2016 Fiscal Year Annual Research Report
フラッシュX線を用いた衝突破壊の観測と小惑星サイズ頻度分布の衝突進化への応用
Project/Area Number |
16H04041
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
荒川 政彦 神戸大学, 理学研究科, 教授 (10222738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大槻 圭史 神戸大学, 理学研究科, 教授 (00250910)
長澤 真樹子 久留米大学, 医学部, 准教授 (00419847)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 衝突破壊強度 / フラッシュX線 / 小惑星 / 衝突破片速度分布 / 衝突再集積 / サイズ頻度分布 / カタストロフック破壊 / 二段式軽ガス銃 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、フラッシュX線装置を利用して衝突破壊の様子を観測する手法を開発した。衝突実験とフラッシュX線による観測は、宇宙科学研究所の二段式軽ガス銃と同研究所が所有する三台のフラッシュX線発生装置(300kV)を用い行った。標的試料は、粘土の一種であるベントナイト粉末と適量の水を混ぜることにより作成した。この含水粘土試料に直径3mmの鉄球を10個程度マーカーとして配置し、これを冷凍庫(-15℃以下)で凍結して衝突破壊実験に用いた。 まず、300kVのフラッシュX線装置を用いて標的中の鉄球マーカーが認識可能かどうかを確認した。その結果、直径6cmの凍結粘土試料中の鉄球マーカーが鮮明に撮像できることがわかった。そこで、この標的試料に対して直径7mmのポリカ弾丸を衝突速度4km/sで衝突させる実験を行った。フラッシュX線装置は、一度の衝突実験で3台連動して稼働させた。そして、その撮影タイミングは、衝突から5μs~1msの遅延時間をおき、複数回の実験と撮影を行った。同時に高速ビデオカメラによる撮影も行い、長時間における衝突破片の広がりも調べた。以上の実験結果から、当初予定していたフラッシュX線装置による衝突破壊時の標的変形の観測手法は、凍結粘土試料に対しては完成したと言える。 一方、神戸大において高速ビデオカメラを購入し、10万コマ毎秒で画像分解能320x240pixels、1秒以上の撮影が可能となる実験観測システムを構築した。神戸大学では15℃の低温室に設置した真空チャンバー内で二段式軽ガス銃を用いた衝突破壊実験を可能である。今年度は、凍結粘土試料の衝突破壊強度の計測を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、フラッシュX線装置を利用した衝突破壊の観測手法の構築を研究計画の柱としていた。フラッシュX線装置を用いた実験は、宇宙科学研究所の共同利用実験として、研究所附属の衝突実験施設を利用して行うことができた。この実験により、初計画していたフラッシュX線装置を利用した観測の目処をつけることができた。今年度の実験から、直径6cmの凍結粘土試料においては、直径3mmの鉄球マーカーを内部に配置することで、試料内部の変形の様子を調べることが可能だとわかった。また、このフラッシュX線の撮影画像を用いて、試料内部の変形を時系列で再構築できることを確認した。 一方、神戸大学では-15℃の低温室中で凍結粘土試料を用いた衝突破壊実験を開始している。そして、その様子は新規に購入した高速ビデオカメラで撮影し、フラッシュX線装置では観測できない連続的かつ長時間の撮影を行っている。神戸大学では、宇宙研においては不可能な凍結粘土破片の回収と衝突破片速度の計測を開始した。 衝突破壊の数値シミュレーションに関しては、研究協力者のMartin Jutzi(ベルン大)が来日してその内容について議論を行った。また、研究分担者の大槻と長沢は、それぞれSPH法を用いた衝突破壊・再集積モデルの構築と小惑星の衝突破壊によるサイズ頻度分布の進化に関する数値モデルの開発を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に構築したフラッシュX線観測システムを利用した衝突実験を進める。さらに、衝突実験とSPH法による数値計算を比較することで天体衝突モデルの改良を進め、重力支配域での衝突破壊強度の物性依存性を明らかにする。また、小惑星の衝突破壊強度を考慮したサイズ頻度分布の衝突進化の数値計算を開始し、実際の小惑星の観測結果と比較する。 ・衝突実験:平成28年度に開発した観測手法を用いて凍結粘土試料に対する衝突実験を継続する。そして、衝突破壊した標的内部の破片速度分布や中間速度(V*)が、物質強度や空隙率、さらに粘性率によりどのように変化するかを調べる。 ・フラッシュX線観測:実験は宇宙科学研究所の衝突実験施設を利用して行う。3台のフラッシュX線装置を利用して撮影する。撮影されたX線画像の鉄球マーカーの位置変化から、標的内部の破片速度分布を決定する。 ・破片回収:回収実験は、神戸大学の低温室を利用した衝突実験で行う。実験後の衝突破片を回収し、それぞれの衝突条件における破片のサイズ頻度分布を計測する。計測データは、SPH衝突モデルの検証のため計算結果と比較する。 ・数値シミュレーション:様々な衝突条件で異なる物性を持つ標的に対して計算を行う。衝突実験の結果と数値計算の結果を比較して、衝突モデルに用いた構成方程式の改良や経験的なパラメターの最適化を行う。 ・観測との比較:C型小惑星とS型小惑星のサイズ頻度分布を宇宙赤外望遠鏡の観測データから実測値として決定する。そして、それぞれのサイズ頻度分布を再現できる衝突破壊強度を衝突進化モデルの計算から求める。
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[Journal Article] Performance of Hayabusa2 DCAM3-D camera for short-range imaging of SCI and ejecta curtain generated from the artificial impact crater formed on asteroid 162137 Ryugu (1999 JU3)2016
Author(s)
Arakawa, M.;Wada, K.;Saiki, T.;Kadono, T.;Takagi, Y.;Shirai, K.;Okamoto, C.;Yano, H.;Hayakawa, M.;Nakazawa, S.;Hirata, N.;Kobayashi, M.;Michel, P.;Jutzi, M.;Imamura, H.;Ogawa, K.;Sakatani, N.;Iijima, Y.;Honda, R.;Ishibashi, K.;Hayakawa, H.;Sawada, H.
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Journal Title
Space Science Review
Volume: -
Pages: 1-26
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Thermal conductivity model for powdered materials under vacuum based on experimental studies2017
Author(s)
Sakatani, N., Ogawa, K., Iijima, Y., Arakawa, M., Honda, R., and Tanaka, S.
Organizer
48th Lunar and Planetary Science Conference
Place of Presentation
The Woodlands (Texas, U.S.A.)
Year and Date
2017-03-20 – 2017-03-24
Int'l Joint Research
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[Presentation] Effect of oblique impact on impact strength of planetesimals2016
Author(s)
Yasui, M., Yoshida, Y., Matsue, K., Takano, S., Arakawa, M., Ogawa, K., and Okamoto, C.
Organizer
DPS 48/EPSC 11 Meeting
Place of Presentation
Pasadena ( CA, U.S.A.)
Year and Date
2016-10-16 – 2016-10-21
Int'l Joint Research
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