2016 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアを介した体内時計ニューロンの制御メカニズム
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16H04651
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
池田 真行 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (10288053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 正明 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80232198)
森岡 絵里 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 助教 (80756122)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 体内時計 / ミトコンドリア / 細胞内カルシウム / 時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
赤色蛍光たんぱく質(RFP)でタグされたラットLETM1 shRNAあるいはそのスクランブル配列コントロールRNAを安定発現させたC6細胞株を作成した。この細胞株をリアルタイムRT-PCRを用いてLetm1遺伝子発現レベルを解析したところ、LETM1 shRNA発現株のLetm1遺伝子発現が半減することが明らかになった。また、この細胞株に細胞内Ca2+センサー(YC3.6)を発現させ、細胞内Ca2+ホメオスタシスの異常の有無を解析した。その結果、ATP刺激後のCa2+増加応答に要する時間(潜時)が、有意に短縮されることが明らかになった。この結果は、ミトコンドリアCa2+バッファリングの機能が、LETM1ノックダウンにより減弱することを示唆している。また、この細胞にBmal1-lucレポーター遺伝子を組み込み、分子時計の挙動解析を行った。その結果、LETM1 shRNA発現株はスクランブル配列コントロールRNA発現株に比べ、転写リズムの周期や位相には大きな差異は認められないものの、リズム振幅が約3倍に増幅することが明らかになった。また、体内時計の性質により近いモデル細胞として、ヒト網膜色素上皮由来の細胞株であるhRPE細胞を用い、同じくBmal1-lucレポーターやYC3.6を用いて解析を行った。その結果、これらの細胞では、フォルスコリン刺激(cAMPシグナル)やムスカリン受容体(Ca2+シグナル)により、Bmal1転写リズムに、それぞれ0型や1型の位相反応を引き起こすことを突き止めた(Scientific Reports 7:44175, 2017)。なお、この細胞におけるLETM1 shRNAの作用は、現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットグリオーマモデル細胞を用いた実験では、すでに幾つかの結果を得ており、今後ヒト網膜色素上皮由来の細胞株であるhRPE細胞において、さらに詳細な検討を進める予定である。ラットSCNスライス培養を用いたニューロンレベルの研究も行っており、LETM1 shRNAとYC3.6の共発現に成功している。また、このサンプルをもちいた長期カルシウムイメージング実験も開始したところである。キイロショウジョウバエ時計ニューロンにおける細胞内Ca2+/H+リズムに対するLETM1ノックダウンの影響を調べるために、昆虫脳組織のイメージング実験もおこなっている。これらのニューロンに対するLETM1ノックダウンの影響について結論を得るには、もう少し時間を要するものと思われるが、研究全体の進捗状況は順調に推移しているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に、ラットグリオーマモデル細胞(C6細胞)においてLETM1 shRNA、Yellow Camereon3.6あるいはBmal1-luc発現株を作成した。その結果、shRNA発現株における有意なLETM1発現の低下が確認された。shRNA発現株を用いて、Bmal1-luc発光リズムを、多チャンネルルミノメーターを用いて解析したところ、意外なことに、shRNA発現株のBmal1-lucリズムがscramble RNA発現株に比べて、増幅していることが明らかになっている。この作用が、個々の細胞の振動に起因するものなのか、あるいは細胞間のリズム同調によるものなのかを解析するために、今後、初年度に導入した超高感度冷却EM-CCDカメラを用いて画像解析を行う予定である。また、このLETM1 shRNAの作用がグリア細胞モデルにのみ見られる特殊な作用なのかを検討するために、ヒトLETM1 shRNAを用いて、hRPE細胞に同様の効果をもたらすのかを検討する予定である。さらに、今年度は、SCNスライス培養に対し、遺伝子銃を用いてLETM1 shRNAおよびYellow Camereon3.6を強制発現させ、細胞内カルシウムリズムに対する影響を解析する予定である。また、前年度に引き続きキイロショウジョウバエ時計ニューロンにおける細胞内Ca2+/H+リズムに対するLETM1ノックダウンの影響について調べる予定である。
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