2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H04456
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
河野 守 東京理科大学, 工学部第二部建築学科, 教授 (60170205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 文宣 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (40434039)
鈴木 淳一 国土技術政策総合研究所, 建築研究部, 主任研究官 (10453846)
鈴木 弘之 筑波大学, システム情報系(名誉教授), 名誉教授 (20114093)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 耐火性能 / リダンダンシー / 歪速度依存性 / Monte Carloシミュレーション / 高性能鋼材 / 有限要素解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、鋼構造建築物の耐火設計において限界状態設計型の設計体系の構築に向けて解明すべき諸課題を、大きく7つの課題に分けて研究を行っている。本年度は、前年度得られた成果を継続し、新たに2課題(課題(6),(7))に着手した。以下、各課題の概要を記す。 課題(1) 火災性状:収納可燃物および可燃物表面積係数のバラツキ、室界壁の突破を確率的に与えたMonte Carloシミュレーション解析を実施して、火災室温度および被覆付き鋼柱部材温度の不確実性について分析した。課題(2) 被覆材料・部材内部温度分布:前年度に実施した分析を継続して行った。課題(3) 高温時歪速度依存性:標準的鋼材の高温引張試験結果に基づいて、ばらつきおよび歪速度依存性を考慮した高温SS曲線モデルを作成した。とくに、高性能鋼材については、有限要素解析に適したクリープモデルを検討し、実大鋼柱耐火試験結果を有限要素解析により再現することを試みた。課題(4) 部材・接合部耐力:孔間隔の異なる有孔H形鋼梁実大試験体2体を載荷加熱試験し、火災時挙動とくにせん断耐力について分析した。また、通しダイアフラム形式柱梁溶接接合部および薄板角形鋼管短柱試験体を用いた実験を実施して、高温曲げ耐力や高温時局部座屈挙動について分析・検討した。課題(5) 架構崩壊温度:課題(2)および課題(3)の成果を組み入れて解析プログラムを拡張し、ハットトラスを有する鋼構造架構について崩壊温度のバラツキを定量的に分析した。課題(6) 変形制御:設定した目標変形量と架構崩壊温度との関係について検討を着手した。課題(7) 耐火設計法:限界状態設計法の構築に向けて設計法全体の枠組みについて検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の概要でも述べている全体7課題のうち、昨年度開始した5課題については昨年度の成果を継続して、全体の研究計画の2年度目までに行う予定としていた項目について成果を上げている。これらについては、国内外の学会および雑誌論文として公表することも併せて実施している。また、本年度から着手することとしていた2課題について、研究代表者と研究分担者とで数回の議論を重ねて、検討項目の整理、検討の方向性等について明確にした。これらについては、研究発表としてまとめるまでには至っていないものの、研究全体の中で他の課題を含めてまとめることが期待できる方向に進んでおり、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、本研究は7つの課題に分けて研究を進めている。今後は、以下の5課題について重点を置いて研究を行う。 課題(1)火災性状:本年度までの検討結果では耐火設計用入力モデルまでまとめ切れていないため,隣接する室の面積比が異なる場合,壁および床の構成材料が異なる場合,開口の大きさが異なる場合について,収納可燃物量,隣接室区画部分の突破時間のばらつきによる火災室温度のばらつきについて詳細に検討し,ばらつきを考慮した耐火設計のための火災温度入力モデルとしてまとめる。課題(3)高温時歪速度依存性:本年度までの検討でクリープを考慮した高性能鋼部材の有限要素解析手法に一定の方向性が見えてきたので,この解析手法を用いて,大断面柱の載荷加熱実験結果を的確に再現できることを検証する。その上で,様々な高温応力-ひずみ関係,クリープ特性をもつ鋼種,部材に対する汎用的な解析手法として確立する。 課題(5)架構崩壊温度:リダンダンシーの程度の異なる種々の架構を対象として,本研究で開発されたばらつきを考慮した高温応力-歪関係を用いた崩壊挙動の解析を行い,確率的な検討を加える。課題(6)変形制御:高温時の変形量を制御した設計を行うことにより,崩壊温度のバラツキを抑えることが可能となることを解析的に明らかにする。課題(7)耐火設計法:限界状態設計フォーマットおよび各種係数について前年度までの成果,および,課題(5)による架構崩壊温度の確率的な検証を踏まえ、設計形式、係数の妥当性を詳細に検討して限界状態設計型の耐火設計法を構築を模索する。 これらの成果については,日本建築学会大会,日本火災学会研究発表会等において発表するとともに,構造工学論文集,日本建築学会論文集等に論文投稿する。
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