2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H04573
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
福田 淳二 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (80431675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸尾 昭二 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (00314047)
渡邉 昌俊 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (90273383)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血管 / 肝臓 / 電気化学 / ハイドロゲル / 細胞組織工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、厚みのある立体的な細胞組織を構築するための方法論の確立である。そのために最も重要な血管構造の導入技術について、電気化学反応を利用した独自のアプローチを考案してきた。今年度は、研究分担者である丸尾教授の有する光造形技術を用いて立体的なモールドを作製し、この光硬化性樹脂の表面に金メッキが可能な手法を見出した。これにより光造形技術によって自在な立体構造を構築し、その表面に細胞を接着させた上で脱離させることが可能となる。実際に、生体組織を模倣したいくつかのモールドを作製し、金メッキ後に、その表面に電気応答性オリゴペプチドを修飾し、細胞層を形成させた後で、ハイドロゲルへこの細胞層を電気化学的に転写することができることを示した。この方法を利用することで、単純なテーパー形状であった血管様構造を、より複雑な立体形状の血管などへとデザインの多様性を向上させることができた。また、この方法は血管のみならず、移植部位にフィットする細胞シートの作製と、電気化学を利用した細胞移植に利用できる可能性がある。実際、小腸のひだ形状のモールドを作製し、その表面に細胞層を形成させた後、ハイドロゲルへと電気化学を利用して素早く転写できることを示した。また、電気化学脱離を利用した細胞選別に関して、ペプチドやアプタマーを利用する方法を検討し、オリゴペプチドとの結合様式や結合密度、その種類などが及ぼす影響を明らかにした。これらの技術を統合し、次年度も立体的な組織構築に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究計画のそれぞれの項目について、実験を実施して、予想した結果が得られている。また、光硬化性樹脂への金メッキについては、当初は医療用ピンセット等に利用されている方法を用いる予定であったが、細胞が接着せず強い悪影響を受けることがわかった。その原因として、金の分散に用いるシアン系化合物の残留が疑われた。そこで、生体に毒性のある化合物を利用しない新しい金メッキ浴を利用することで、この問題を解決し、研究を計画通りに進めることが可能となっった。
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Strategy for Future Research Activity |
光造形技術により様々な形状のモールドを作製でき、さらにその表面に無電解メッキにより金をコートすることが可能となった。この表面に細胞はよく付着・増殖し、また電気化学反応を利用して、細胞や細胞シートを脱離させることが可能となった。そこで、今後はテーパー型ニードルが複数配置されたマルチニードルを光造形により作製し、規則的な配置の送液可能な血管様構造を作製する。これを向かい合わせて配置することで、圧力勾配のある血管様構造の形成およびそれらを接続する毛細血管構造を作ることが可能となると考えられる。また、任意の形状の電極を作製し、この表面で電気化学細胞脱離が可能となったことから、目的とする細胞のみを効率良く選別・回収する装置や細胞シートを生体外における組織組み立てに利用する方法、血管以外の構造を作製する方法などへ新たな展開が可能となった。これらの可能性について検討し、本手法の波及効果および展開の可能性についても評価したいと考えている。
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