2016 Fiscal Year Annual Research Report
バイオ燃料を用いた環境適合型ジェットエンジンの燃焼ダイナミクス
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16H04586
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津江 光洋 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50227360)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 辰爾 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00382234)
藤原 仁志 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (40358453)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ジェットエンジン / バイオ燃料 / 燃焼 / 環境負荷物質 / 高効率化 / 希薄燃焼 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジェットエンジン燃焼器内のバイオ燃料燃焼挙動を研究室スケールで実験的に調べるため,インジェクタの設計製作を実施した.高圧力および大気圧力場に対応したスワール噴霧バーナーの開発を行った.三次元加工機を使用し,スワールベーンやインジェクタを作成することで,実験室レベルでパラメータを振った高スワール燃焼試験を実施することが可能となった.同時に可視化が可能な燃焼容器の設計製作を行った.バーナーの基礎燃焼試験を実施することで,希薄状態においても安定した燃焼状態が実現できることを確認した.その後,本試験を実施するため,流量の測定手法の確立を行った.基礎燃焼試験においては,航空機燃料の実燃料であるJet-Aを使用して希薄燃焼試験を実施した.また,ガラス壁を使用した可視化燃焼器を用いた試験において,大気圧環境下においても安定した燃焼が実現された.今後,可視化燃焼器を使用することにより,光学的噴霧観測,二色法等による温度測定,シャドーグラフ測定を実施する.液滴燃焼においては,高圧力場における炭化水素燃料液滴の燃焼挙動を実験的に調べ,高圧力環境下における液滴燃焼計測の基礎データの蓄積と解析手法の確立を行った. また,本年度はバイオ燃料の劣化状態やすす前駆物質を測定するために,気体および液体成分の同定することが可能なGC/MSを導入し,ジェット燃料やバイオ燃料成分の測定を実施した.ターゲット成分の測定に必要な温度プロファイル,線速度やリテンションタイムの最適化を行った.燃料内成分の定性分析を実施し,直鎖炭化水素に関しては定量分析実施のための検量線作成を行った.既知の成分に関して測定手法を確立した. 上記に示すよう,実験装置の設計製作,導入した実験装置を用いた計測手法の確立,基礎試験が概ね実施された.必要な基礎的なデータの蓄積により,今後実施する本試験の準備が概ね完了した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高スワール比流中における噴霧バーナーにおける安定した噴霧の微粒化および幅広い当量比における安定した燃焼状態の確立が本研究を実施する上で重要な課題であった.パイロット火炎等を用いず,室温,大気圧環境下における希薄燃焼状態を確立することがひとつの大きな技術課題であったが,試行錯誤と改善の結果,希薄から過濃条件で燃焼可能な標準スワールバーナーが開発された.大気圧環境において,Jet-Aを燃焼させても輝炎の発生がほとんどない希薄燃焼状態が確立された.これにより大気圧環境から高圧高温環境下に至るまで幅広い条件下における試験実施が可能であると考えられる.また,光学計測を実施するための可視化セクションの設計製作を行い,光学測定が可能となった.今後,高速度カメラを利用することにより,すす生成場での二色法による温度測定や濃度測定,シャドウグラフ等による噴霧の可視化計測が実施できる. GC/MSを使用したジェット燃料などの実用炭化水素燃料の成分測定は多くのノウハウを必要とする困難な計測の一つである.高沸点成分に至る燃料成分の分離や検出には,カラム長,リテンションタイムの設定,線速度,昇温プロファイルなどの最適化が必要となる.本年度は,実験装置の導入が年度末近くであったが,本年度はJet-AやバイオSPKに対して計測を実施し,測定パラメータを最適化することができた.定性分析や定量分析実施のためのノウハウを確立した.今後,ジェット燃料,バイオSPKおよびバイオ純燃料の高温環境下等におけるエイジング試験を実施し,その液相内反応特性を観察することが可能となった. 上記の実験装置の設計製作や計測手法の確立は,本研究を実施する上で多くの課題があったが概ね解決することができた.今後の本試験に必要な技術やノウハウが確立でき,スムーズに本試験に移行できる状態となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度は主に実験装置の設計製作を行い,大気圧環境下においてJet-Aを用いた燃焼試験を実施した.本研究は,アルカン,ジェット燃料,バイオ燃料,バイオSPKの単一または混合燃料が燃焼や排気特性に及ぼす影響を調べることを目的としている.また,エンジンインジェクタを含む高温環境下での液相内での反応や劣化による燃料性状の違いが微粒化や燃焼特性に及ぼす影響を実験的に調べる.そのため,燃料性状の変化を調べる.温度制御可能な高温槽を用意し,200℃程度の環境下において上記燃料の燃料性状の変化を調べる.その組成や粘度特性を調べる.燃料のエイジング特性や燃焼に及ぼす影響を,単一液滴燃焼およびスワールバーナーを使用した噴霧燃焼の二つの系で実施する.液滴燃焼により,燃料の微粒化特性等の影響を取り除いた各々の燃焼特性やすす生成特性を調べる.スワールバーナーを用いた燃焼実験においては,燃料性状の違いにより微粒化や燃焼形態に及ぼす影響を総合的に実験的に調べる.すす生成特性に関しては,二色法あるいはLII試験を実施する予定である.大気圧環境下および高圧力環境下において実験を実施する.さらに実用燃焼器条件の燃焼特性や排気特性に関しては,JAXA燃焼器において実験を実施しデータ取得を行う.研究室レベルの結果とJAXA燃焼器の結果を統合して燃焼現象の解明に取り組む. 数値計算に関しては,最初に一次元液滴燃焼モデルの構築を行う.アルカン燃料や,実用サロゲイト燃料のスケルタルモデルを利用しDRG法,DRGEP法により作成した後燃焼計算を実施する.その後,多次元解析に拡張していく.蒸発モデルや噴霧モデルを考慮したCFDを実施することにより燃焼効率や環境負荷物質生成におよぼす影響を明らかにする.上記の実験および数値解析を実施することで,ジェットエンジン燃焼器内におけるバイオ燃料の燃焼挙動を明らかにする.
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