2018 Fiscal Year Annual Research Report
アジア発リバース・イノベーション:イスラーム圏と日本を中心として
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16H03660
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
櫻井 秀子 中央大学, 総合政策学部, 教授 (60203345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
潜道 文子 拓殖大学, 商学部, 教授 (60277754)
今井 雅和 専修大学, 経営学部, 教授 (80305391)
中屋 信彦 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (20325559)
篠木 幹子 中央大学, 総合政策学部, 教授 (20398332)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リバースイノベーション / イスラーム経営 / 社会的企業 / コミュニティキャピタル / 日本的経営 / イラン / 中国 / ロシア |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年も引き続き、先進国主導ではない、資本主義とは異なる社会基盤からの転換をもたらすという意味におけるリバース・イノベーションを具体事例について調査した。具体的には、イランとトルコにおいては、引き続きワクフ施設の事例とその社会的機能について調査を進め、慈善事業運営に関わる財政関連資料の収集に努めた。日本については、地方創生の事例分析を中心に、コミュニティ・キャピタルの機能とエコシステムについて考察を行った。また、コミュニティにおけるソーシャル・イノベーションのプロセスをデザイン思考の側面から検討した。さらに、発展途上国における社会的課題解決を通じて事業創造を行う企業の行動を、アクター・ネットワーク理論を通じて分析し、事業モデルを検討し、CSRを中心とする経営との比較を行った。新興市場については、トルコとジョージア,ロシア・モスクワ、そしてシンガポールにおいて実証研究を進めた。各地の歴史,文化,宗教をふまえながら、独自文化が経営活動に及ぼす影響と多国籍企業のグローバル経営の進展がどのようにせめぎあい,調和するのかについて調査した。中国における具体事例として,国家資本を受け入れている企業を中心に2017年から本格化した会社定款への政治条項の記載事件に焦点をあて調査し、それが単なる「党の企業介入」(新聞各紙の論評)ではなく,成長優先路線の軌道修正であるという観点から、営利ビジネスと政治のリバランスについて考察した。イラン、トルコ、日本における寄付に関する統計資料については収集に努め、日本においては経団連の資料を用い、災害時における企業の寄付行為の傾向の分析を進め、次年度につないだ。以上の研究については、研究会を開催し研究分担者間の相互理解を深めるとともに、学会や論文を通じて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
それぞれの研究分野に専念する一方、研究会や学会を通じて各分担者との研究連携を緊密に進め、次年度に向けての研究基盤を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
イスラーム企業については、イラン、トルコ、中国の現地調査とともに、昨年に引き続きイランとトルコにおける統計資料の入手につとめ、喜捨の経済に関して統計分析にはかれるように準備を行う。日本については、ソーシャル・イノベーションに関わる人々の仕事を、「意味ある仕事」とフローの観点から検討する。また大阪商人の伝統とグローバル経営との関係、および宗教と日本の経営者の経営哲学との関係について研究を行う。ロシアと他のユーラシア新興市場を中心に、多国籍企業がグローバル戦略を展開する中、ローカル適応を同時に進めるためのフレームワークの構築に努める。中国については、民間資本を積極的に取り込んで展開される「混合所有制」や優れた経営ノウハウを持つ「職業経営者」の国有企業における活用といった,中国流の国有企業改革の新段階について調査を進める。研究最終年にあたるので、研究の総括に努め、研究会を開催を通じて分担者、協力者間の研究連携を密にし、研究成果を論文執筆、学会発表を通じて公表する。
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