2016 Fiscal Year Annual Research Report
全固体電池における力学・電気・化学的因子相互作用機構の解明とその応用
Project/Area Number |
16H04229
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 一永 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50422077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 稚子 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (40359691)
鈴木 研 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40396461)
鷲見 裕史 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (80613257)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 完全固体電池 / 電気 / 化学 / 力学 / 非破壊評価 / 原子欠陥 / 計算化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、燃料電池ならびに2次電池をセラミックス・金属で創成し、性能ならびに耐久性・信頼性を飛躍的に向上することを目指した基礎/応用研究である。 セラミックスをはじめとする機能性酸化物材料は耐熱性・耐環境性・耐薬品性・寸法安定性等に優れているが、特に優れた電気化学特性を有するため完全固体電池材料として、利用が期待されている。一方、電池用酸化物材料の一部には酸素不定比性を有する材料も含まれており、酸素不定比性と電気・化学・機械的特性変化の評価が極めて重要であることをこれまでの研究で明らかにしてきた。そこで、本年度は共同研究者の埼玉大学の荒木が様々な材料の詳細な酸素不定比性、産総研の鷲見がそれに対する電気化学的評価、佐藤が機械的特性評価、東北大学の鈴木が計算化学評価を行い、様々な材料のデータベース構築を試みた。特にこれまでのセリアに加え、ナノポーラスNi-Feやコバルト酸リチウム、Ni-YSZの評価を重点的に行った。セリア、Ni-YSZ, コバルト酸リチウムは予想に近い挙動を示し、これまで我々が研究蓄積した結果を補強する結果となった。一方Ni-Feに関しては不定比性だけではなくナノポーラス構造が大きく電気・化学・力学的特性に影響を及ぼしていることが明らかとなり、不定比性だけでなくナノ構造欠陥が極めて重要であることが明らかとなった。特に酸化環境でのNi-Fe酸化物は我々の当初の予想を大幅に上回るNi-Feよりも大きな延性挙動を示し、他の材料への応用も検討することとなった。 そこで、この現象がナノポーラスによる構造因子によるものなのかそれとも材料の組み合わせによる材料因子によるものなのかを見極めるため、一般に製造される溶解鋳造法で作製したNi-Feとの比較を行った。結果、溶解鋳造法による方法では現れない延性挙動を示し、この現象がナノポーラスによる構造因子が起因していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の予定どおり、様々な酸化物の電気・化学・機械的評価を行い、データベース構築を行った。セリア、Ni-YSZ, コバルト酸リチウムはこれまで申請者らが蓄積した結果を良く支持する結果が得られ極めて充実したデータベースを構築できた。一方、ナノポーラスNi-Feは従来の常識では全く説明できないナノ構造欠陥に由来する特異的な振る舞いが明らかになった。また、熱や酸化・還元サイクル特性も良好で、通常ナノ構造を有する場合、長時間かつサイクルがかかった状態では大きく変化する構造が維持されることがわかった。材料起因でなく構造起因による特性変化が明らかになれば様々な材料で応用される可能性を秘めており今後の研究に大きな影響を及ぼす可能性がある。そのため当初の計画以上に進展していることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ナノポーラスNi-Feと溶解鋳造法で作製した同じ組成のNi-Feの変形挙動を評価することで構造因子による延性化メカニズムを提唱した。 一方、定性的には説明できるものの、なぜ、粒子表面に多数存在するナノポーラス構造が延性化に寄与するのかは全くわからない。そこで、これまでの、SEM, TEM, BET, ディラト等の観察方法で得られた構造情報だけでなく分子動力学や第一原理計算を用いた計算科学アプローチによる変形挙動メカニズムの解明を目指す予定である。 また、これまで我々が行ってきた混合電子構造も併用することでより大きなかつ様々な材料への応用ができる材料開発指針を作り上げたいと考えている。具体的な材料としてセリア系、ランタンコバルト系、Ni系、鉄系の材料についてより詳細に検討していきたい。また、ナノポーラス構造を上述した材料系に適用できるのか、ナノポーラス構造を有することで他の機能性が失われたり発現したりしないのかも含めて総合的に検討する予定である。 実験で得られた結果と計算科学で得られた結果を組み合わせて構造ならびに材料因子を組み合わせた材料開発を行い、世界に類を見ない超高じん性セラミックスの創成を目指す。
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