2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H03932
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
本多 宣博 東京工業大学, 理学院, 教授 (60311809)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ツイスター空間 / ミニツイスター空間 / 通常二重点 / 双対多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
4次元多様体上では、2形式の分解により、自己双対計量の概念が定義され、多くの幾何学者の興味をひいてきた。自己双対計量にはツイスター空間と呼ばれる3次元複素多様体が付随する。ツイスター空間からは自己双対計量を回復することができ、ツイスター空間は自己双対計量の幾何学的な実現とみなせる。本研究はツイスター空間のうちコンパクトで代数的なものを対象とする。研究代表者の以前の研究により、このようなツイスター空間は基本系が1次元であるという仮定(これは現時点ではかなり緩い仮定だと考えられる)のもと、2種類に分類されることがわかっている。本年度はそのうちの1種類(昨年度まで考察したものとは異なるほう)について考察を行った。
以下で具体的に述べる。研究を行ったのは、ミニツイスター空間とよばれるコンパクト複素曲面上のコニック束と双有理なツイスター空間である。ここでいうミニツイスター空間はHitchinによるミニツイスター空間を自然に一般化して得られるものであり、中田文憲氏と筆者が導入したものである。もともとのミニツイスター空間ではツイスター直線が非特異有理曲線として現れるのに対し、我々の意味でのミニツイスター空間ではツイスター直線は通常二重点をもつ有理曲線として現れる。通常二重点の個数のことをミニツイスター空間の種数とよぶことにすれば、数1のミニツイスター空間は、Segre4次曲面とよばれる有理曲面にほかならないことがわかる。この中のミニツイスター直線のなす空間はこの曲面の双対多様体である。最後の多様体の次数の計算および非正規跡の考察を行った。種数が一般の場合は、ミニツイスター直線のなす空間は、双対多様体として捉えることはできないが、Severi多様体とよばれる対象になる。このようなミニツイスター空間の具体例を構成し、それに対してSeveri多様体の次数や非正規跡の考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
種数1のミニツイスター空間が(2,2)完全交叉曲面であることは以前から認識していた。(2,2)完全交叉曲面は素朴な対象であるが、特異点を許容したものまで考える必要があるため、かなり多様なものが生じてしまい、系統的に扱うことは困難であると考えられた。しかしこれらはすなわちSegre4次曲面と呼ばれるものであることがわかり、単因子論を用いた古典的分類が使えることが判明した。この結果ミニツイスター直線のなす空間(すなわち双対多様体)の系統的な研究が行えるようになったことは予期しない進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2つの方向が考えられる。一つは種数1の場合に、双対多様体の構造を調べることである。これはかなりの計算を要し、見通しが立つためにはまだしばらく研究が必要となりそうである。もう一つは種数が一般の場合に、ミニツイスター空間の分類を与えること、およびそれらのSeveri多様体の構造を調べることである。これは双対多様体としては捉えられないので、新たな考え方が必要となる。種数1の場合のような分類結果を得る見通しはまったく立っていないが、次の結果はすでに得られている:超楕円曲線を正規有理曲線上のconeまたはそのsmoothing(ruled surface)に標準的に埋め込んでそこで分岐する二重被覆をとることにより任意種数のミニツイスター空間を構成できる。これのSeveri多様体はもとの超楕円曲線のAbel-Jacobi写像を使うことによりかなり詳しい構造を調べることができる。
なお、Severi多様体は種数1の場合は双対多様体になる。
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