2016 Fiscal Year Annual Research Report
政治主体の統合と分離をめぐる国際理論:マルチエージェントモデルによる実証的分析
Project/Area Number |
16H03589
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
山影 進 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (10115959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 貢 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70251311)
阪本 拓人 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40456182)
光辻 克馬 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (30647441)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国際関係論 / 国際理論 / 社会科学方法論 / シミュレーション / 紛争研究 / エージェントベース / マルチエージェント / 統合と分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際関係における政治主体の統合と分離のダイナミズムを、マルチエージェントモデルを用い、実証的分析を通じて、21世紀における伝統的・非伝統的な国際紛争の本質を明らかにしようとするものである。具体的には、冷戦後に多様化した国家間紛争あるいは国内紛争における政治主体の統合と分離の過程を、実証的モデルを構築することにより、そのメカニズムを明らかにする。 現代国際紛争の発生と収束を、全体を制御する主体のないアナーキー(無政府的)な状況における多主体間の相互作用から(1)秩序が流動化し(統合から分離)、(2)さらに再組織化する(分離から統合)過程としてとらえる。そして、多主体間の相互関係の分析に適する手法であるマルチエージェントモデルを用い実証分析をおこない、紛争の特徴を析出するとともに、構築した仮想空間における実験をつうじ、政策的インプリケーションを導こうとするものである。
統合から分離に向かう過程としては、政策決定過程や政党政治システムにおける討論過程を中心に研究が進められている。政策決定者間の討議、議員間の討議、政党間の支持獲得競争といった側面に注目してモデルを用い分析をおこなっている。政策決定過程については日本の終戦決定過程を、議員間の討議については、日米議会の討議過程を具体的な事例として、実証分析をおこなっている。 分離から統合に向かう過程としては、アフリカ諸国等における国際紛争を中心に研究が進められている。まず、国家の分裂・再統合という側面に着目してモデルを用い分析をおこない、さらに牧畜民や国内の反乱集団といった国内集団の統合と分離という側面に着目してモデルを用い分析をおこなった。国家の分裂と再統合についてはソマリアやアフガニスタンを、反乱集団等の国内集団の統合と分離についてはコンゴ等を具体的事例として用い、実証分析をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
統合から分離に向かう過程として焦点をあてた、政策決定過程や政党政治システムにおける討論過程について、日本の終戦決定過程という具体的事例についてのマルチエージェントモデルを構築・発展させることができた。日米議会の討論過程についても、モデル分析をおこなうことができた。政党間の支持獲得競争についてもマルチエージェントモデルを構築することができた。 分離から統合に向かう過程として焦点をあてた、アフリカ諸国等における国際紛争についても、国家の分裂と再統合についてはソマリアやアフガニスタンの内戦過程という具体的事例についてのマルチエージェントモデルを構築・発展させることができた。国内集団の統合と分離についてもコンゴの反乱集団やアフリカ諸国の牧畜民集団を具体的事例としたマルチエージェントモデル等の構築をおこなうことができた。 統合から分離に向かう過程、分離から再統合に向かう過程についても、想定していた以上のさまざまな事例について実証分析を想定したマルチエージェントモデル等の構築をすすめることができた。また構築されたモデルは当該事例にのみにしか適用できないものではなく、類似した他事例への適用が期待されるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引きつづき、次のような研究を進める。 国際紛争モデルおよび国家紛争モデルについて、政策決定過程や討論過程についてのモデルの構築・発展をすすめ、具体的事例への当てはめをすすめていく。アフリカ諸国の紛争過程や国内集団の統合分離過程についてもさらにモデルの構築・発展をすすめ、具体的事例への当てはめをすすめていく。 いずれの方向においても、さまざまな事例に当てはめることのできる普遍性のあるモデル構築ができていることを生かし、さらに適用できる事例を模索する。また実証的分析に適用できるモデル構築ができていることを生かし、政策的インプリケーションや歴史事例についての反実仮想分析を模索していく。 シミュレーションの機能向上についても、研究をスムーズに行うため、モデルの構築作業に伴って必要性が明らかになったシミュレーターの機能向上を、委託することによって随時達成する。
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