2018 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における死者儀礼のゆくえ-生者と死者の共同性の構築をめざして
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16H03534
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
山田 慎也 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90311133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朽木 量 千葉商科大学, 政策情報学部, 教授 (10383374)
土居 浩 ものつくり大学, 技能工芸学部, 准教授 (20337687)
谷川 章雄 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40163620)
村上 興匡 大正大学, 文学部, 教授 (40292742)
瓜生 大輔 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (40635562)
鈴木 岩弓 東北大学, 文学研究科, 名誉教授 (50154521)
小谷 みどり 身延山大学, 仏教学部, その他 (50633294)
森 謙二 茨城キリスト教大学, その他部局等, 研究員 (90113282)
金 セッピョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 特任助教 (00791310)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 葬儀 / 墓 / 無縁 / 共同性 / 行旅死亡 / デジタル / 墓地 / 法制 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は本プロジェクトの大きな成果発信がいくつもなされた年であった。まず、昨年度から検討していたアジア圏における葬送墓制の動態と技術革新、および社会状況について検討するために、4月13日、国立歴史民俗博物館、中国長沙民政学院との共催によって国際研究集会が開催され、葬儀の近代化過程と葬儀職従事者の専門家教育、資格化について議論がおこなわわれた。そこでは葬儀教育の歴史や公共墓地制度、大学生に関する死生学教育、また葬儀思想などの報告がなされ、日本側からは、1990年代以降の死を取り巻く環境や葬祭業の資格制度について報告され、現代中国の死生観と国家思想の連関が照射でき、日本の死生観と行政対応の相違が明らかになった。 さらに12月15,16日には、早稲田大学大隈記念講堂大講堂で、本プロジェクトの成果公開として大きな柱である歴博フォーラム「死者と生者の共同性-葬送墓制の再構築をめざして」と題して、早稲田大学人間科学学術院との共催によって開催した。その報告は「無縁化への道程」、「縁なき人々の追悼」、「縁なき方向へすすむ墓」をテーマとし、墓の無縁化や引き取り手のない遺骨の増加など現代の葬送墓制の課題を、近世以降の家制度、両墓制や寺位牌の祭祀など多様な民俗を踏まえ、現代のデジタル時代の状況も含め、死者と生者の共同性の有り様について検討を行い、今日の研究状況、今後の課題を提示した。 そのほか現代班では、「現代死者儀礼写真」として整理を進めていき、さらに助葬事業と合葬式共同墓についての調査を行った。高度成長期班では公園墓地の形成と無縁化の調査など、さらに近代班は先祖代々墓の形成や位牌祭祀のあり方などの調査を行なっており、それぞれその成果はシンポジウムにおいても反映された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代班では、「現代死者儀礼写真」についての写真ポジフィルムのデジタル化をすすめ、業者委託分のデジタル化は完了した。あわせて付随していたネガフィルムやパンフレット、葬儀の栞、プログラムなどが追加寄贈されたため、本プロジェクト中に努力し整理を終える予定である。また権利関係を踏まえた公開のあり方について検討を進めている。近親者のいない人への葬儀支援や生前契約制度について、戦前期の助葬会や他の助葬事業の状況について、次第に資料がみつかり調査が進んでいる。現在でも組織のある助葬団体について九州で調査を行い、今年度も継続する。永代供養墓や老人ホームなどの合葬式共同墓についての調査では、生前時の共同性が重要であることが判明したため、さらに施設の調査を行い総括を行う。 高度経済成長期班では、改葬広告の全国的な展開の資料整理が終わり分析を進めている。そこでは地域性が明らかになり、公共事業による改葬がおもな地域と墳墓の不足による墓地改葬事業の地域など、地域の相違とそれぞれの影響について検討し総括する予定である。 近代班では、都市近郊の墓地として東京都狛江市泉龍寺墓地の墓碑、位牌の現地調査が終わり、それぞれのデータの整理および分析を進めている。墓石の形態の変遷を参照して位牌の形態の変遷を検討したところ、両者はかなり類似点があることが判明しており、研究史的には新たな成果として位置づけることができると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の総括とその成果還元として、昨年行われた歴博フォーラム「死者と生者の共同性‐葬送墓制の再構築を目指して」を基盤とした、論文集の出版に取り組む。すでに出版社も決定し、それぞれ執筆に取りかかっている。 現代班では、「現代死者儀礼写真」として整理している資料群の関連データの追加を完了し、諸権利に考慮した利用の体制を整える。また近親者のいない人への葬儀支援や祭祀のあり方について、その対応や実態の多様性についての補足調査を行い研究を総括する。 高度経済成長期班では、公園墓地などの家族墓の形態と、墓の代替として作られた納骨堂について、現代の多様な形態を含め捕捉調査を行って研究を総括し、墳墓の無縁化との関連を検討し、法的問題も含め研究をとりまとめる。さらに戦後の新生活運動と地域の関係についての調査も総括する。 近代班では、都市近郊の墓地として東京都狛江市泉龍寺墓地の墓碑、位牌調査、また奈良県の両墓制の火葬化による変容調査の総括を行う。とくに位牌の形態は墓碑の形態との連関があることが指摘でき、その後の家庭での位牌祭祀にも大きな影響を及ぼしている。このような位牌研究は従来あまり行われておらず、その成果はあらたな研究分野を開拓したものである。 また、今までの調査で必ずしも明確ではなかった葬送墓制に関するビジュアル的な側面を把握するため、近代の葬送墓制に関する映像資料を調査する。国立近代美術館近代フィルムセンターには浜口雄幸などの近代の著名人の葬儀の記録映像が有り、これをメンバーで調査し、儀礼形態の検討を行う。以上、調査の成果をとりまとめ近代以降の葬送墓制の姿を明らかにする
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Research Products
(43 results)