2017 Fiscal Year Annual Research Report
Multifunctional Molecular Assemblies based on Orbitally Degenerate Polycyclic Aromatic Hydrocarbon Molecules
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16H04139
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 幸大 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (10378870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前里 光彦 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60324604)
岸田 英夫 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40311633)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多環芳香族炭化水素 / 軌道縮重 / 超伝導 / スピンフラストレーション / 非線形光学応答 / 超分子ローター |
Outline of Annual Research Achievements |
t-ブチル基を含むhexa-peri-hexabenzocoronene(以下(t-Bu)6HBC)を合成し、ポリオキソ酸Mo6O19陰イオン存在下で電解酸化を行うことにより、2種類の新規(t-Bu)6HBC陽イオン塩を得た。結晶中での(t-Bu)6HBC分子の価数はそれぞれ+1価と+2価であり、いずれもface-to-faceダイマーを形成している。 側面にπ共役系を有するリング状分子[6]cycloparaphenylene(以下[6]CPP)の電解酸化を試みたところ、Mo6O19陰イオン存在下で初の[6]CPP陽イオン塩が得られた。単結晶構造解析から、+2価[6]CPPは2次元面を形成するが、有意な分子間π-π相互作用は確認されなかった。[6]CPP分子のリンカー部のC-C結合長(1.40(3)Å)は中性分子の場合(1.490(2)Å)に比べ短く、陽イオン種において予想されるキノイド構造と一致している。 表面がSiO2薄膜で覆われたSi基板上に微小電極をリソグラフィーによって作成し、その上に有機単結晶試料の薄膜を貼り付けて電界効果トランジスタを作成する方法の確立に取り組んだ。 coroneneやbenzo[ghi]perylene(以下bper)をPMMA中に分散させた薄膜を作製し、電場変調分光法により電子状態の研究を行った。作製した薄膜に電場を印加し、電場による吸収スペクトルの変化を調べた。得られた電場変調吸収スペクトルを離散準位モデルにより解析し、励起準位構造を明らかにした。また、bper錯体のラマン散乱分光測定を行い、スペクトルの詳細な解析結果をもとに電子状態との相関について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
coronene、bper、[6]helicene、(t-Bu)6HBC、[6]CPPなどの多環芳香族炭化水素分子を用いて20種類以上の新規電荷移動(CT)錯体の開発に成功した。bper陽イオンラジカル固体の開発に初めて成功し、coronene(D6h)からbper(C2v)に対称性を低下させることにより交互積層型中性CT錯体中のbper分子の面内回転が抑制され、分離積層を有する陽イオンラジカル塩のエネルギーギャップが増大する(電荷不均一が関与)ことを見出した。また、coronene錯体とは異なり、結晶構造データ(結合距離)からbper分子の価数を概算できることを明らかにした。さらに、CT錯体中の[6]helicene分子の形状を分子間相互作用により変化させられることを見出し、(t-Bu)6HBCならびに[6]CPP陽イオン固体の開発に初めて成功したことを鑑みると、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) coronene分子の価数制御:類似した形状・サイズを有する異価陰イオン(例えば、-1価GaCl4と-2価ZnCl4、-2価W6O19と-3価VW5O19)存在下でcoroneneの電解酸化を行い、陽イオンラジカル塩中のcoronene分子の連続的な価数制御(化学ドーピング)を行う。結晶構造データを用いたバンド計算を駆使しながら、coronene分子の価数と電子物性(伝導性、磁性)の相関について知見を得ると同時に、金属相や超伝導相の探索を行う。また、中性とイオン性の相境界に位置する交互積層型coronene錯体への圧力印加を行い、中性-イオン性転移の発現を目指す。 (2) D6h対称HBC誘導体を用いた物質開発:現在までに10種類以上のcoronene陽イオンラジカル塩を開発しているが、金属状態の実現には至っていない。そこで、拡張したπ共役系を有するD6h対称分子の合成ならびに陽イオンラジカル塩の合成を推進する。HBC分子は難溶性のため、t-Bu基を導入したHBC誘導体を合成し、電解酸化による陽イオンラジカル塩の合成を行う。結晶構造と電子物性の相関について知見を得ると同時に、圧力印加を駆使しながら金属相や超伝導相の探索を行う。 (3) 低対称coronene誘導体の開発:前年度に引き続き、1,2-difluorocoroneneの合成を推進する。結晶中における面内回転挙動について検討し、冷却速度と誘電挙動の相関について知見を得る。 (4) coroneneの励起状態の準位構造の解明:各種分光測定を用いてcoronene薄膜・錯体等およびcoronene等の高分子分散膜の光学的評価を行う。さらに、電子励起状態の性質を明らかにするために、ポンププローブ測定と電場変調分光測定を行う。
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Research Products
(26 results)
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[Journal Article] Design and Preparation of a Quantum Spin Liquid Candidate κ-(ET)2Ag2(CN)3 Having a Nearby Superconductivity2017
Author(s)
H. Hiramatsu, Y. Yoshida, G. Saito, A. Otsuka, H. Yamochi, M. Maesato, Y. Shimizu, H. Ito, Y. Nakamura, H. Kishida, M. Watanabe, R. Kumai
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Journal Title
Bulletin of the Chemical Society of Japan
Volume: 90
Pages: 1073~1082
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Control of Metal-Insulator and Superconductivity Transitions of BEDT-TTF Salts by Electric Double Layer Transistor under Applied Pressure2017
Author(s)
H. Ito, Y. Eura, Y. Edagawa, T. Takenobu, T. Hiramatsu, Y. Yoshida, G. Saito, H. Akutsu, H. M. Yamamoto, Y. Kawasugi, R. Kato
Organizer
ISCOM2017
Int'l Joint Research
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