2017 Fiscal Year Annual Research Report
Integration of structural basis for secondary metabolite biosynthesis, regulation, and morphological development coded on the Streptomyces genome
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16H04917
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
荒川 賢治 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (80346527)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 二次代謝産物 / 放線菌 / 形態分化 / 制御カスケード / アゾキシアルケン / ポリケチド |
Outline of Annual Research Achievements |
放線菌における二次代謝生合成、形態分化、シグナル分子制御の統合深化を目指し、平成29年度は以下の3課題を遂行した。 (1) 特異生合成マシナリーの機能解析【二次代謝生合成】:Streptomyces rochei遺伝子破壊株解析を通じて見出したアゾキシアルケン化合物KA57-A、ポリケチド化合物ペンタマイシン、シトレオジオールの生合成マシナリーに注目した。KA57-A生合成に関し、ヘキシルアミン以外の鎖長のアミンを添加してprecursor-directed 生合成に賦したところ、C6以外の鎖長を有するアゾキシアルケンは取得できなかった。このことより、本生合成における厳密な鎖長認識が示唆された。 (2) シグナル分子制御シグナルカスケードの網羅的解析【シグナル分子制御】:TetR型リプレッサー遺伝子srrBの変異によりLCは11倍、LMは4倍の生産量増大が認められたが、経時変化を調べたところ、親株と比較して培養後期での抗生物質生産が引き続き顕著に認められた。srrA, srrB, srrYの発現を調べたところ、転写活性化因子遺伝子srrYの発現がsrrB変異株においては培養後期も引き続いて認められた。このことより、srrB変異株による抗生物質生産向上は、後期発現されるsrrBによる、srrYの一過的発現抑制が失われたためとわかった。 (3) ゲノム比較による形態分化関連遺伝子の抽出と同定【形態分化】:YN-P7, YN-P145株における染色体の欠失領域特定のため、PacBio RS-II次世代シークエンサー解析を行った。両株の欠失領域はYN-P7株において左末端75.5 kb, 右末端912.5 kbであり、YN-P145株においては左末端602.9 kb, 右末端933.8 kbであった。両株の欠失サイズは0.98 Mb, 1.51 Mbであることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)において、KA57-A生合成に必要不可欠なクラスターの特定に成功した。また我々は、KA57-Aと同様にヘキセニルアミン側鎖を有するマニワマイシン生合成遺伝子クラスターの次世代シークエンス解析も行い、バラニマイシン、KA57-Aとの共通ORFを抽出できた。今後は共通因子に絞り込んで網羅的遺伝子破壊実験を行う。 また、28員環ポリエン化合物ペンタマイシンの生合成クラスターは染色体上にあることが示唆され、3つ存在するP450水酸化酵素の遺伝子破壊実験により確認した。さらにC10の直鎖ポリケチド化合物シトレオジオールの生合成遺伝子について、C-メチル基転移酵素を指標に探索し、該当クラスターを3つにまで絞り込んだ。 (2)において、リプレッサーsrrB変異により生じた代謝プロファイル変化について、遺伝子発現と代謝の経時変化を指標に解析したところ、LC,LMの活性化因子srrYの後期発現がSrrBによって抑制されていることが分かった。すなわち、srrB変異株は、培養後期でもsrrY転写が続いているため、抗生物質生産が上昇していることが示唆された。 (3)において、次世代シークエンスにより欠失領域の推定に成功した。しかし、ロングリードに長けているPacBioシークエンス解析においてさえも、両端が融合した塩基配列のデータ取得には至らなかった。当該領域にトランスポゾンなどきわめて高度な重複配列の存在が考えられた。また、2-39株においてのみ欠失した遺伝子領域が特定できたため、本領域に未解明形態分化関連遺伝子の存在が示唆された。136ORFのうち、ほとんどが機能未知遺伝子であったが、6つの制御遺伝子にまず注目することにした。該当ORFのクローニングに着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
【二次代謝生合成】アゾキシアルケン化合物の特異なアゾキシ結合形成メカニズムについて、今後は共通因子に絞り込んで網羅的遺伝子破壊実験を行う。さらに、in silico比較解析と酵素変換実験なども組み合わせ、アゾキシ結合形成メカニズムの先駆的解明を目指す。さらに本菌の休眠二次代謝産物と考えられている特異生合成マシナリー(C-P化合物、擬オリゴ糖など)の遺伝子発現活性化と代謝産物取得も目指す。 【シグナル分子制御】リプレッサー変異により抗生物質生産の向上が見出せ、現在までに制御遺伝子改変による代謝増強・休眠二次代謝の覚醒戦略を立案できた。今後は生合成クラスターの発現標的の特定なども行い、制御カスケードの全貌解明を目指す。 【形態分化】各染色体環状化株における表現型と遺伝子欠失領域の関係を明らかにすべく、まず、コスミドの取得やPCR walkingによる融合配列の取得を目指す。次いで、欠失領域の遺伝子相補実験を行う。具体的には、欠失領域に含まれる136ORFのうち、6つの制御遺伝子に着目し、これらをクローニングして2-39株に形質転換し、胞子形成の回復の有無を調べる。
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Research Products
(46 results)