2016 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisim of the diversity of amphibian larvae in streams of tropical rain forests
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16H04735
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
夏原 由博 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (20270762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉林 敦 広島大学, 両生類研究センター, 助教 (00327701)
島田 知彦 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (30610638)
境 優 中央大学, 研究開発機構, 研究員 (10636343)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生物多様性 / ファシリテーション / ニッチ / 安定同位体比 / 環境DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の4つの目的に沿って、調査は、マダガスカルのラノマファナ国立公園で行った。 ①両生類の多様性を把握するための環境DNA解析に用いる両生類ユニバーサルバーコーディングプライマーを作成するため、ミトコンドリアDNAの16SrRNA遺伝子のアラインメントを行い、5つのプライマーを作成した。現地で採取した渓流水を持ち帰ってろ過し、フィルターからのDNA抽出を行った。②多種の両生類幼生の共存は、ニッチの細分化の結果であることを示すために、口器の分類、安定同位体比等と消化管内容物による食性解析を行った。採集した24種のおたまじゃくしの口器は7種類に分けることができた。種ごとのd13C値とd15N値、消化管内容物10種類に分けて比率を調べた結果、d15N値の種差はd13C値よりも小さいこと、消化管内容物の組成は多くの種で共通していたことから、採餌方法は異なるものの、食物連鎖の位置は変わらないこと、口器形態の違いによる餌メニューが異なることがないことが示唆された。③ニッチ細分化による機能的多様性が、競争の緩和をのみならず物質循環を促進し、一層の種多様性を高める間接効果をもたらすとの仮定の下に、複数種の組み合わせによるエンクロージャー実験を行い、リターの減少を比較した。種の組み合わせによるリター減少の違いは見られなかった。④森林伐採による両生類への影響を調査したところ、種数は生息環境間で有意な差が見られた。自然林は最も種数が多く、渓流あたり7-14種であった。二次林は最も種数が少なく渓流あたり4-8種であり、自然林や林縁と有意差が見られた。林縁では8-12種であった。自然林と林縁の間には統計的な有意差は見られなかったが、種組成は異なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マダガスカルにおける調査と採取試料の解析は予定通りに実施できた。一方、ボルネオで予定していた調査は、インドネシア政府の調査許可が得られなくて、年度内に実施することができなかったため、過去に採集した幼生標本について、形態的な再検討を進めるとともに、種同定のツールとなる塩基配列情報の蓄積を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度採集したマダガスカル河川環境DNAサンプルと、来年度採取予定のボルネオ島サンプルについてPCR増幅を行い、その産物を次世代シークエンサー(イルミナ MiSeqを予定)で解析することで、熱帯降雨林の河川を利用する両生類の種同定と多様度を推定する。ボルネオでは、渓流単位での捕食性魚類の多寡によるカエル類種組成への影響を評価する。また、天然林、二次林、農地を流れる河川区間で採集する予定の底生動物サンプルについて、ソーティング作業を進める。おたまじゃくしの渓流内食物連鎖の位置づけについて、安定同位体比データからおたまじゃくしへの各餌資源の貢献度を見積もる混合モデルの構築を試みる。 ボルネオでの調査許可が得られない場合は、マダガスカルでの調査に専念する。
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