遺物研究に関しても、早稲田大学に所蔵されている膨大な出土資料の把握ができ、研究課題の設定に持ち込めた。マグリブ・アンダルス地域でも現地調査で、イスラーム考古学的情報と歴史的関連との基礎情報が得られた。 また、関連情報収集や研究会活動も活発に行い、研究成果の一部を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、海外調査の継続と基礎的資料の収集等によって、長期的展望で各地域で研究を推進する。 イラン・中央アジア地域では、ブハラ・オアシスの発掘調査には継続して参加し、研究を継続する。特に利用されたガラス原料の解明と製造技法の研究のため文化財科学の専門家とガラス製作作家とともに現地調査に参加し、ブハラ・ガラス研究を推進する。これらの成果は、2018年度に報告書をまとめてルーブル美術館に提出予定である。それに先立ち、秋にルーブル美術館のRante氏を招聘し、研究会の開催と内陸アジアと日本文化の関係性、日本的な研究アプローチについて議論を深める予定である。 エジプト地域では、早稲田大学所蔵のフスタート遺跡出土遺物の研究を継続し、特にガラス器とイスラーム陶器の考古学的様式分類の再構築を行うための整理作業と研究を継続する。 マグリブ・アンダルス地域では前年度の資料精査と、翌年度の調査準備を行い、7月には連携研究者や研究協力者も参加する研究会で成果の一部を発表する。 この他に、不定期に研究会の開催や、関連学会や研究会での成果発表を行う。
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