2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H03524
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
豊田 哲也 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 教授 (30260615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 聡史 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (10314460)
長尾 謙吉 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50301429)
中谷 友樹 立命館大学, 文学部, 教授 (20298722)
浦川 邦夫 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (90452482)
瀬田 史彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50302790)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域格差 / 世帯所得 / 人口移動 / 就業構造 / 健康格差 / 貧困問題 / 地域政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
格差社会に対する問題意識は世界中で高まっており、所得や資産など貧富の格差だけでなく、格差の固定に結びつく教育格差や生活の質を決定する健康格差への関心も広く共有されるようになった。1990年代以降の日本における格差拡大の背景として、人口学的要因(少子高齢化の進行や家族形態の変化)、経済的要因(製造業の空洞化や非正規労働者の増加)、政治的要因(新自由主義的政策の推進や所得再分配機能の低下)等が考えられる。他方、地域政策や国土計画の観点からは東京一極集中を是正し地方の人口減少を食い止めるため「地方創生」が喫緊の重要課題となっている。しかし、社会格差と地域格差はどのような関係にあるのか、また何が尊重すべき地理的多様性であり何が是正すべき地域間格差なのかは必ずしも明らかでない。こうした課題に取り組むための枠組みを検討し分析を行った。 所得の地域間格差の動向を世代別に把握するため、2003~13年の住宅・土地統計調査の再集計を用いて分析したところ、全体的な貧困化が進む若年層で東京大都市圏の所得が上昇し地域間格差が拡大した一方、中高年層では都市圏と地方圏の格差はむしろ縮小しており、所得格差の現れ方は非常に複雑な様相を呈している。健康格差の面では、2000~10年の日本版総合的社会調査の資料を用いて主観的健康感や身体活動のトレンドを分析した結果、女性の喫煙に関して格差の拡大傾向が認められた。生活の質に関しては、家庭生活における基本的活動に必要な時間に注目した分析を行い、首都圏では睡眠時間が短いなど「時間貧困率」が高いことを指摘した。このほか、産業構造の変化がもたらす就業機会の地域格差、雇用や教育と人口移動との関係、経済政策と地域政策の整合性等について理論的枠組みや分析方法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進め方についてメールでの討議や個別の打ち合わせを進めた。所得格差の把握に関しては単位を世帯とするか個人とするかによってデータの選択や分析方法が大きく異なるため、研究方法の再検討と公的統計の比較検証を試行的に先行させたため、予定していたオーダーメイド集計の利用申請はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目標は、格差という概念を再検討し、具体的な事実によって検証を行い、政策的提言に結びく発見を行うことにある。今後も引き続き分析の方法論に関する討議を重ねながら、研究上利用可能な資料について調査をおこなうとともに、論文等による研究発表や関連学会での公開シンポジウム開催について計画を立てる。
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Research Products
(7 results)