2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H04784
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 浩二 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (40455217)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / オートファジー / ユビキチン化 / 小胞体関連分解 / 出芽酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちの研究グループは出芽酵母をモデルに用いて、オートファジーによる選択的ミトコンドリア分解(マイトファジー)の分子基盤をゲノムワイドに獲得し、ミトコンドリアを分解すべき基質として特異的に認識するための分別マーク・タンパク質Atg32を世界に先駆けて同定・解析した。Atg32はミトコンドリア外膜へ局在する膜貫通型タンパク質であり、マイトファジーに特異的かつ必須な、唯一の因子である。本研究の目的は、マイトファジーの分子機構を解明することであり、分解レベルや選択性を調節する基本原理の理解を目指す。これまでの研究で、マイトファジーの初期段階で、Atg32に特異的な高分子量のバンドが出現することを見出している。免疫沈降を行った結果、Atg32の高分子量のバンドにユビキチン陽性シグナルが検出された。これらの知見を踏まえた上で本年度は、Atg32のユビキチン化に関わるユビキチンリガーゼの同定とその欠損変異体の解析を行った。
その結果、小胞体関連分解(ERAD)システムERAD-CのユビキチンリガーゼDoa10を欠損すると、Atg32のタンパク質レベルが増加することを見出した。加えて、Doa10欠損細胞ではマイトファジーの誘導が亢進していることもわかった。さらに、ERAD-Cのユビキチン結合酵素Ubc6を欠損した細胞でも、Doa10欠損細胞と同様の表現型を示すことが判明した。一方、小胞体膜の別のシステムERAD-L/MのユビキチンリガーゼHrd1を欠損しても、Atg32のタンパク質レベルはほとんど影響を受けない。以上の知見から、ミトコンドリア外膜タンパク質Atg32は小胞体膜のERAD-Cによって特異的にユビキチン化されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、Atg32はユビキチン化されることにより、そのタンパク質レベルが負に調節され、マイトファジーの誘導が抑制されている可能性が浮上してきた。一般に、ユビキチンは基質タンパク質のリジンに共有結合で付加される。そこで、Atg32に存在するリジン残基をシステマティックにアルギニン置換し、ユビキチン化部位をマッピングしようと試みたが、特定のリジン残基を同定することはできなかった。これは、複数のリジンがユビキチン化を受けること、また近傍のリジン以外のアミノ酸残基がユビキチン化されることも考えられる。このような状況を踏まえ、Atg32のユビキチン化部位のマッピングから方向転換して、責任リガーゼの同定に焦点を絞り直し、半網羅的にユビキチンリガーゼ欠損変異体を探索する戦略を実行した。その結果、ERAD-CのユビキチンリガーゼDoa10がAtg32を基質タンパク質としてユビキチンを付加し、プロテアソーム依存的に分解することで、Atg32のタンパク質レベルを負に調節していることが示唆された。小胞体にはERAD-L/Mという別の分解システムが存在するが、そのユビキチンリガーゼはAtg32の発現量調節には関与していないと思われる。興味深いことに、ペルオキシソームに人為的に限局させたAtg32は、Doa10による制御を受けないことがわかった。
このように、当初予定していた実験の代わりに、今後の解析に重要な責任リガーぜを同定できただけでなく、ミトコンドリアと小胞体との関係性において小胞体のDoa10がミトコンドリアタンパク質であるAtg32を基質として認識しユビキチン化する可能性を提起できたことから、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画として、(1)Doa10がAtg32を基質タンパク質として結合するかどうかを明らかにするため、免疫共沈降アッセイを用いて検証する。この際、化学架橋またはユビキチン活性不全変異体Doa10(C39S)によって相互作用を安定化するよう試みる。(2)Atg32の細胞内局在を調べるため、Atg32に3コピーのGFPをタギングし(Atg32-3GFP)、これをATG32遺伝子座にノックインした株を構築する。Atg32-3GFPのマイトファジー活性も確認する。(3)Atg32-3GFPの細胞内局在を蛍光顕微鏡を用いて解析する。この際、Doa10欠損細胞でAtg32-3GFPの局在パターンに変化があるかどうか、注意深く検証する。(4)Atg32の部分欠失変異体を作成し、Doa10による制御に重要なドメインをマッピングする。(5)Doa10の発現量の変化や細胞内局在パターンをウェスタン解析と蛍光顕微鏡を用いて調べる。
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