2017 Fiscal Year Annual Research Report
鋳造欠陥制御の技術構築に向けたダイラタンシーを発現する固液共存体の変形挙動の解明
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16H04546
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柳楽 知也 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (00379124)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | その場観察 / 固液共存体 / ダイラタンシー / 凝固割れ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、固液共存体(固体と液体が共存した状態)の変形よって発生する割れや偏析などの鋳造欠陥の形成機構やその制御技術を確立するために、放射光X線イメージングを利用して固液共存状態においてその場観察を行い、ダイラタンシー(見かけの体積膨張)が発現する特異な固液共存体の変形挙動の解明を行う。 本年度は、Al-Cu合金のバルク材料を対象として、固液共存体の変形によって発生するせん断応力や法線応力などの力学特性を評価できる実験装置の開発を行い、三次元的な変形による力学挙動を明らかにした。所望の固相率にて歯車型スピンドルを一定の速度で回転させることによって、固液共存体に対して、連続的にせん断力を印加した。また、スピンドルにトルクメータ、試料容器の下にロードセルを設置することによって、せん断変形中に発生するせん断応力と法線応力をそれぞれ測定した。 凝固組織に関しては、凝固後の光学顕微鏡による組織観察から、スピンドルの歯車の周囲にポロシティなどの欠陥や初晶のAlが疎な領域がバンド状に形成しており、その場観察にて観察されたせん断帯と同様の組織が形成されていることが明らかとなった。一方、力学特性に関しては、せん断応力、法線応力ともに、スピンドルの回転と同時に増大し、最大値を示した後に低下して、ほぼ一定の値を示した。せん断帯が形成されるまでは、力は増大し、一旦形成されると、みかけの粘性が低下するために、力は低下したと考えられる。これらの結果から、ダイラタンシーの起源となる法線応力を金属材料を対象として、定量的に評価することに初めて成功した。また、法線応力は、せん断応力と同程度の値であり、固相間の相互作用によって発生する力(法線応力)は、比較的に大きいことが明らかとなった。また、固相率を増加させると、せん断応力、法線応力ともに大きく増加し、固相率に強く依存していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までは、固液共存体の変形挙動や変形によって発生する力学特性を明らかにするために、放射光X線イメージングを利用したその場観察を行ってきた。ただし、試料の厚さが固相粒子に換算して一粒子分であるため、二次元的な変形による力学特性を評価しており、実際のバルク体に対して、その場観察から得られた知見をそのまま適用可能であるのか不明であった。そこで本年度は、バルク体の金属材料を対象として、特に固液共存体の変形によって発生する力学特性を評価可能な実験装置を開発することによって、サイズ効果を検証することが出来た。また、これまでは、水とポリスチレン粒子を混合した固液共存体を利用したモデル実験において、法線応力が存在することを確認してきたが、実際の金属材料の高温下において発生する法線応力の存在が明らかとなり、ダイラタンシーによる鋳造欠陥形成の解明にとって貴重な知見が得られた。 ただし、その場観察での実験において、固相率だけでなく、固相粒子の形態やひずみ速度も変形挙動に大きく依存することが分かっており、これらの影響をバルク体の実験では十分に検証することができず、今後の課題である。以上の点を踏まえて、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、放射光X線イメージングを利用して、歯車型のスピンドル回転による固液共存状態でのせん断変形過程をミクロンスケールでその場観察を行い、バンド状欠陥の形成機構の解明を行う。これまでは、バルク金属材料の固液共存体に対して、歯車型のスピンドルを回転させることによって、せん断力を連続的に与える実験装置を開発を行い、回転時における力学挙動の測定と凝固後の組織観察を行ってきた。ただし、バルク金属材料内の挙動のため、バンド状欠陥の形成過程や組織とせん断応力の関係は、全く不明である。また、固液共存体のせん断変形のその場観察における従来の実験では、単純せん断に近い変形であり、実際の連続的なせん断変形が印加される場合と変形挙動が大きく異なる可能性がある。変形過程においては、固相-固相間、固相-液相間の相互作用により、固相の変形、分断、移動、固相同士の衝突や液相の流動などの様々な複雑な組織変化が起こり、特に連続的なせん断変形では、その変化が顕著であると予測される。 そこで、放射光X線イメージングでの観察にとって不可欠な薄片状の試料に対しても適用可能な歯車型スピンドルを試料セルに導入できる実験手法の確立を行う。また、せん断応力も同時に評価し、組織と力学特性の関係についても調べる予定である。
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Research Products
(6 results)