2017 Fiscal Year Annual Research Report
War and Peace in the History of Economic Thought: Can the dissemination of Economics decrease International Conflicts?
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16H03603
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
小峯 敦 龍谷大学, 経済学部, 教授 (00262387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 菜々子 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20438196)
牧野 邦昭 摂南大学, 経済学部, 准教授 (20582472)
古家 弘幸 徳島文理大学, 総合政策学部, 准教授 (30412406)
橋本 努 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (40281779)
原田 太津男 龍谷大学, 経済学部, 教授 (60278257)
堂目 卓生 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (70202207)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 戦争と平和 / 経済思想 / 経済学の黎明 / 重商主義 / 戦間期 / 冷戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、3つの時代と2つの国(および全世界)という特徴的な時期・国に焦点を当て、「戦争・平和と経済学」の複雑な関係を歴史的・思想的に精査することで、「経済学は戦争を回避し平和を構築することに貢献できるのか」という根源的な問いに回答する。 初年度に続き、二年目はこの共同研究を軌道に乗せ、特に、(a))学術雑誌(英語)の「戦争と平和の経済思想」シリーズを特集させること、(b)近隣の社会科学者や政策担当者に開かれた形で、日本語による専門書・啓蒙書を編纂すること、という二点を推進した。 その具体例として、(a)学術雑誌History of Economic Thoughtにおいて、War and Economicsというシリーズを2017年度中に3回連載し、研究分担者・連携研究者による3本の英語論文を掲載した。また、(b)いくつかの出版社と交渉し、『戦争と平和の経済思想』(晃洋書房、2018年度後期に出版予定)として出版するべく、11人による原稿を集め、草稿を検討する研究会も行った。 2017年度における最大の実績は、Fabio Masini (the University of Roma Tre, Italy) とMaria Paganelli (Trinity University, USA)という研究者を招き、2日間に渡り、広島修道大学で国際会議を開催したことである(2017.9.4-5)。平和記念館の資料にもアクセスできたことは大きな収穫であった。 二番目の実績は、経済学史学会・全国大会で、スミス研究の世界的権威Nicholoas Phillipsonの招待講演を実現したことである。特に、現実主義的な側面をスコットランド啓蒙研究の立場から、一般会員にも平易に講演された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) (a))学術雑誌(英語)の「戦争と平和の経済思想」シリーズを特集させること、(b)近隣の社会科学者や政策担当者に開かれた形で、日本語による専門書・啓蒙書を編纂すること、という二点については、当初の予定通り遂行することができた。 War and Economicsという特集について(3本の英語論文):Japanese Economists on Imperialism and Total War, by K. Makino; War among the Sovereign States and the Generation of Economics, by S. Senga; A Fundamental Economic Thought Problem on Peace and War since the Cold War, by T. Hashimoto. 以上の3本をThe History of Economic Thought (The Japanese Society for the History of Economic Thought)学術雑誌の特集として実現させた。 他方、Bibliographical Database of Economic Ideas for War and Peaceという書誌データベースの構築に関しては、書誌についてはかなりの程度、蓄積があるものの、適切な公開手段であるプラットフォームの選定において、やや緩やかな展開となっている。ただし、この歩みも計画(最終年度までに順次、公開していく手はず)の中に入っており、「おおむね順調」という判断には変わりない。
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Strategy for Future Research Activity |
次のような形で、まず啓蒙書・専門書の完成を目指すのが、今年度の最大の課題である。序章 戦争と平和の経済思想、本書の趣旨(小峯敦)、第一部 経済学の黎明期と国民国家の対立・協調、第1章 主権国家間の戦争と経済学の誕生(千賀重義)、第2章 アダム・スミスにおける軍事と経済(古家弘幸) 第二部 20世紀前半からの平和構想と経済学、第3章 エッジワースの契約モデルと戦争論、戦争状況のモデル化への試み(中野聡子)、第4章 「大戦争」とヴェブレンの国際的平和連盟の構想 (石田教子)、第5章 平和・開発・福祉;戦後国際体制のトリアーデの生成にむかって(原田太津男) 第三部 戦間期から戦後における平和構想と戦争概念、第6章 戦後構想における経済助言者の役割;戦時下における福祉国家理念(社会保障と完全雇用)の浸透(小峯敦)、第7章 ミュルダールにおける戦争と平和;スウェーデン中立・非同盟の国際主義(藤田菜々子) 第8章 冷戦期以降の戦争と経済思想(橋本努) 第四部 日本の戦時体制と経済思想 第9章 帝国主義・総力戦と日本の経済学者;石橋湛山とその周辺を中心として(牧野邦昭)第10章 日本陸軍の戦争経済思想―大正期から日中戦争まで(荒川憲一)、第11章 戦時における官立高等商業学校の調査機関とそのベクトル(大槻忠史) 次に、昨年度の広島修道大学での国際会議に続き、今年度は9月初旬に長崎大学において大型の研究会・国際会議を予定している。また日本平和学会(2018.10.27-28、龍谷大学)において、経済学史学会と共同セッション「戦争と平和の経済思想」を企画し、今までにない知見の広がりを試みることになっている。
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Research Products
(29 results)