2017 Fiscal Year Annual Research Report
Crystal Growth of N-polar Nitride Semiconductor Heterostructures with Two-Dimensional Electron Gas
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16H03857
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松岡 隆志 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (40393730)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花田 貴 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80211481)
谷川 智之 東北大学, 金属材料研究所, 講師 (90633537)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 窒化物半導体 / 高電子移動度トランジスタ / 有機金属気相成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒化物半導体は、三族元素であるB, Al, Ga, Inと窒素元素との化合物半導体である。窒化物半導体は分極を有する材料であり、分極効果がデバイス特性に影響を与える。窒素極性窒化物半導体を用いて高電子移動度トランジスタを作製すると、チャネルとなる二次元電子ガスが最上層に形成されることから、ゲートとチャネルとの距離を短くすることができ、素子サイズを小さくできる。この二次元電子ガス発生機構の成長技術を確立するため、有機金属気相成長法を用いて窒素極性GaN/AlGaN/GaNヘテロ構造の結晶成長を実施した。次に、試料に電極を形成し、トランジスタ動作特性を確認した。 これまでに、AlNモル分率0.32以下のAlGaN層を成長することでクラックフリーのGaN/AlGaN/GaN構造が得られることが分かっている。今年度は、この上に電極を形成した。まず、ゲート電極にショットキー電極を用いてMES-HEMTを作製し、電気特性を評価したところ、ゲート電極からのリーク電流が多かった。リーク電流を抑制するために、金属と半導体の間にSiN絶縁膜を10 nm程度堆積し、MIS-HEMTを作製した。その結果、リーク電流が著しく減少した。ソース-ドレイン間の電流はゲート電圧によって変化し、ゲート電圧-9 Vにおいてピンチオフ動作が得られた。相互コンダクタンスの最大値は50 mS/mmだった。 動作電流を増加させるため、InGaNをチャネルとした構造の作製を試みた。有機金属気相成長法を用いて窒素極性InGaN/AlGaN/GaN構造を作製し、X線回折測定によって構造特性を評価したところ、InNモル分率0.11以下の試料において歪成長可能なことを確認した。ホール効果測定により二次元電子ガス濃度を評価したところ、GaNチャネルと較べてInGaNチャネルの二次元電子ガス濃度は2倍程度に増加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、窒素極性窒化物半導体を用いた二次元電子ガス発生機構の結晶成長である。窒素極性窒化物半導体では、AlGaN上に成長させたGaNに二次元電子ガスが発生する。窒素極性窒化物半導体は、成長させる膜の極性制御と表面平坦性の担持が課題である。本研究では、平成28年度までに、クラックフリーの構造を作製する技術を確立し、二次元電子ガスの形成を確認している。二次元電子ガスは、高電子移動度トランジスタのチャネルとして利用できる。平成29年度は、素子の動作確認を目標として研究を実施した。 クラックフリーのN極性GaN/AlGaN/GaN構造を有機金属気相成長法により作製し、高電子移動度トランジスタとして動作させるためのプロセス技術について検討した。単純な構造として、ゲートにショットキー電極を用いたが、ゲートに負電圧を印加した時にリーク電流が流れてしまい、ゲートとして機能しなかった。これを解決するために、ゲートにMIS電極を用いたところ、リーク電流を抑えることができ、ゲート電圧-9 Vでソース-ドレイン間に電流が流れなくなるピンチオフ動作を得ることができた。動作電流を増加させるためにInGaNチャネルの成長も実施し、ホール効果測定により二次元電子ガス濃度が2倍程度に増加することを確認できた。 以上の通り、本研究は目標に対し順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度にInGaNチャネル高電子移動度トランジスタ構造を作製し、二次元電子ガス濃度の増加を確認した。しかし、表面には凹凸を有し、電子移動度は著しく低下した。InGaNはGaNより格子定数が大きく、三次元成長しやすい。平成30年度は、InGaNをチャネルとした高電子移動度トランジスタの動作特性を改善させるため、以下の研究を実施する。 まず、下地基板をサファイアからSCAM基板に変更する。SCAM基板はGaNとの格子不整合が1.7%で、サファイア基板とGaNとの格子不整合より小さい。そのため、格子緩和に伴い成長膜に発生する貫通転位の密度を低減させることができる。さらに、InGaNとSCAMの格子定数が一致することから、InGaNにかかる圧縮歪を低減できる。しかし、SCAM基板上への窒素極性窒化物半導体の有機金属気相成長技術は確立されていない。本研究では、SCAM基板上に窒素極性窒化物半導体を成長させる技術の確率を目指す。成長初期の条件を検討し、窒素極性成長を行うための極性制御技術を検討する。さらに、基板に微傾斜を与えることでステップフロー成長を行い、平坦な表面を得る。 次に、高品質なInGaN薄膜を得るための構造最適化を試みる。チャネル層として必要な膜厚は30 nm以下で、非常に薄い。薄膜において高品質なInGaNを得るためには、膜厚は薄い方が良い。そのため、InGaNチャネル層をGaN/InGaN多層構造とし、二次元電子ガスが形成される領域のみInGaN混晶とすることでInGaNを薄膜化する。InGaN結晶の高品質化により移動度の増加を目指す。
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Research Products
(5 results)