2016 Fiscal Year Annual Research Report
猫伝染性腹膜炎の治療法・予防法の確立-基礎的開発から臨床試験の実施まで-
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16H05039
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
宝達 勉 北里大学, 獣医学部, 教授 (00129264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 友美 北里大学, 獣医学部, 准教授 (20525018)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 猫伝染性腹膜炎 / コロナウイルス / 猫 / 分子標的薬 / 抗ウイルス薬 / TNF-α |
Outline of Annual Research Achievements |
致死性コロナウイルス感染症である猫伝染性腹膜炎(FIP)に対する有効な治療法は存在しない。FIPは飼い猫の死亡原因の上位に位置し、1歳以下の幼猫では第1位の死亡原因である。従って、獣医臨床の現場ではFIP治療法の確立が望まれている。我々の研究グループはFIPの治療法および予防法を開発するため、FIPの病態悪化のメカニズムを研究してきた(Takano et al., 2007. Virology 364:64-72, 他7報)。その知見を踏まえて、2011年以降、FIP治療薬および予防薬の同定または開発を試みてきた(Takano et al., 2013. Antiviral Res 99:100-107, 他6報)。これまで、抗FIPV薬を複数同定しており、FIPの治療を目的とした分子標的薬(抗ネコTNFキメラ抗体)を開発した。また、FIPV感染症に特化した細胞性免疫誘導型ワクチンも開発した。これらの薬剤・ワクチンをFIP発症猫に投与すれば、症状の改善または発症を予防できる可能性が示唆される。そこで、我々は、本研究で同定・開発した薬剤がFIPの治療・予防に有効であるか否かを明らかにするとともに、これらの薬剤を実際に治療・予防に応用するためのプロトコルの確立を検討することにした。我々は試験管内においてFIPVの増殖を抑制する薬剤を選別する実験を実施し、その結果、新規の抗FIPV薬をいくつか同定した。今後は、それらの薬剤の中でFIPVの増殖を強力に抑制するものを選別し、その作用機序を検討する。さらに、FIP発症猫にその薬剤を投与することで治療効果が得られるか否かについても併せて検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在は、FIP治療薬の候補を選別する段階である。我々は、FIP治療薬として応用できる可能性が非常に高い数種類の薬剤を同定もしくは開発した。平成29年度以降は、本製剤をFIP発症猫に投与して治療効果が得られるか否かを確認する実験を予定している。治療実験に使う製剤のうち、抗TNF-α抗体は、すでにFIPに対する治療効果を確認している。即ち、抗TNF-α抗体と本研究において同定した薬剤を併用することで更なる治療効果が期待される。上述の内容を考慮すると、本研究は予定通りに順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は、我々が同定・開発したFIP治療薬をFIP発症猫に投与して治療効果が得られるか否かを検討する。具体的には、野外に多く存在するI型FIPVをSPF猫に攻撃し、FIP発症猫を作出した後、過去に報告されているFIP発症猫で増加が認められた因子(α1-AGP、VEGF、SAAなど)の変動を確認する。これらの因子の上昇と臨床症状からFIPを発症したと判断された猫に対して、同定・開発したFIP治療薬を投与し、その治療効果が認められるか否かを継時的に調査する。抗ウイルス薬を使用する場合は、唾液、糞便および血液中のウイルス遺伝子量を測定することで、その効果が発揮されているか否かを検討する。治療実験において、十分な効果が得られたものについては、北里大学付属動物病院もしくは周辺の動物病院においてFIPと診断された猫に投与して、治療効果が得られるか否かを確認する。
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Research Products
(3 results)