2018 Fiscal Year Annual Research Report
金属間化合物表面の特異性を利用した触媒機能の解明および高機能触媒の創生
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16H04565
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小松 隆之 東京工業大学, 理学院, 教授 (40186797)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 金属間化合物 / 合金 / 触媒 / 選択的水素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に見出したRhBi/SiO2触媒を、各種のジエンの選択的水素化に用いた。1,3-ヘキサジエン、4-ビニルシクロヘキセン、リナロールなどの水素化において、RhBiは85%以上の転化率および88%以上の末端C=C水素化選択率を示した。反応速度論的解析およびDFT計算などによりRhBiの高い選択性が、①RhBi表面でRhが一次元的配列を取るため水素のアタックが幾何学的制約を受けること、②原子半径が大きいBiによる立体障害により反応分子中の内部C=C結合の水素化が起こりにくいこと、の2点に起因することを明らかにした。さらにRh原子が一次元的配列をとる面をもつ金属間化合物RhM(M=Fe, Zn, Sb, Ga, In, Bi)について、Mの原子半径が小さいほどRhM/SiO2のレギオ選択性が向上することを見出した。 また、貴金属を含まない金属間化合物による触媒反応として、トリエチルシランを用いたシクロへキセノンのヒドロシリル化を検討した。SiO2担体上で、Niと第2元素(Ga, Ge, In, SnおよびBi)とを反応させてNi系金属間化合物の微粒子を調製し、70℃にてヒドロシリル化を行った。Ni/SiO2は全く触媒活性を示さなかったが、一部の金属間化合物は反応を促進した。主生成物は(1-cyclohexen-1-yloxy)(triethyl)silane(CTS)であった。組成の影響を調べたところ、Ni3Gaが最も高いCTS収率(19%)を与えたのに対し、NiGaは不活性であった。 さらに4-ニトロスチレンのニトロ基選択的水素化に対するNi系金属間化合物の触媒作用も検討した。その結果、ヒドロシリル化とは異なり金属間化合物より固溶体合金の方が高い4-アミノスチレン収率を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、昨年度から繰り越された実験(スーパーコンピューターを用いたシミュレーション、同位体実験等)を約3か月で遂行した。それと並行して上記のRhBi/SiO2を用いたジエン類の選択水素化に関して、広い基質適応性をもつことを明らかにした。さらに、計算化学的手法、反応速度論的解析、各種分光分析を用いた検討の結果から、末端水素化選択性発現の原因解明にも成功し、今年度の研究計画通りに順調に研究が進展したと考えられる。 一方、希少な貴金属を含まない金属間化合物を用いて貴金属触媒と同等あるいはそれ以上の触媒を開発することは、元素戦略の観点から強く望まれるが、報告例はごく少ない。本年度においてNiを活性金属としたNi系金属間化合物触媒についての研究も行い、ヒドロシリル化に対してNi3Gaが有効であることを見出した。この結果は、これまで予想していなかったものであり、金属間化合物が貴金属代替触媒の有力な候補となる可能性を見出すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに調製した主な触媒について、以下のキャラクタリゼーションを行い各因子の影響を明らかにする。まず吸着COのIRスペクトルを測定し、表面における複数の同一金属原子によるアンサンブル形成の有無すなわち表面において化合物構造が保持されているかどうかに関する知見を得る。XAFS測定を行い、各原子の酸化状態および配位状態を求め、IRの結果と比較検討する。エチレン、ブタジエン、トルエンなどの昇温脱離を行い、表面原子配列の違いがC=C二重結合との相互作用に及ぼす影響を明らかにする。さらに計算化学的手法を用いて、吸着エネルギーや原子の表面移動の活性化障壁などを求め、上記の実験結果と比較検討する。 一方、触媒調製時の水素処理条件を細かく検討することにより、金属間化合物と同様の組成をもつ固溶体合金の形成を試みる。具体的にはまず、組成幅が広い金属間化合物相をもつ二元系のうち、低温で金属間化合物相へと転移できる元素の組み合わせを選択する。合金化を促進するための水素処理温度(300~900℃)および金属間化合物形成を促進するためのアニール条件をコントロールすることにより、化合物相のみおよび固溶体相のみが担体表面上に形成された触媒を作り分ける。これらを用いて種々の反応を行い、金属間化合物形成により生起する規則的原子配列が触媒作用に及ぼす影響を明らかにする。
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Research Products
(8 results)