2016 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル経済における高質な市場形成のための戦略的インフラ整備に関する理論分析
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16H03612
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柳瀬 明彦 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (10322992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 雄一 中京大学, 経済学部, 准教授 (50510848)
太田代 幸雄 南山大学, 経済学部, 准教授 (30313969)
濱田 弘潤 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70323954)
須賀 宣仁 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (70431377)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経済のグローバル化 / 市場の質と市場インフラ / 知識資本ベースの経済成長 / 戦略的インフラ整備 / 公的部門と民間部門の相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
グローバル経済における物的インフラと市場インフラのそれぞれの整備のあり方を考察することを目的に、いくつかの理論モデルを構築し、分析を進めた。また、南京大学との合同ワークショップを名古屋大学で開催した。 研究代表者の研究成果は、以下の通りである。物的インフラ資本のストックが民間部門の生産性に影響を与える状況を想定した小国開放経済の動学的一般均衡モデルを構築し、長期的な貿易パターンと貿易利益に関して理論的に検討した。分析結果をまとめた論文が、査読付国際学術誌に掲載された。また、関連する研究として、生産への外部性が存在する状況における完全雇用の効率性に関する研究をまとめた論文も、査読付国際学術誌に掲載された。さらに、国際間の輸送費や通信費に影響を与えるようなインフラを想定し、各国政府によるインフラ投資の戦略的競争を描写する理論モデルを構築した。分析結果を国際学会で発表した。 研究分担者は、以下の研究成果をあげた。経済成長の理論分析に関して、労働組合が存在する2国内生的成長モデルの枠組みで労働組合の交渉力が長期的な技術進歩に与える影響を検討した論文と、研究開発と人的資本蓄積に基づく内生的成長モデルの枠組みで教育に対する文化的な選好が長期的な経済成長率に与える影響を検討した論文が、査読付国際学術誌に掲載された。研究開発に関しては、ミクロ経済学的な側面からの研究も行った。具体的には、特許の所有権構造の違いが研究開発のインセンティブに与える影響について所有権アプローチを用いて理論的に検討した論文が、査読付国際学術誌に掲載された。また、利潤最大化を目指す民間企業とそれとは異なる目的関数を持つ公企業とが寡占競争を行う「混合寡占モデル」を用いた理論研究を行い、査読付国際学術誌への掲載やSpringer社から出版された学術書への分担執筆、ディスカッションペーパーの発行などを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に関連した研究成果をまとめた論文を、査読付き国際学術誌に発表することができた。特に、インフラ資本の蓄積と国際貿易に関する動学的小国開放経済モデルによる理論分析の論文がJournal of Economicsに、開放経済下の教育投資・研究開発を通じた知識資本ベースの経済成長に関する理論分析の論文がJournal of MacroeconomicsとJournal of Economic Dynamics and Controlに、特許の所有権構造と研究開発のインセンティブに関する理論分析の論文がAustralian Journal of Managementに、混合寡占モデルの枠組みによる最適補助金と公企業の民営化に関する論文がJapanese Economic Reviewに、それぞれ掲載された。 未公刊論文についても、国際学会で研究報告を行ったり、ディスカッションペーパーの形で公表するなどの形で発表した。これらの論文についても今後、査読付学術誌に掲載されるように改訂を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
可能な限り、研究代表者と分担者全員で随時ミーティングを行い、各自の研究の進捗状況についての確認と意見交換を行う。 研究代表者の今後の研究推進計画は以下の通りである。まず、これまで論文を公表してきた、物的インフラ資本ストックの生産性効果を考慮に入れた小国開放経済の動学的一般均衡モデルを、2国モデルに拡張して研究を進める。このような2国モデルに枠組みにおいては、政府間の戦略的相互依存関係を考慮に入れた動学ゲーム分析も視野に入れて理論分析を行う。また、国際学会で発表した、各国政府によるインフラ投資の戦略的競争に関する理論研究について、さらに分析を進め、論文を完成させる。 さらに、研究分担者のそれぞれの研究領域について、共同研究も視野に入れて研究の推進を図る。例えば、開放経済下の教育投資・研究開発を通じた知識資本ベースの経済成長に関する理論分析において、民間部門による研究開発と政府による教育インフラの改善の相互作用を明示的に考慮に入れた理論モデルの構築を目指し、また混合寡占モデルを用いた理論研究において、公企業による中間投入物の生産などを導入することで既存の理論モデルの拡張可能性を模索する。
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