2017 Fiscal Year Annual Research Report
構成クラスタ相互作用の解析に立脚したMg基LPSO形成原理解明と新規材料への展開
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16H04492
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥田 浩司 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50214060)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | LPSO構造 / Mg合金 / 放射光小角散乱 / アモルファス / 小角高角同時その場測定法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は長周期積層秩序(LPSO構造を形成する実用上の代表合金であるMgYZn合金の相転移過程が示す階層的相転移過程の本質を明らかにし、その知見を基盤に同じくLPSOを形成することが知られている周辺物質群をクラスターの安定性と動力学と言うメゾレベル階層で整理することを目的として。初年度のアモルファスからの標準(基準)試料であるMg85Y9Zn6組成の結晶化=LPSO形成の知見に基づき、今年度はMgRETM系のうち、ZnおよびCu、Gdに注目して、アモルファスからの初期構造変化からLPSOへの分岐過程への遷移の特徴を調べた。特にクラスター密度が比較的近いと期待される試料間での比較を目的に、Mg85RE9TM6,いわゆる69組成をもつMg-(Y,Gd)-(Zn,Cu)における結晶化からLPSOへの変化を放射光による小角および高角のその場同時計測手法によってすすめた。また、相転移過程の駆動力に関する定性的な説明には有効であった定速昇温過程に加え、キネティクスの解析に有効な等温過程のその場計測も試みた。 ただし定速昇温では全過程が比較的短時間にサーベイできるが等温過程では各温度での過程を観測する必要から、条件を絞りながらも多くのビームタイムが必要となり、当初希望していたすべての条件での計測には至らなかった。しかし今年度の主要な成果として、MgGdZnにおける組織形成においてもMgYZnと同様のhcp-クラスタリングから積層欠陥(LPSO)化という過程をとるものの、LPSO化をトリガーするものがクラスターサイズではない(臨界半径機構ではない)ことが示された。これは積層欠陥導入のキネティクスの解析がLPSO化の機構解明に重要であることを示す結果であり、現在この観点からの実験計画を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の計画項目、相転移における構造相転移とクラスターの変化の対応関係をより厳密に計測することの重要性が前年度に確認されたことに鑑み、昨年度導入した高角用検出器を活用して放射光の同時測定を進める。とくにクラスターの発達過程と構造相転移の関係に着目し、Isothermalをふくめた広い熱処理条件での応答を調べる。に関しては、上述のようにビームタイムを予想以上に必要とする実験になった(予想よりはるかに低い温度での等温過程においてもLPSO形成につながる構造相変態のゆっくりとした神鋼が観察されたため、低温長時間でのその場測定が必要になったため)ので、投稿するにはもう少し補充測定が必要な段階であるものの、MgYZn系については広い温度範囲で単一律速機構として理解できる変態であることを示す結果が得られたことから、懸案であったクラスタリングから構造相転移へのトリガーとなる機構についての基本的な理解が得られたと考えられ、この問題に対する本年度の戦略であるIsothermalを主眼とした小角高角同時その場測定の精密化という研究計画は成功したと考えている。現在元素置換によってこのような変化がどのように影響されるかを明らかにするための前段階として、元素置換試料における等速昇温過程の変化の解析を進めているところである。これは、多元高濃度のアモルファス結晶化により過飽和固溶体をつくるというわれわれの戦略が、このような複雑な構造を形成する合金系の場合類似準安定相や安定化合物などを遷移過程として形成する可能性もあるため、標記のMgYZnでの解析結果と比較できる変態過程を経ていることを確認、あるいはそのような熱処理条件などを明らかにしておくことが第一段階として必要であるためである。以上のように多少の補充測定が望ましいものの、ほぼ計画通りの進行状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画どおり、Mg-RE-TM系についてはクラスターの発展過程とLPSO形成(配列秩序形成)の機構がMgYZnで予想していたものと同一の変化を示すのかどうか、という実験的解明とともに、そのクラスターとしての安定性、クラスター同士の相互作用がLPSOの構造特性にどのような影響を与えるかについての実験的検討と考察を初年度導入したWAX検出器を活用したその場SWAXS測定法をさらに広いRE,TMに対して適用することによって明らかにする。また、クラスター自体のhcp、あるいはLPSO中での構造特性を独立して評価するための分光的なアプローチを併用する予定である。
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