2017 Fiscal Year Annual Research Report
フラッシュX線を用いた衝突破壊の観測と小惑星サイズ頻度分布の衝突進化への応用
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16H04041
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
荒川 政彦 神戸大学, 理学研究科, 教授 (10222738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大槻 圭史 神戸大学, 理学研究科, 教授 (00250910)
長澤 真樹子 久留米大学, 医学部, 准教授 (00419847)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 衝突破壊強度 / 重力支配域 / 脱出速度 / 微惑星 / 再集積天体 / 多孔質天体 / 物質強度 / 内部摩擦 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、重力支配域における衝突破壊強度の物性依存性を明らかにするために、微惑星を模擬した凍結粘土球および多孔質石膏球の衝突破片に関して、その速度-質量分布をフラッシュX線を利用して研究した。 室内実験により、重力支配域の衝突破壊強度を求めるためには、衝突破片の質量とその速度の関係を明らかにする必要がある。特に、標的表面からだけでなく、内部から放出される破片の速度も含めた計測が必要である。そこで今年度は、3台のフラッシュX線源とイメージングプレートにより、衝突破壊時の標的内部の透過撮像を撮影する手法を確立した。この手法では、標的内部に設置した直径3mmの鉄球マーカーの位置の時間変化を調べることで、標的内部の破片速度を計測している。 今年度は、直径7mmのポリカーボネート弾丸を直径6cmの凍結粘土球と多孔質石膏球に対して衝突速度1.5km/sから6.5km/sで衝突破壊実験を行った。なお、凍結粘土球は3種類の異なる引っ張り強度(1MPa~2MPa)を持つ。実験の結果、それぞれの標的試料の半分の質量が持つ上限速度を決めることができた。この速度を中間速度(V*)と定義し、このV*のエネルギー密度依存性や引っ張り強度との関係を求めた。その結果、V*はエネルギー密度に比例して大きくなるが、引っ張り強度には依存しないことがわかった。一方、空隙率47%の多孔質石膏球のV*は、凍結粘土球のV*よりかなり小さくなり、空隙がV*に大きな影響を及ぼすことが分かった。さらに、iSALEコードを利用した数値シミュレーション実験から、自己重力を持つ天体が衝突破壊・再集積を起こす時の最大再集積速度を調べた。その結果、強度を持たない天体では、再集積天体の質量が元の天体質量の半分になる時、その最大再集積速度は元天体の脱出速度程度となることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたように、フラッシュX線を利用して、衝突破壊時の試料内部の破片速度分布を計測する手法を確立した。さらに、氷微惑星を模擬した凍結粘土試料の含水率を変化させて、異なる引っ張り強度を持つ試料に対する系統的な実験を行い、破片速度分布の物質強度依存性を明らかにしつつある。また、多孔質石膏試料に対しても同様な実験を開始しており、破片速度分布に対する空隙率依存性も徐々に明らかになってきた。さらに、iSALEコードを利用した数値シミュレーションを行い、室内実験の結果と理論計算の比較を行いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に開発して、平成29年度に始動したフラッシュX線観測システムを利用した衝突実験をさらに進める。そして、衝突実験とiSALE法による数値計算を比較することで天体衝突モデルの改良を進める。物性が大きく異なる標的を用いた実験から、重力支配域での衝突破壊強度の物性依存性を明らかにする。今年度は、小惑星の衝突破壊強度を考慮したサイズ頻度分布の衝突進化に関する考察を行い、実際の小惑星の観測結果と比較する。 (1)室内実験:担当 荒川、大学院生2名・衝突実験:H29年度に引き続きフラッシュX線で観測を行いながら衝突破壊実験を行う。最終年度は、大きく物性が異なる多孔質石膏試料とシリコンオイル粘土試料用いた実験を行う。多孔質石膏では圧縮変形の効果、シリコンオイル粘土試料では粘性変形の効果を調べる。・フラッシュX線観測:実験は宇宙科学研究所の衝突実験施設を利用して行う。3台のフラッシュX線を利用して撮影を行う。撮影されたX線画像の鉄球やジルコニア球マーカーの位置変化から、標的内部の破片速度分布を決定する。 (2)天体衝突シミュレーション:担当 大槻・iSALEコードを利用して衝突破壊のシミュレーションを行う。破片の速度-質量分布を異なる衝突条件(エネルギー密度)で調べることにより、室内実験との定性的な比較を行う。また、自己重力による再集積の効果を定量的に調べることで、衝突破壊強度のサイズ依存性を調べ、室内実験に適応できる適切な再集積クライテリオンを明らかにする。 (3)小惑星のサイズ頻度分布:担当 長澤、大槻、荒川・宇宙赤外望遠鏡の観測データから求めたC型小惑星とS型小惑星のサイズ頻度分布の特徴を再現できる衝突進化モデルに関してさらに検討を進める。・各タイプの小惑星について推定される衝突破壊強度から、(2)の結果を用いて小惑星の物性値を推定する。
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Research Products
(9 results)