2016 Fiscal Year Annual Research Report
Stabilization Control of Power Systems with Dynamic Voltage Support by Renewable Energy Sources
Project/Area Number |
16H04314
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大山 力 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (40160642)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 隆男 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (00432873)
橋口 卓平 九州産業大学, 工学部, 准教授 (30452816)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電力系統 / 過渡安定度 / 太陽光発電 / 無効電力制御 / 電力系統安定化装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー電源の普及拡大は、電力潮流の複雑化や同期発電機の一部停止に伴う同期化力の低下などにより、同期安定度低下を引き起こす要因となり得る。そこで本研究では、特に過渡安定度に着目して、以下に示す3項目について検討を進めた。 (1)電力系統は様々な非線形を有する大規模かつ複雑なシステムとしてモデル化することができる。その挙動の複雑さから、一般に事故発生時における電力動揺の安定性判別は容易では無く、長時間の解析が必要になる。そこで、過渡安定度における安定限界を効率的に導出するために、電力系統の持つカオス性に着目して、短時間の動揺波形から安定度を高速に判別する手法を検討した。 (2)再生可能エネルギー電源は、系統連系に用いるインバータの容量に空きがある場合には、無効電力を制御できる機能を付与できると考えられる。電力系統の動揺状態に合わせて無効電力の注入もしくは吸収を行うことで、系統安定化を図る概念は一般にDynamic Voltage Support (DVS)と呼ばれ、世界的に様々な検討が進んでいる。本研究では、特に比較的容易に実系統へ適用できることを目的として、各分散型電源が自端電圧の観測に基づいて動作できるドループ制御、および非線形制御に基づく無効電力制御手法を開発し、その有効性を数値計算により検討した。 (3)電力系統の挙動を安定化するために、従来より同期発電機に電力系統安定化装置(PSS)が付与されてきた。再生可能エネルギー電源の普及、ならびに電力系統の広域的運用が拡大すると、変化する系統条件に適応できるように、PSSの制御系にも一層のロバスト性が求められる。そこで本研究では、電力系統の非線形性を不確かさとして考慮して、ロバスト制御に基づいたPSSの制御系設計手法の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究成果は主に以下のように整理することができる。 (1)電力系統の持つ非線形性に着目した高速安定判別手法の検討は、順調に進展している。当初の研究計画では安定平衡点周りに形成される不安定周期軌道を逆時間積分法により求めることを予定していたが、事故発生時の解軌道上における安定限界点をまず1点効率的に導出するために、電力系統のカオス性に着目した高速安定判別手法を検討した。具体的には、事故除去直後の動作点に対して微小な摂動を与えた数値解析を行い、摂動の有無に伴う二つの解軌道間の距離から初期値鋭敏性を定量的に評価し、カオス性が認められる場合には、その後の波形は不安定化すると推定する手法である。 (2)再生可能エネルギー電源の無効電力制御に基づく過渡安定度の向上手法の検討は、順調に進展している。集中的な管理を必要としない分散方式によるアプローチを志向し、各分散型電源が自端で観測できる情報に基づいて動作する制御手法を、ドループおよび非線形制御方式によりそれぞれ開発した。提案手法の有効性は、再生可能エネルギー電源の発電出力を適宜電力動揺に合わせて抑制する手法との比較を通じて数値計算により検証し、その有効性を示すことができた。 (3)電力系統の同期安定度を向上させるために同期発電機に付与される電力系統安定化装置(PSS)の制御系設計手法の検討は、順調に進展している。再生可能エネルギー電源の普及による電力系統の不確実性にも適切に対応できるように、電力系統の非線形性を不確かさとして考慮したロバスト制御の適用による制御系設計手法を提案し、その有効性を数値計算により示した。 (4)無効電力制御による過渡安定度の向上手法を実験的に示すための実験仕様の検討はおおむね順調に進展しているが、平成28年度末時点では仕様確定できていないため、今後検討を推進する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、再生可能エネルギー電源の普及拡大による同期安定度面の課題について、各種方策を主に数値解析により検討し、良好な成果が得られた。平成29年度からは提案手法の有効性を実験的な検討により評価する予定であるが、その実験機の仕様が平成28年度末時点では完全に決定できていなかったため、平成29年度は早期の段階で仕様を確定し、実験環境の構築を進める予定である。
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