2017 Fiscal Year Annual Research Report
リン化物を用いた新規電極触媒および電極反応場形成とエネルギー変換デバイスへの応用
Project/Area Number |
16H04563
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊地 隆司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40325486)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 燃料電池 / 電極触媒 / 金属リン化物 / 無機酸素酸塩 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属リン化物は、水素化脱硫や水素化脱窒素、水素化脱酸素触媒として活発に研究がされてきている。金属リン化物は、これらの反応において、水素を解離する触媒能が高いことと選択性が高いことが報告されており、世界的に研究が行われている。本研究では、金属リン化物が電子伝導性に優れ、熱伝導性も高く、また融点が高く熱的にも安定なことから、中温作動型の燃料電池用の燃料極としての可能性を検討している。平成28年度ではNi、Mo、W、FeおよびCoのリン化物の検討を行い、MoおよびWが電極触媒として活性が高く、電気化学的に活性な表面積あたりの反応量(電流値)がPt触媒よりも大きいことを示した。本年度は、より高表面積なリン化物電極触媒の調製法として、亜リン酸法を用いる新しい調製法と、リン化物をカーボン担体に担持する調製法を検討した。亜リン酸法による電極触媒は表面積が大きくなったが、サイクリックボルタンメトリーやX線回折測定から不純物の存在が示唆され、また発電特性評価では安定性が低いことが分かった。したがって、次年度は亜リン酸法の触媒調製条件をさらに検討する必要がある。一方、カーボン担持リン化物触媒は、新しい燃料極調製法でも優れた発電特性を示すことが本年度実証できた。従来の燃料極調製法においては、電解質材料と電極触媒を混合して両者の接触界面を増やすことで、反応場を増加させていたが、カーボン担持触媒では電解質材料と混合する必要がなく、ペーストとして電解質に塗布することで多孔質構造を形成することができたと考えている。ただし、交流インピーダンス測定の結果、ガス拡散に相当する抵抗が観測されたため、次年度はガス拡散経路を確保して発電特性を向上させる必要があることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電極触媒の高表面積化の検討において、高表面積化が達成できたものの、不純物の存在が示唆された。不純物は発電性能と電極の安定性に影響するため、平成30年度にも継続して調製条件の最適化検討が必要となっている。一方で、電極の多孔質化においては、カーボン担持の電極触媒を調製し、電極とすることで、多孔質化ができることが新たに分かった点は予想以上の進展である。燃料多様化の検討では、現状一酸化炭素耐性の評価まで行えている。電極調製法の詳細な検討を継続する必要があるが、新たな電極作製にはほぼめどがつき、燃料ガスの多様化の検討にも着手できているため、最終年度に向けた研究状況としては、おおむね順調に進展していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
亜リン酸法による高表面積化の検討では、原料の混合比や焼成温度などのパラメータの影響を調べ、電極性能が最大となる調製条件を見出す。特性評価には、従来通り、サイクリックボルタンメトリー(CV)による電極表面積の評価、窒素吸着や水素吸着による触媒表面積の評価を行う。他に、水素昇温還元法による酸化還元特性および安定性の評価を行う。 電極の多孔質化では、さらにガス拡散性を向上させるため、電極触媒を担持するカーボン材料を検討し、電極構造の多孔質化と活性点の増加を図る。電極性能の評価は、昨年度同様、燃料電池セルを作製し、電流電圧特性および交流インピーダンス測定により行い、反応過電圧と濃度過電圧が最小となるような電極構造の調製を行う。 燃料多様化の検討では、天然ガスの改質ガスや石炭ガス化ガスで多く含まれるCOの影響を評価するために、CO/H2の比を変えたガスでのCOの分圧依存性について評価する。比較としてPt/C電極についても同様の測定を行い、リン化物触媒の利点について明らかにする。COの化学吸着力は、Ptと比較して、リン化物に対しては弱いので、高濃度COにおいてもリン化物における発電性能の低下は少ないものと予想している。
|
Research Products
(10 results)