2016 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamic Structural Characterization of Electron Transfer Complex in Respiratory Chain of Mitochondria and Its Electron Transfer Regulation Mechanism
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16H04173
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石森 浩一郎 北海道大学, 理学研究院, 教授 (20192487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 毅 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (30343742)
齋尾 智英 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80740802)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電子伝達 / シトクロムc酸化酵素 / シトクロムc / ミトコンドリア呼吸鎖 / 電子伝達複合体 / ナノディスク |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は以下の項目について、その研究を進めた。 ①高等動物CcO変異体の大量精製法の検討 浮遊培養可能な哺乳動物の細胞(一部のHEK293やCHO細胞など)において、高等動物のCcOを発現できる実験系を確立するため、いくつかの予備的な実験を行い、発現系の構築についての設計指針を得ることができた。 ②精製CcO蛋白質のナノディスク化 本年度は分子量が小さく、その膜貫通半径が8 nm程度のコレラ菌由来のCcOについて、そのナノディスク化条件を検討し、再現性良くナノディスクに構築できる条件を確立することができた。ここで得られた条件をもとに、ウシ心筋由来のCcOについてもそのナノディス化を検討したが、ウシ心筋由来のCcOは、コレラ菌由来のCcOが3個のサブユニットからなるのに対して、13個のサブユニットからなり、その膜貫通部分の半径が10 nmを超えることから、これまで本研究者らがナノディスク化に用いてきた足場蛋白質MSP1D1やMSP1E3D1ではなく、より半径の大きなナノディスクを形成可能なMSP1E3D1をタンデムに連結したMSP(1E3D1)2 の作成を試みた。発現条件や精製条件を検討することにより、その大量精製についての具体的な実験条件を確立できた。 ③ ナノディスク挿入CcOを用いたCyt cにおける相互作用部位の同定と界面活性剤可溶化系との比較 本年度は、再現良くナノディスク化することができるコレラ菌のCcOについて、その紫外可視吸収スペクトルや共鳴ラマンスペクトルから、CcOの活性中心近傍の詳細な構造解析を進め、電子伝達活性の機能解析を進めた。その結果、ナノディスク再構成CcOにおいては、界面活性剤で可溶化した場合に比べ、CcOに結合する酸素分子の親和性が上昇したことが明らかになり、より生体内に近い条件下での測定が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の実験計画の各項目についての進捗状況は、以下のとおりである。 ①高等動物CcO変異体の大量精製法の検討 ほぼ当初の予定通りに実験を進めることができ、その成果として、発現系や精製条件についての指針を立てることができた。一方、少量の培養では問題にならない点が、大量培養では大きな問題になる可能性があることから、培養規模を大きくした場合の状況を考慮したうえで、さらに慎重に条件を最適化する必要がある。 ②精製CcO蛋白質のナノディスク化 これまで本研究者らが用いてきたナノディスクより半径の大きなナノディスクを形成可能な足場蛋白質MSP(1E3D1)2は、その構造安定性が低いため、培養や精製の条件を丁寧に最適化する必要がある。この項目についてもほぼ当初の予定通り進んではいるが、得られるMSP(1E3D1)2標品の純度や収量に再現性がまだ十分にはみられず、培養、精製ごとにその純度や収量が一定とはならない。技術的な問題を含めて、さらに発現、精製の条件を最適化する必要がある。 ③ ナノディスク挿入CcOを用いたCyt cにおける相互作用部位の同定と界面活性剤可溶化系との比較 コレラ菌由来のCcOについては、再現性良くナノディスク化する手法が確立できたので、当初の予定通り、種々の測定を行い、その構造・機能解析を進めることができた。しかし、その電子伝達速度の測定においては、当初予想したミカエリス―メンテン型の解析では実験結果を矛盾なく説明することができず、非ミカエリス―メンテン型の解析をする必要が生じた。このため、新たな電子伝達反応モデルを検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の実験計画の各項目についての進捗状況を踏まえた今後の方策については、以下のとおりである。 ①高等動物CcO変異体の大量精製法の検討 蛋白質の誘導発現状態は、培地のかくはん効率や溶存酸素濃度などが培養体積によって大きく変化するため、培養体積を少しづつ増加させたうえで、細かく慎重に条件を変化させることが必要である。また、CcOのような多くのサブユニットが会合した蛋白質において、その一つのサブユニットにアミノ酸変異を導入する場合には、変異を導入したサブユニットの発現効率によっては、変異サブユニットが欠損した蛋白質が得られる可能性がある。そのため、より高い発現効率実現のために、培養温度についても検討を行う。 ②精製CcO蛋白質のナノディスク化 構造安定性の低いMSP(1E3D1)2の発現効率向上のため、発現、精製の条件最適化を試みる必要がある。現状ではMSP(1E3D1)2の発現量が少ないため、細胞抽出液の単純なSDSポリアクリルアミド電気泳動では、MSP(1E3D1)2のバンドが確認できず、培養条件等の条件検討が効率的には進まない。そこで、実験条件探索の効率化のため、MSP(1E3D1)2に抗体で認識可能なタグを融合させ、少量でも鋭敏に発現量を把握できるようにすることで、実験条件最適化の手順を効率化する。 ③ ナノディスク挿入CcOを用いたCyt cにおける相互作用部位の同定と界面活性剤可溶化系との比較 これまでの実験では、電子供与体であるシトクロムc4(Cyt c4)の収量が安定せず、CcOに対して大過剰量のCyt c4が必要とする条件での電子伝達測定を行うのは困難であり、その結果、見かけの反応速度が飽和しなかった可能性が高い。Cyt c4の培養、精製条件を再検討し最適化をすることで十分量のCyt c4を確保することで、より詳細で信頼性の高い電子伝達反応の追跡を試みる。
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