2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H03524
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
豊田 哲也 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 教授 (30260615)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 聡史 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (10314460)
中谷 友樹 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (20298722)
長尾 謙吉 専修大学, 経済学部, 教授 (50301429)
瀬田 史彦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50302790)
浦川 邦夫 九州大学, 経済学研究院, 教授 (90452482)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 地域格差 / 所得格差 / 健康格差 / 教育格差 / 地域情報 / 産業構造 / 地方創生 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の経済格差には富裕層対貧困層という階層的側面と、都市対地方という地域的側面がある。本研究の目的は両者の関係を分析し、地理的多様性と地域格差について再検討をおこなうことにある。 (1)所得の地域格差と人口移動の鍵は、進学や就業など若年層の行動にある。大都市圏と地方圏の進学率には未だ2倍近い格差が存在する。所得の地域格差が長期にわたり解消しない原因は、学歴による人的資本蓄積と選択的な人口移動にあるとの仮説を立て、教育格差に関する地域分析をおこなった。 (2)雇用の地域格差の要因には急速な産業構造の変化がある。特に「さまざまな仕事」や「働き方」があるという就業機会の多様性は、人々のライフコースと人口移動に影響を及ぼす。東京一極集中の要因には、東京が雇用の多様性においても卓越していること、地方圏では製造業の雇用が縮小していることが指摘できる。 (3)生活時間の次元に注目した貧困研究では、都市部で子どもを持つ夫婦共働き世帯で十分な生活時間を確保できない「時間貧困」のリスクが高いこと、低所得ワーキングプア世帯が労働時間の延長をおこなうと「時間貧困」に陥るジレンマがあることが示された。 (4)地域格差を考える上で正確な地域統計の利用は不可欠であるが、近年、社会調査や国勢調査における回収率の低下が懸念されている。分析の結果、都市部では若年層の多さを調整してもなお回収率が低いことが判明した。 (5)地域格差の是正には地方創生政策の展開が課題である。イノベーションや地域産業の創出に関する研究では、日本国内の特許データを用いて共同発明者間のネットワークの空間的分布を分析した。また、中小企業の代表者の出身地データから、出身地の多様性と先進地域からの情報導入という二つの効果が企業の業績に及ぼす影響を検証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた研究課題を進めるにあたり今年度の重点的な研究テーマを見直した。特に教育格差に関する分析をおこなうこととし、労働経済学における人的資本理論、教育社会学における学歴再生産理論を結びつけ、地域における大学進学率の違いと最終学歴別の人口移動に関するデータの収集や高等教育無償化や大学入学定員の厳格化など国の教育政策に関する検討をおこなうことが必要になったため、予定していた進捗状況からやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
より密接な情報交換のため遠隔会議による研究打ち合わせをおこなう。また日本地理学会でのシンポジウムを企画中である。
|
Research Products
(9 results)