2017 Fiscal Year Annual Research Report
体内時計と光、潮汐による生殖リズムの形成機構とその可塑性
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16H04812
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
安東 宏徳 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60221743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 恒平 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (60222303)
兵藤 晋 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (40222244)
北橋 隆史 新潟大学, 自然科学系, 特任助教 (30749859)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 生殖リズム / 体内時計 / 神経ホルモン / 松果体 / 視床下部 / 月周リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、松果体と視床下部神経内分泌系の機能形態学的解析を基盤として、15時間周期及び月齢に同調した新規の生物リズムの発振機構、そして、その形成における光と潮汐の役割を明らかにする。また、生息地域による産卵リズムの違いや個体発生におけるリズムの形成過程に注目して、生殖リズム形成の可塑性を明らかにする。平成29年度では、下の5つの研究を実施し、研究成果を得た。 1)生殖調節神経ホルモンとMelR、Cryの産生細胞の神経解剖学的解析について、Kiss、Kiss受容体、GnIH、GnIH受容体の抗体を作製し、melr、cryのRNAプローブを調製した。Kiss免疫陽性細胞は、視索前核小細胞性領域に局在していた。 2)15時間周期の発現遺伝子について、Gタンパク質aサブユニット遺伝子(gnas)の発現がisyna1と同期して、mel1b、per1bとは逆位相で周期的に変動することがわかった。 3)メラトニンによる視床下部生殖中枢の調節について、血液中のメラトニン濃度は、夜間に上昇するが、そのレベルは月齢に伴って変化することがわかった。また、メラトニン合成酵素(AANAT2)KOクサフグの作製を行った。CRISPR-Cas9のマイクロインジェクションを行い、変異導入個体(F0)を得た。 4)mel1b プロモーター導入個体において、導入遺伝子の脳内での発現は検出されなかった。また、孵化後3-4日の仔魚において、mel1bは恒暗条件下で24時間周期の変動を示した。gnrh2プロモーター導入個体を作製するため、クサフグ及びゼブラフィッシュの受精卵に導入した。共に少数の導入個体(F0)を得た。 5)潮汐変化がほとんどない佐渡島において、クサフグの産卵場を発見し、産卵行動調査を行った。その結果、雄は月周リズムを持たず毎日産卵するが、雌はおおよそ2週間の周期性を維持して産卵することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画から遅れている部分として,松果体におけるRNA-seq解析、15時間周期の行動解析、弱光暴露実験が挙げられるが、共に解析に必要な実験個体を採集することができなかったためであり、平成30年度では産卵魚の採集方法等を検討して、研究に必要な実験個体を確保する。一方で、松果体と視床下部神経内分泌系の神経解剖学的解析とメラトニンによる生殖中枢の調節については、概ね計画とおりに研究が進展している。特に、血液中のメラトニン濃度については、これまで夾雑物の影響で測定できなかったが、測定法の改良によって安定した測定が可能になった。夜間のメラトニン濃度が月齢により変化することが明らかとなり、クサフグが弱光の変化を感じ、その情報がメラトニンの分泌量として視床下部に伝達されることが示唆された。また、メラトニン作用を解析する新たな実験系として、メラトニン合成酵素欠損個体の作製を進めた。遺伝子導入個体を用いた解析については、計画より先行して進展している。さらに、生殖リズムの可塑性に関する研究として、佐渡島のクサフグ集団の産卵リズムが、潮汐差が大きな他の場所の集団とは異なることが明らかになり、可塑性についての研究材料となる野生個体集団を確保することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画より遅れている部分については、十分な数の実験個体を確保して、研究を進める。15時間周期の行動リズムの解析については、明期での解析系は確立しており、暗期での行動解析系を確立する。遺伝子導入魚を用いた研究については、gnrh2プロモーター導入個体の作製と解析を進めると共に、新たにcryプロモーターの下流に分泌型ルシフェラーゼ遺伝子あるいはEGFP遺伝子をつないだ遺伝子コンストラクトを作製し、平成31年度から遺伝子導入個体を用いた解析を行う。
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