2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Functional Materials Based on Efficient Synthesis of PAHs Containing Pentagonal Rings
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16H04111
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
村田 理尚 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (30447932)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多環芳香族炭化水素 / 固体発光 / インターカレーション / 芳香族性 / カーボン物質 / X線構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究において,テトラセンおよびペリレンのπ共役拡張に関する検討を実施した。テトラセンの両側に二つのチエニル基を連結した前駆体を用いて酸化的二重環化反応を検討した結果,メチル基を導入する手法により高分子化を抑制することで,テトラセン骨格の両側から5員環を介してチオフェン環の縮環した化合物が比較的良好な収率で単離できることがわかった。1H NMRの芳香族領域におけるシグナルの高磁場シフトと,DFT計算による環電流可視化の結果から,ジチエノ縮環型テトラセンの電子構造は,反芳香族性の寄与が高いことがわかった。また,対応するジフェニル縮環型テトラセンと比較すると,HOMO-LUMOギャップはさらに狭くなっていることがわかり,本研究で目標とする狭バンドギャップ型ナノカーボン物質の創製に有用なビルディングブロックとなることを示す結果が得られた。また,Scholl反応とも呼ばれる酸化的C-Hカップリングに関しては,その反応機構に関する議論が長く続いており,いくつかの反応機構が国外の研究グループから提案されてきたものの,反応の生成物を合理的に予測することは困難な状況にある。我々は,Scholl反応を用いる分子内環化の位置選択性に関して実験的・理論的な検討を以前より進めており,ジカチオン状態を得る新たな機構の提唱にも至っている。本年度は,ペリレン骨格の両側に二つのナフチル基を導入した前駆体のScholl反応による二重環化に関する検討を進めたところ,溶解性について改善の必要が生じたものの,従来とは異なる環化の位置選択性を示すことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反芳香族性の大きく寄与したジチエノ縮環型テトラセンが,テトラセンから出発して3段階の化学変換により効率的に合成できることを見出し,高い電子受容性をもつカーボン材料の創製に有用であることがわかった。また,さらに簡便かつ効率的な合成ルートの開発も進めており,基礎研究から機能性材料化学への展開に道が開けてきたと考えているため。また,我々が先に見出したユニークな付加反応を適用することにより,固体で強く発光する高分子材料の創製にも早期に展開できると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度においては,高い電子受容性をもつジチエノ縮環型テトラセンに関して,酸化的C-Hカップリングに利用できる保護基を開発することにより,固体発光性の高分子材料の高効率合成および光・電子物性の解明を図る。また,高い電子受容性をもつ高分子カーボン物質の合成を検討し,電極活物質としての機能性を明らかにする。さらに,酸化的C-Hカップリング反応の機構解明も併せて進めることにより,これらカーボンリッチな物質群の合理的な大量合成ルートを確立する。
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