2018 Fiscal Year Annual Research Report
ハーグ条約の「友好的な解決」-国際家事メディエーションをめぐる国際私法上の課題
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16H03550
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長田 真里 大阪大学, 法学研究科, 教授 (10314436)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 俊一郎 神戸大学, 法学研究科, 教授 (30180326)
高杉 直 同志社大学, 法学部, 教授 (60243747)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ハーグ条約 / メディエーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,過年度に行ってきた文献調査および訪問調査や招へいなどのとりまとめ作業を開始した。また,国外,特にEUでの国際家事紛争処理にかかるADRの実務が進化・収斂しつつある流動期でもあり,その動向などについての調査検討を行うとともに,実務家との協働を進めた。 具体的には,(1)11月にアメリカ・カナダから講師を招へいし,現在英米圏で離婚において最も利用されているといわれるコラボラティブプラクティスの実情を知るためのセミナーを開催し,(2)2月にドイツMikkから二名の講師を派遣してもらい,3日間のトレーニング講座を開催するとともに,国際シンポジウムを開催し,現在までに得られた知見を広く知らしめるとともに,意見交換を行った。さらに(3)外務省との共催により,ハーグ条約実務の第1人者とされる弁護士をアメリカから招へいし,同国におけるハーグ条約実務とADRの関係について知見を深めた。 その結果として,特にヨーロッパ諸国を中心にハーグ条約事案において国際家事メディエーションが有効に機能していることが確認できたものの,アメリカにおいては未だ広く有効性が確認できるには至っていないことが確認できた。さらに,本研究が目的としている法的側面からの研究については,諸外国においてすらほとんど先行研究がない状況であり,各実務家が暗中模索の状況にあること,一刻も早いこの状況に対する手当が必要とされていることが確認できた。 また,各自の研究については,それぞれの分担分野においての知見を深めており,その成果の一部を上記国際シンポジウムにおいて公表するとともに,平成31年度に公刊される予定の書籍に成果の公表の予定が確定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各自の研究は極めて順調に進展している。また,当初各国の状況について調査をする予定にしていたところ,その後の各国におけるハーグ条約メディエーションの発展状況の文献等による調査を踏まえて,ハーグ条約メディエーション機関については,特にドイツのMikkを中心とするに至っている。その点一見すると,当初の予定より進捗状況が芳しくないようにも思われるかも知れないが,あくまでも各国の現状を踏まえた発展的変更であり,またMikkを通じてEU諸国の現状についての情報もほぼ網羅的に取得可能なことから,当初の予定通りおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策について,平成31年度が最終年度になることから,これまでで得られた協働k値級の成果を広く公表還元する年にしたいと考えている。まず,日本でワークショップないしはシンポジウムを計画しており,また,現在の研究のカウンターパートとなっているMikkの本拠であるドイツにおいて,国際シンポジウムを開催することにより,日本の現状を広く国外に知らしめ,様々に意見交換を行うことを考えている。
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