2017 Fiscal Year Annual Research Report
Psychological basis of reputation damages: The two step hypothesis on risk perception and evaluative learning
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16H03728
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
平石 界 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (50343108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 功毅 中京大学, 心理学部, 助教 (20709240)
中西 大輔 広島修道大学, 健康科学部, 教授 (30368766)
横田 晋大 広島修道大学, 人文学部, 准教授 (80553031)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 風評被害 / リスク認知 / 認知バイアス / 評価条件づけ / 意思決定 / エラー管理理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、「評価的条件付けによる風評被害の導出」実験、「確率見積りバイアスの検討」実験を進めつつ、本研究プロジェクトの基盤となった前プロジェクトによって収集したWeb調査データに継続させる形で本プロジェクトで収集したWeb調査データを合わせた分析を行った。 「評価的条件付けによる風評被害の導出」実験については、分担研究者の池田(学振/中京大学)のもと、ネガティブな評価条件づけと脳波測定を組み合わせた実験のセッティングを進めた。 「確率見積りバイアスの検討」実験について、前年度に作成した実験プログラムを用いて、クラウドソーシングを用いて一般サンプルからのデータ収集の予備実験を行った。大学生を対象とした実験室実験の場合と異なり、クラウドソーシングならではの問題点が浮かび上がる一方、より優れた実験デザインでの実施が可能となることが示されたため、実験プログラムのアップデートを進めた。 2013年度より継続して、福島第一原発事故に関連して、放射能リスク認知にかんするWeb調査を行ってきた。2014年3月以来、2017年2月まで。放射能を含む様々な種類のリスク認知にかんして、同一サンプルからの、福島第一原発事故の3年後、4年後、6年後の継続データを取得してきたが、6年を経てもなお放射能へのリスク認知にほとんど変化は生じていないことが示された(池田・平石・中西・横田, 2017)。この知見の頑健さを確認するために、異なるサンプルに対して同一項目のWeb調査を2018年3月に実施した。 一方、放射能リスク認知への科学リテラシーの影響については、3度のWeb調査を経て、一貫してリテラシーの高さが偏ったリスク認知を低減させないという結果が得られている(中西・横田・井川, 2017)。本知見については論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
確率見積りバイアス実験については、クラウドソーシングにより予備実験を行った。直接に顔を合わせないクラウド上の参加者にたいする説明ならびにインフォームド・コンセントを万全とするため、実験プログラムの修正を繰り返すこととなり、予想外の時間がかかったことは否めない。他方でクラウド上の参加者からの反応は概ね好意的であり、実験実施が十分に可能であることを確認できた。また当初は困難と考えていた参加者内デザインでの実験実施が可能であることも示されたのも収穫であった。 評価条件づけ実験については、ネガティブ評価条件づけのための刺激設定と、脳波測定環境の整備は整っている一方、主担当者の体調悪化により本実験の実施が遅れたが、幸いに年度後半には快復が見られ、セットアップを進めている。 Web調査については、前年度に得た福島第一原発事故6年後のリスク認知データから、人々の認知がほとんど変化していないことが改めて示された。これは2016年度に報告した結果を改めて追認するものであり、リスク認知が容易には変化しないことを示す強い証拠が得られたと考えている。同様に、科学リテラシーと「買い控え」態度の関係についても3度の調査で一貫して頑健な結果が得られている。複数回のself replicationによって頑健な結果を確認することができたことは大きな意味を持つと評価している。それを受けて論文の投稿にも進めることができている。 まとめると、Web調査については若干ではあるが当初予定以上の進行が見られると考えている。他方で実験については新しい方法を試みていることもあり、予備実験において問題点が生じていることは否めない。しかし新しい手法であるが故の利点も明らかとなっている。以上から、プロジェクト全体としては概ね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
評価条件づけ実験ならびに確率見積り実験の二つの実験については、2018年度中に最終的な実験デザインを決定し、本実験を進める。いずれの実験についても、近年の心理学における再現性危機問題を経て提唱されている実験計画の事前登録プロセスを踏まえた上での実験を行うことを計画している。いずれも研究補助者を効果的に配置することで進める。 先行プロジェクトから得られたデータのうち、Web調査データについては、同一サンプルからの3回の継続データについての分析結果に、それを踏まえて実施したself replicationのための異サンプルからのデータを合わせて、福島第一原発事故後の放射能リスク認知の固定化について論文としてまとめることを予定している。また投稿中の科学リテラシーと買い控え行動の関連についての論文について、適宜、査読に対応した修正を加えていく。データ取得および分析、論文化にあたっては、事前登録プロセスを踏まえて実施する。また、特に継続Web調査データについては公開データとすることで、他の研究者による分析に利することを目指している。
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Research Products
(4 results)