2018 Fiscal Year Annual Research Report
A new mathematical model for biological effects of radiation
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16H04637
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
和田 隆宏 関西大学, システム理工学部, 教授 (30202419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂東 昌子 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (20025365)
真鍋 勇一郎 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50533668)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 放射線 / 生体影響 / 数理モデル / 線量率 |
Outline of Annual Research Achievements |
30年度は、メガマウス実験の詳細の分析、福島県民健康調査における小児甲状腺がん発生と放射線量との関連性の分析、低線量率長期照射環境下におけるマウスの寿命短縮の解析などを行った。また、がんの放射線治療における分割照射の効果について議論するために、新しい数理モデルの構築を開始した。 マウスにおける線量率効果を明らかにしたメガマウス実験をWAMモデルで解析するとうまく再現できないデータが見つかる。元のデータが複数の実験の集積であることを考慮して、それぞれの実験の詳細について文献を追跡したが、結果的に論文から実験の詳細を読み取ることはできなかったため、9月のアメリカ出張の機会に1960年代に実際に実験をおこなったL. Russell博士から聞き取りを行った。成果は学会での口頭発表として公表した。 福島県の県民健康調査で発表されている市町村ごとの小児甲状腺がんの発生数と、県内の約2000の地点で震災から数ヵ月後に測定された放射線量のデータを比較することで放射線量と甲状腺がん発生の相関関係を調べた。他方、放射線以外の因子についても検討を加える必要があり、ストレスとの関連などを調べた。成果は論文としての投稿すべく準備中である。 環境科学技術研究所と米国オークリッジ研究所において、低線量率で長期被ばくしたマウスの寿命短縮の実験が行われている。米国のデータは1970年代のもので米国出張の機会にデータを保有するノースウェスタン大学のGayle Woloschak博士との共同研究を進めた。また、環境科学技術研究所を訪問し、データの詳細について議論を行った。寿命の短縮はがん発生によるものであることがわかっており、線量率と寿命短縮の関係について数理モデルを構築して検討した。結果は学会での口頭発表として公表しており、論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福島県民健康調査に関しては、広島大学の佐藤健一氏(統計学)との議論により理解が進み論文投稿に至っている。一方で、放射線以外の因子についての分析が必要であることも明らかになり、次の課題となっている。 動物実験の解析においては、それぞれのデータを保有する研究者との面談が実現し、データに関する知見が深まった。 昨年度に行った国際会議においてH. Enderling博士によるがん治療に関する数理モデルについて知り、WAMモデルを発展させた独自の数理モデルによるアプローチを行うきっかけとなった。現在、新たな数理モデルの開発中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ショウジョウバエについて成果がまとまったので、31年度に論文として投稿する。 ノースウェスタン大学との共同研究については、詳細をつめることができたので、論文投稿を目指して分析対象とすべきデータを抽出し、研究を仕上げる。オークリッジ研究所のL. Russell博士の聞き取りを行ったが、実験の詳細は博士の保管する実験ノートにあるため、元データへのアクセスを今後行っていく。 フロリダのモフィットがん研究センターにはがん治療の数理モデルを研究しているEndderling博士がおり、具体的な共同研究を申し出て、我々が開発する新たな数理モデルを用いたがん治療に関する研究を進める。 放射線はDNAを傷つける。がんはこの傷が蓄積することで発生すると考えられているが、自然状態で発生する傷についてはあまり定量的に調べられていない。放射線の影響を論じるにあたって自然状態をまず理解することが重要である。すでにこの分野の研究者とコンタクトを取って、一緒に議論する機会を作ってきており、これをさらに進めてがんの理解につなげる。
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Research Products
(17 results)