2017 Fiscal Year Annual Research Report
Eco-evolutionary dymamics in plant-insect interactions
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16H04842
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大串 隆之 京都大学, 生態学研究センター, 名誉教授 (10203746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内海 俊介 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (10642019)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 群集 / 進化 / 帰化植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
セイタカアワダチソウの成長パタンの季節動態が、日米両国間および各国の地域間でも大きく異なることがわかった。日本の圃場では日本産のセイタカの方が米国産のセイタカよりも植物サイズと葉数がいずれも3倍以上であった。さらに、植物の成長期間は滋賀と佐賀の圃場では8月中旬には完了したが、北海道の圃場では9月以降まで続いた。 主な植食者の個体群動態は、日米両国間および各国の地域間でも大きく異なることがわかった。セイタカヒゲナガアブラムシの出現パタンと密度は圃場間で異なった。佐賀と滋賀の圃場ではアブラムシの密度のピークは6月上旬であったのに対し、北海道では9月下旬から10月上旬にかけてピークを迎えた。さらに、北海道では他の地域に比べて、密度は10倍以上も高かった。 アワダチソウグンバイは佐賀と滋賀では高い密度であったが、北海道では全く見られなかった。滋賀では9月上旬にかけて密度のピークが見られたが、佐賀では6月下旬から10月上旬にかけて同程度の密度で推移した。グンバイの食害を受けた葉の割合は、滋賀では6月から7月下旬にかけて急激に増加し80%に達した。一方、佐賀では6月下旬に早くも食害率は100%に達した。食害率が高くなると植物の枯死が見られ、グンバイによる食害はセイタカの定着後の最大の死亡要因であることが示唆された。 グンバイ以外の葉食者の食害は、滋賀では6月上旬から増加し、10月中旬にはピークに達したが、その時点でも食害率は12%程度であった。これに対して北海道では季節が進むにつれて食害率は増加し、最終的に40%近くになった。 日米の比較によって、米国のミネソタとカンサスでは植食生昆虫の種多様性は日本に比べて高く、逆に南部のフロリダでは植食生昆虫の種多様性と密度は米国北部および日本に較べて低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年の圃場実験の結果から、研究目的に迫る重要な知見が得られた。日米の圃場でのデータから、植食性昆虫の種多様性と密度、季節的な動態について日米間で大きな違いがあることがわかってきた。この事実は、侵入植物の地域適応を考える上で、植物を利用する昆虫群集の違いに注目することの重要性を強く示唆するものである。 さらに、日本国内の各地域においても植食性昆虫の種多様性と密度が大きく異なることがわかった。また、日米での植食性昆虫の種多様性と密度について、日米の緯度傾度による種多様性と密度のパタンが同調していることが明らかになりつつある。これによって、侵入地と原産地で同じ植物を利用する昆虫の群集構造が、緯度傾度のクラインに対応して、生態学的に収斂する可能性が示唆されている。
圃場実験とは別に、滋賀では日米の遺伝子型のセイタカを(食害のない)野外のガラス温室で育成する追加実験を行った。セイタカの成長と防衛形質を計測し、(食害のある)圃場で育てたセイタカと比較できる体制を立ち上げた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、植物と植食性昆虫の個体群動態の年次変化と地域間の変異に焦点を当てる。特に、圃場実験に用いている遺伝子型を採取した各地域の環境傾度(主に平均気温)と植物の遺伝子型がセイタカアワダチソウと主要な植食者の季節動態に果たす役割を解明する。日本でグンバイが定着している滋賀と佐賀、まだ侵入していない北海道の遺伝子型を用いて、滋賀と佐賀の圃場でセイタカアワダチソウのグンバイに対する抵抗性の違いを明らかにする。これによって、セイタカアワダチソウの日本への侵入後の防衛形質の進化を予測する。 実験圃場にポット植えしたセイタカアワダチソウを利用する植食生昆虫の群集構造について共分散分析を用いて解析し、日米間と両国内での地域間で比較する。これによって、植食者群集の生物地理的な多様化の程度を推定し、帰化植物が各地域における植食者ネットワークの成立に果たす役割を評価する。 野外での圃場実験とは別に、食害の起こらないガラス温室でセイタカアワダチソウを育成し、各遺伝子型の成長および繁殖形質のフェノロジーを記録する。これとの比較により、実験圃場で育成する遺伝子型に対する野外での植食圧の強さを推定する。
研究遂行上の問題点とその対応策 圃場の間でセイタカアワダチソウの生存率に大きなばらつきがある。特にフロリダの圃場ではセイタカのシーズンを通しての生存率が50%以下になった。今後は各圃場ともに少なくとも75%以上の生存率を確保したい。このために、実験に供する地下茎をできるだけ大きなサイズを選抜し、定着までに十分な水分供給を行い、生存率の向上に努める。
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