2020 Fiscal Year Annual Research Report
The Formation of Imperial China seen through Institutional Changes between the Ch'in and the Han as reflected in recently excavated sources.
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16H03487
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
陶安 あんど 明治大学, 法学部, 専任教授 (80334449)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 漢語国家 / 簡牘学 / 法制史 / 秦国 / 文書行政 / 里耶秦簡 / 嶽麓秦簡 / 身分制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナウイルス蔓延のため、最終年度に予定していた海外研究協力者との成果検証はできかったが、二度にわたる事故繰越を通じて、代わりに国内研究協力者の協力を得て、里耶秦簡及び嶽麓秦簡について、官制・法制および社会経済関連の語彙考証と注釈作成を実施し、『嶽麓秦簡《爲獄等状四種》釋文注釋(修訂本)』と『里耶秦簡(壹)索引稿』という二つの編著を重要研究成果として出版することができた。語彙考証の過程においては、膨大な資料を効率よく処理するために、歴史情報学を活用する必要性を痛感し、里耶秦簡・嶽麓秦簡・五一広場後漢簡牘を対象にXML形式の資料庫の試作品も製作した。それは、本研究の主要分析対象の秦簡における語彙分布の確認作業をより容易にしたのみならず、古文書の情報処理に関する知見をもたらし、秦代から魏晋にいたるまで比較的均等な出土分布を示す文書簡牘に対する時代横断的な総合研究の方法論的基礎を提供し、後続研究の道しるべとなることが期待される。 本研究によって秦という国家の特異性が浮き彫りになった。従来の研究においては、始皇帝によって初めて中国大陸が統一されたことが重視され、統一秦を以て二千年にわたる帝制中国の始点と見做す傾向が強かったが、郷という末端機関まで国家から給与を支給される役人を配置し、全人口に一定の身分を付与して個人情報を網羅的に収集・蓄積する秦の国家体制は、社会の極めて高い流動性に特徴づけられる宋代や清代の近世国家とのみならず、郷における行政事務が徐々に住民に転嫁されて外部化される漢代や魏晋の状況とも顕著な差異を示す。短命に終わった始皇帝の統一事業は、帝制時代の始動というよりも、数世紀にわたる秦国の固有史の終着点と考えるのが実情に近かろう。漢語の使用を通じて、この国家の経験もその後多くの「漢語国家」によって絶えず再発見・再利用されたが、その多様性は今後一層注目すべきと考えられる。
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Research Progress Status |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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