2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H03615
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 和博 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (10362633)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 亜希子 流通科学大学, 経済学部, 准教授 (00508715)
佐々木 勝 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10340647)
陳 珈惠 京都大学, 経済研究所, 助教 (20768238)
佐藤 泰裕 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30332703)
石田 潤一郎 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (40324222)
川田 恵介 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (40622345)
森田 忠士 近畿大学, 経済学部, 准教授 (50635175)
小原 美紀 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (80304046)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | イノベーション / 労働者の多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、労働者の多様性及び、人口動態のイノベーションと経済厚生への影響を、市場規模の変化に注目して分析した。労働者の多様性の拡大、及び市場規模は、企業活動を大きく引き付ける要因となる。労働者の多様性、及び人口動態は出生や死亡といった自然増減と、人口移動である社会増減の両方に規定されることに鑑み、自然増減と社会増減の両方が内生的に決まる枠組みを用いて、長寿化に起因する少子高齢化と人口移動が労働者の多様性、及び市場規模、ひいては経済厚生をどう左右するかを分析した。その結果、長寿化は少子化を引き起こして労働者の多様性と市場規模を縮小させ、長期的にはイノベーションの生産性の低下、及び経済厚生の悪化につながることを明らかにした。また、それを埋め合わせるような人口移動が生じれば、その悪影響は緩和されることを示した。 また、日本の家計が,夫婦間で市場労働時間と家事労働時間,余暇時間をどのように決定しているのか,それらが労働者の多様性(女性の労働参加率)に及ぼす影響について,計量分析により明らかにしている。計量分析では,世界的に珍しい夫婦内の行動がわかる長期パネルデータを用いたり,大規模調査を独自に行うなどして,家計行動を説明する理論モデルが明示的に検証されるよう工夫されている。分析により,2000年代を通じて日本の家計内時間配分は変化していること,労働者の多様性があまり拡大していない可能性が指摘された。 さらに、出稼ぎ者を輩出することで残された家族の所得に与える影響を検証した。韓国に出稼ぎに行く前のネパール人の家族を対照群、出稼ぎ中、または以前出稼ぎの経験があるネパール人の家族を介入群として効果を測った。また、ネパール大地震によって被害を受けたコミュニティにおける労働者の多様性の計測もおこなった。これらにより、出稼ぎ及び移民が労働者の多様性に与える影響が計測された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2017年8月には大阪大学において国際コンファレンスを開催した。外国人研究者6人を含む13人の研究報告が行われた。研究代表者は労働市場における労働者の多様性とイノベーションに関する研究報告を行い、当該科学研究費で行った研究を国際的にアピールすることに成功し、当初の予定以上の研究成果を挙げることが出来た。 また、研究分担者の内の2名が、労働者の多様性とイノベーションに関する研究成果を2017年11月にカナダのバンクーバーで行われたNorth American Regional Science Council及び、12th Meeting of the Urban Economics Associationにおいて報告を行っている。また、2018年3月にHwaii Tokai Internatioanl Collegeにおいて行われたPan-Pacific Conference in Economic Researchにおいて研究代表者及び、研究分担者のうち1名は研究報告を行い、研究分担者2名はイノベーションと労働市場に関する研究についての議論を行い、当該研究費で行った研究を国際的にアピールすると共に、研究情報の収集を行うことができた。 また、研究代表者及び研究分担者は、イノベーション、及び労働者の多様性に関する実態を反映した実証研究に取り組んだ。イノベーションと労働者の多様性に関する個別の事象の関係を考察し、データの構築と実証研究を行った。その結果、労働者の多様性と共に、共同研究者を選択する際の流動性がイノベーションの生産性に大きな影響を与えることが確認された。 以上のように、国際コンファレンスの開催、国際学会の参加を通じて当該研究費で行った研究をアピールし、また最先端の研究を吸収することに成功したという意味で研究はおおむねに順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究計画の最終年度である。したがって、これまで行ってきた理論モデルの構築、データの整備、実証研究の総括を行う。本研究ではこれまで、日本の労働市場における労働者の多様性のデータの整備、及び実証研究を行ってきた。労働者の多様性と知識の多様性に関するデータ構築と整備の作業は平成29年度までに殆ど終えている。本年度はこれらのデータを使って具体的な実証研究を行う計画である。つまり、特許、論文数をアウトプットの指標として、労働者、知識の多様性がアウトプットにどのような影響を与えるのか、検証するのである。昨年度後半に実証研究に取り掛かり、労働者、及び知識の多様性が与える影響に関して、シンプルな回帰分析による結果はある程度出揃った。しかし、この過程で統計的、計量経済学的に様々な問題を解決する必要が生じてきた。本年度は、このような実証研究上の技術的課題を解決し、国際的な学術誌に掲載可能な水準の実証研究を行うことが目的となる。この課題解決のため、昨年度より実証研究の知識、経験の豊富な研究分担者が研究グループに加わった。このことにより、より質の高い実証研究が可能になった。 また、2017年度に行われた研究において、労働者の多様性がイノベーションの生産性に与える影響について考察された理論モデルについて議論が行われたが、イノベーションによって企業の競争が激化すること、及び労働者の知識の多様性が市場の不確実性に関する企業の認識と関係することが確認された。これらの理論モデルの実証可能性については、本年度の研究課題であることについて、研究者間で意見が一致した。引き続き理論モデルの構築に取り組み、新しい研究成果を生み出すように協力体制をとっていく予定である。 本年度には研究参加者間の議論を通じて研究成果の確認を行って最終的に研究成果をまとめていく計画である。
|
Research Products
(26 results)