2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on influences of radiocesium redistribution on forest ecosystems
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16H04934
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大手 信人 京都大学, 情報学研究科, 教授 (10233199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 瑞江 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (30453153)
村上 正志 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (50312400)
二瓶 直登 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (50504065)
小田 智基 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70724855)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 森林生態系 / 物質循環 / 貯水池堆積物 / 食物網 / 浮遊粒子状物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 昨年度に引き続き、これまでに基本的な水・放射性セシウム動態のモニタリングを実施している福島県北部の森林サイト(上小国川源頭部集水域:集水面積14ha)を対象に、放射性セシウム(Cs)移動量観測を実施した。これに加えて、森林サイトより下流の上小国川の沿線で渓岸堆積物の放射線量調査と、放射性Cs濃度の測定を実施した。 2. 上小国川に流入する4つの支流に位置し、森林からの流出水、土砂が流入するため池において、池底堆積物の深度別137Cs濃度、堆積量、池水中の溶存態・懸濁態137Cs濃度を調査した。また、ため池上流部の渓流における137Csの流出量の観測データと比較し、ため池における137Cs収支を明らかにした。その結果、集水域の特性により異なるが、ため池の137Csをトラップする効果は大きくないことが示唆された。池水中の溶存態・懸濁態137Cs濃度は、現在の平常時の渓流水と同程度に低かった。ため池に137Csを保持する粒子状浮遊物質が堆積するのは平常時であり、大規模降雨イベントの際には、大部分の土砂は蓄積せず、流下している可能性があることがわかった。 3. 林冠を構成する葉と枝が持つ137Csの挙動を明らかにすることを目的とし、調査森林の広葉樹二次林と隣接したスギ人工林で行った2012年から2015年にかけて伐倒調査の結果を整理・解析した。その結果、両樹種において枝葉の137Cs濃度は2013年以降に急速に減少することや、調査期間を通じて枝よりも葉の方が、137Cs濃度が高いことなどが示された。 4.2018年12月に、調査対象地である小国地区の住民組織「放射能からきれいな小国を取り戻す会の総会に参加し、調査研究成果を発表し、質疑を受けた。また、福島県内の市民向けの研究成果の公表を、2018年7月に福島県双葉郡広野町、2019年1月に楢葉町で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記、研究実績概要に示したように、現地森林サイト、渓流・河川におけるモニタリング、試料の採取・分析はほぼ予定通り実施できた。主要樹木の樹体内の放射性Csの分布に関する解析よって、森林内の残留放射性Csが植物-土壌間における循環系で動的な保持の特徴が明らかになり、研究は順調に進んでいる。この間の観測、調査、解析から得られた知見は、2019年3月に「早稲田大学レジリエンス研究所、第8回原子力政策・福島復興シンポジウム『東日本大震災と福島原発事故から8年 ~未来世代から原子力バックエンド問題と福島復興を考える~』」、「第129回日本森林学会大会テーマ別セッション『T2 準平衡状態へと分布が移行する中での森林の放射性セシウム研究』」などで発表を行った。こうした成果発表が可能なレベルの研究の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
H28-30年度に実施した調査結果を踏まえて、以下のように調査研究を展開する。 1. 森林渓流からの放射性Csの流出過程のモニタリングを継続し、特に、降雨イベント時の急激な土砂流出に伴う下流への放射性Csの流出に関する調査に重点をおいて研究を進める。具体的には、データロガーを用いた渓流濁度の常時モニタリング、降雨イベント時の集中的な渓流水サンプリングを実施する。上記に加えて、可搬型の精密空間線量測定器を用いた森林内の斜面部から渓流への林床での放射性物質の移動に関する調査実施する。 2.森林内、渓流、中流河川における生物相における放射性Csの分布と濃度を把握し、放射性物質降下直後(2012年)からの変化を明らかにする。このために、下記の生物試料を採取、炭素・窒素の安定同位体比を測定し、各機能群の平均的な栄養段階を評価する。森林サイトでは渓畔の草本、木本の生葉、植食性昆虫、土 壌動物、クモ類、トカゲ・ヘビ類、鳥類。渓流・中流河川部では、 河床の藻類、水生植物、流下有機物(落葉等)、水生昆虫、エビ・カニ類、魚類について測定を行い、インベントリを作成する。 3.水文過程・生物群集における137Cs流出現存量モニタリングのデータベースを構築する。上記データは整理後JaLTER(日本長期生態学研究ネットワーク)データベースサーバに格納していく。 4.調査地の住民の方々に向けて、これまでの調査結果や、研究によって得られた知見を伝えるための会合を、住民の方々と協議しつつ開催する。
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Research Products
(8 results)