2016 Fiscal Year Annual Research Report
半導体デバイスのミューオン誘起ソフトエラー率評価のための技術基盤構築
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16H03906
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
渡辺 幸信 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (30210959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 昌宜 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (80335207)
金 政浩 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (80450310)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミューオン / 半導体デバイス / 照射試験 / シングルイベントアップセット / 宇宙線ミューオン計測 / 粒子輸送シミュレーション / PHITS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体デバイスに対するミューオン起因ソフトエラー評価用技術基盤要素として、①国内施設を活用したソフトエラー加速試験技術、②建屋内での宇宙線ミューオン計測技術、及び ③ミューオン起因ソフトエラーシミュレーション技術を開発し、それらを統合化して、ミューオン起因ソフトエラー率評価手法を確立することを目的にする。それぞれの開発基盤要素に対する本年度の研究実績は以下の通りである。 ①65nm設計ルールのバルク及びSOTB構造のSRAMメモリ(中性子照射実績有)に対して、J-PARC物質・生命科学実験施設のMUSE D2ビームラインで照射試験を実施した。正及び負ミューオンに対するシングルイベントアップセット(SEU)数を測定し、入射ミューオン数からSEU断面積に換算し、その入射運動量依存性や動作電圧依存性を調査した。有感領域付近で丁度止まる運動量を持ったミューオン照射の場合、負ミューオンの方が正ミューオンに比べて、明らかに大きなSEU発生が観測された。 ②プラスチックシンチレータで構成された建屋内での宇宙線ミューオン計測装置を開発した。それをコンクリート建屋内に設置し、天頂角0度に対する10~70MeV領域のエネルギー分布データを取得した。低エネルギー領域の収量が増加する傾向を示しており、バックグランド電子が含まれている可能性が示唆された。 ③ミューオンと物質との相互作用の物理モデルを組み込んだ最新版の粒子・イオン輸送計算コードPHITSと簡易的な有感体積(SV)モデルを組み合わせたシミュレーション手法(PHITS-SV)を開発した。それを用いた事前計算を行い、J-PARC MUSE照射試験で使用するミューオンビームの運動量範囲などの実験条件を決定する際に活用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
繰越により平成29年7月末まで完了期間を延長したことで、平成29年度初めに追加の照射試験を実施でき、変更後の計画に沿って研究が順調に進捗している。特に、先行研究で正ミューオン照射試験の報告はあったが、負ミューオンによる照射試験はなく、世界最高強度のミューオンビームを提供できるJ-PARC MUSEで照射試験を2回実施できたことで、負ミューオンがソフトエラーに与える影響を初めて明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①J-PARC MUSEで2回行った照射試験の実験データ解析(特にミューオン崩壊電子計測による入射ミューオン数の導出)を継続して行う。また、J-PARC MUSEで再度照射試験を実施し、多セルビットエラー発生に対する入射角度依存性を調査する。
②建屋内ミューオン計測では、電子の影響を除去するデータ解析手法を検討する。さらに測定器上部に鉛ブロックを設置することで、エネルギー減衰させ、70MeV以上のより高いエネルギーのミューオン計測も行い、200MeV以上の先行研究結果と比較する。
③SOTBデバイスに対する PHITS-SVシミュレーションを実施し、実測データと比較する。負ミューオン誘起SEUを引き起こす主因である捕獲反応のモデル精度検証を行う。
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