2018 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring the implications of cancer-specific mRNA re-splicing events in the robustness and catastrophe of gene expression system
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16H04705
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
前田 明 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 教授 (50212204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 多久磨 藤田医科大学, 医学部, 教授 (10218969)
恵美 宣彦 藤田医科大学, 医学部, 教授 (30185144)
白木 良一 藤田医科大学, 医学部, 教授 (70226330)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 遺伝子発現調節 / スプライシング / mRNA品質管理機構 / 癌 / TSG101 / RBM4a / EJC |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) mRNA再スプライシング現象は癌の浸潤や転移に関わる スプライシングされた成熟mRNAが再びスプライシングされ、異常なmRNA産物が生成するという現象が、癌細胞特異的に起こっていることをTSG101遺伝子をモデルにして証明した。最近、台湾大学医学部耳鼻咽喉科との共同研究で、TSG101遺伝子の異常再スプライシング産物(TSG101Delta154-1054蛋白質)が、実際に癌の浸潤や転移を促進している結果が得られた。細胞特異的に起こっているmRNA再スプライシングの医学的な意義が示唆される。
(2) mRNA再スプライシングを抑制している2つの因子を同定した この現象が、正常細胞で無秩序で起こったならば、深刻な害を及ぼすことは明白であるから、一旦完成された成熟mRNAは再びスプライシングされないような仕組みがあると予想できる。mRNA再スプライシングを抑制する二つの蛋白質因子の同定に成功した。一つは、癌抑制因子として知られていたRBM4aであり、もう一つは成熟mRNAのエクソン接合部に特異的に結合するEJCの中核因子(eIF4A3,MAGOH, Y14)であった。 重要なことは、正常細胞で、EJC中核因子の発現をsiRNAで抑制することで、癌特異的であるはずのmRNA再スプライシングを誘発できた(RBM4aのノックダウンでは誘導できなかった)。すなわち、mRNA再スプライシング抑制因子の実体は、成熟mRNA上に形成される複合体であるEJCそのものであった。mRNA再スプライシングは成熟mRNA上において引き起こされる異常なスプライシングであるから、この結果はすこぶる意味深である。そのEJCがどのようにmRNA再スプライシング抑制に関わっているか? 魅力的な仮説「EJCはスプライシング完了のシグナルになっている」を提起したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
mRNA再スプライシング抑制因子をRNA結合蛋白質群に対するsiRNAライブラリーを用いた網羅的ノックダウン実験で一つの因子RBM4aが同定されたが、この因子を正常細胞でノックダウンしてもmRNA再スプライシングを誘導できなかった。この事実は、RBM4a以外にもmRNA再スプライシング抑制因子が存在することを示唆した。 その探索は、容易ではないと思われたが、MDM2阻害剤でp53を安定化させるとmRNA再スプライシングが顕著に抑制されることから、その条件でマイクロアレーを行った。発現変動の見られたRNA結合タンパク質やスプライシング関連因子を選び出し、それらの因子に対するsiRNAを用い、mRNA再スプライシングを指標としてスクリーニングを行った。その結果、スプライシング完了後の成熟mRNAに特異的に結合する複合体EJC(exon junction complex)の中核因子が同定された。再スプライシングは、成熟mRNA上で起こるスプライシングであるから、この結果は重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
私たちは、mRNA再スプライシング抑制因子として癌抑制因子RBM4aとEJC中核因子eIF4A3を同定した。mRNA再スプライシングは成熟mRNA上において引き起こされる異常なスプライシングであるから、EJCはスプライシング完了のシグナルになっている、と予想できる。 スプライシングが完了した成熟mRNAが、通常はなぜ再びスプライシングされないのか? という素朴な疑問に対し、まだ満足な答えがない。スプライシングが完了すると、成熟mRNA上にEJCが形成されることが知られ、EJC表層にはスプライシング因子、mRNA核外輸送因子、そしてNMDに関与する因子などが会合することが知られている。EJCは、実際にスプライシング後の核外輸送やNMDの機能に重要な役割を果たしているが、スプライシング完了のシグナルになっているかどうかは、実はまだ誰も証明していない。私たちは、EJCが再スプライシングを抑制する事実を発見したので、再スプライシング現象は、奇しくも未知のスプライシング完了機構を解明する絶好のモデルになっている。 この研究に関連する結果が報告されている[Singh et al., 2012; Cell 151, 750]。スプライシングが完了したmRNAには、EJC結合だけでなく、SR蛋白質を中心とする蛋白質群が結合し、高次構造を形成、コンパクトな構造を作っているという。このような高次構造がひとたび形成されれば、mRNAに再びスプライソソームが形成され、再びスプライシングされることは困難であると予想できる。すなわち、EJC中核因子を欠くと、このような高次構造が形成できなくなり、スプライソソームの形成を許し、再スプライシングされるかどうかを検証したい。
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Remarks |
研究室のホームページである。
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