2017 Fiscal Year Annual Research Report
3D動的マイクロ力学刺激による中枢神経回路網のアクティブ誘導制御・再生移植支援法
Project/Area Number |
16H04289
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小沢田 正 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (10143083)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馮 忠剛 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (10332545)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | iPS細胞 / 分化・成長誘導制御 / 3次元ゲル包埋培養 / 超小型3次元振動ステージ / 3次元神経回路網構築 / ニューロン簡易移植モデル / 3次元動的力学刺激環境 / 移植性促進法開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,iPS細胞を用いた再生移植治療に貢献するため,生きている培養細胞に対し3次元の動的力学刺激を自在に付加し得る高機能超小型振動デバイスを開発し,ゲル包埋培養法と融合させることで,ニューロンネットワーク構造体のアクティブ立体誘導制御・構築を可能とする革新的デバイスシステムの創製をめざし,以下のように研究を実施した。 立体ねじれV型カンチレバーおよび立体π/2ねじれバイモルフカンチレバーを用いた3次元振動ステージシステムを開発し,これまでより大変位化,広帯域化の可能性を見出した。また,コラーゲン・ゲルを用いた「ゆるやかな足場」による神経細胞包埋培養法の確立に近づいた。ただし,蛍光観察の鮮明性には依然として難点が存在するため,ゲル濃度の調整・最適化による改善が必要である。この包埋培養ディッシュを開発した超小型3次元振動ステージ上に設置し,3次元的力学刺激を組織的に作用させることにより,ニューロンネットワークの3次元化を段階的に誘導する手法を開発中である。 誘導される3次元中枢神経回路網を用いて,脊髄損傷再生移植治療を模擬する移植モデルを新たに構築する。今後,開発した3次元振動ステージを用い,移植施術後のニューロンの生着性,連結融合性を促進する最適な3次元動的力学刺激環境の同定をめざす。 今後さらにハイブリッド電気・力学神経生理機能計測評価用3次元マイクロアクチュエータを独自に開発し,移植神経突起へのマイクロ力学,電気刺激の発現付加,応答計測を行い,神経回路機能の結合性,反応特性,電気活動性に基づく移植適合性事前計測評価・再生治療支援法の開発をめざす。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超小型圧電3次元振動ステージスシステムの構築と最適化を行った。この超小型3次元振動ステージは,1枚のステンレス板から立体ねじれV型カンチレバー状に加工した振動子に,直交3軸方向それぞれの変位が制御できるように3箇所に複数の圧電素子を接着し製作する。これらの圧電素子の設置位置の最適化,素子自体の大型化により,これまでより,大変位化,広帯域化の可能性を見出した。さらに,立体π/2ねじれバイモルフカンチレバー状に加工した振動子に,直交2軸方向それぞれの変位が制御できるように2箇所に複数の圧電素子を接着し製作する手法を考案した。培養ディシュをπ/2面内回転させることで実質3軸方向に刺激付加可能とした。これらの改善により,これまでより大変位化,広帯域化の可能性を見出した。これらのデバイスをCO2インキュベータ内に組込み制御することにより,種々の3次元動的力学刺激環境下で組織的に培養コントロールを行うことができるシステムの構築を行った。 コラーゲン・ゲルを用いた「ゆるやかな足場」による神経細胞包埋培養法の確立に近づいた。ただし,蛍光観察の鮮明性には依然として難点が存在するため,改善が必要である。この包埋培養ディッシュを上記の超小型3次元振動ステージ上に設置し3次元的力学刺激を組織的に作用させることにより,ニューロンネットワークの3次元化を段階的に誘導する手法を開発中である。 以上のシステムにより,マウス神経細胞については,動的振動刺激を付加した場合,ニューロンネットワークを広く伸展させる効果があることを確認した。ヒト神経細胞については,長時間振動刺激あるいはインターバル振動刺激を付加することで,運動神経細胞への分化・成長が促進されることが明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
3次元振動ステージスシステムを用いた力学刺激付加デバイスの性能向上をある程度図ることができたため,今後はこれを利用し,比較的培養が容易なマウスiPS細胞(APS0001)を用いた先導研究を行いつつ,そのノウハウの蓄積に基づきヒトiPS細胞(HPS0002)の神経細胞への力学刺激によるニューロンのネットワーク構築・制御法開発を目指す。さらに,コラーゲン・ゲル包埋培養時の染色観察の精度向上および移植モデル構築に向けたゲル構造最適化,モデル設計・試作,力学刺激付加デバイスのさらなる性能向上をも目指す。 特に今年度の具体的な実験研究では,iPS細胞から分化誘導された神経細胞の種々の力学刺激に対する反応や挙動を精査,検証し,3次元ニューロンのネットワーク構築・制御に最適な動的力学刺激環境の探索・確定を目指すものとする。 一方,誘導される3次元中枢神経回路網を用いて,脊髄損傷再生移植治療を模擬する移植モデルを新たに構築し,その妥当性についての評価・検証を行う予定である。さらに,開発した3次元振動ステージを用い,移植施術後のニューロンの生着性,連結融合性を促進する最適な3次元動的力学刺激環境の同定をめざす。
|