2017 Fiscal Year Annual Research Report
トップダウン・ボトムアップ統合オンチップ細胞計測システム
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16H04301
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
丸山 央峰 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60377843)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノメカトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞質内に導入したセンサを用いた細胞質内での磁気操作システムによる搬送速度および細胞の生存率を評価するための,細胞導入法について検討した.今年度は,昨年度に引き続き異なる波長の光に反応する光応答性材料を用いることで,搬送,環境計測,ゼータ電位制御,局所加熱といった,異なる機能を独立に制御可能な蛍光センサの評価を行った. 蛍光センサは,直径1 umのポリスチレン製高分子ビーズに温度感受性を有し,561 nmの波長で励起される蛍光色素のローダミンBを内部に導入した.また高分子ビーズを,金ナノロッドとフォトクロミック材料のスピロピランを含んだリン脂質のDOPCからなる脂質二重膜でコートした.金ナノロッド(直径10 nm,長さ41 nm)は表面プラズモン効果により808 nmの波長の光を選択的に吸収し発熱する.スピロピランは360 nm付近の紫外光によりスピロピラン型からメロシアニン型に変化する際にゼータ電位が増加する.高分子ビーズは比屈折率が水(1.3)よりも高く,1064 nmのレーザを用いて,培養液中で光ピンセットでの操作に成功した.360 nmの光照射により蛍光センサの表面の電荷を負から正に変化させ,細胞膜に選択的に固定することに成功した.細胞膜に固定した光駆動マイクロロボットに808 nmの光を照射することで,気泡の発生を確認し,加熱できることを確認した.以上のことから蛍光センサに必要とされる機能を確認した. チップ底面に作製する細胞を培養可能な蛍光センサアレイについては,光硬化性樹脂のポリエチレングリコール内に,温度,pH,カルシウムイオンのそれぞれ検出可能な蛍光色素を導入した10 um程度のマルチ蛍光センサピラーのパターンをフォトリソグラフィにより作製した.また,このセンサアレイをゼラチンでコートすることで細胞培養に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
蛍光センサの光操作と光局所加熱の併用によるセンサの選択的細胞導入について遅れが生じている.光操作については問題なく進んでいるが,金ナノ粒子の表面プラズモン効果を用いたレーザ加熱の際に,異なる波長で励起している蛍光センサの蛍光強度が増加する現象が生じたため,加熱時の温度変化の制御が困難である.センサを構成する材料の見直し及び表面プラズモン効果以外の非接触加熱手法を用いた細胞導入法を検討する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞質内への導入を目的として,異なる波長の光を用いた蛍光センサの光操作と光加熱による導入法を確立する.細胞内に導入した蛍光センサに対して光操作及び磁気操作を用いて操作を行い,光局所加熱による核内導入を行う.導入したセンサの細胞核内での磁気操作システムによる搬送速度および細胞の生存率の評価を行う.導入したセンサを用いて,ウイルス感染細胞の細胞核内での生理状態のマルチパラメータ計測を行い,温度・pH分布を計測する.マルチ蛍光センサアレイを用い,インフルエンザウイルス感染細胞内の細胞質内に導入した蛍光センサビーズによる細胞核内計測と集団細胞計測の同時計測を行い,細胞核内でのウイルス増殖部位の特定と,ウイルス感染細胞の周辺細胞集団の生理状態変化の計測結果と生化学解析の結果を元に,ウイルス増殖・拡散のメカニズムを明らかにする.
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