2017 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザワクチンの効果を高める腸内細菌の同定
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16H05193
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
一戸 猛志 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10571820)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
低温環境下(6℃)でマウスを31日間飼育すると腸内細菌叢が変化し、褐色脂肪細胞や小腸上皮が増殖することにより低温環境へ適応する能力を獲得することが報告されている(Chevalier et al. Cell. 2015)。このことから、外気温が腸内細菌に影響を与えることにより、インフルエンザウイルス特異的な免疫応答を制御する可能性が考えられた。そこでマウスを4℃、22℃、36℃で一週間飼育した後、非致死量のインフルエンザウイルスを経鼻的に感染させると、36℃で飼育したマウスのウイルス特異的なCD8陽性T細胞応答が有意に低下していた。インフルエンザウイルスは、36℃で飼育したマウスの肺で効率よく増殖していたことから、36℃で飼育したマウスはインフルエンザウイルスの感染に対する粘膜免疫応答のみが影響を受けていることが明らかとなった。次に各温度で飼育したマウスの盲腸内の糞便からDNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて腸内細菌叢のメタ16S rRNA解析を行った。予想に反して4℃や36℃で一週間飼育したマウスの腸内細菌の数や割合に顕著な変化は認められなかった。次に各温度で飼育したマウスの摂食量を調べると、室温で飼育したマウスと比較して36℃で飼育したマウスでは摂食量が約50%、体重が10%低下することがわかった。そこで、22℃で飼育したマウスの餌の量を自由摂食の半分量に制限すると、自由摂食のマウスと比較して、食事制限を受けたマウスではインフルエンザウイルス感染に対する粘膜免疫応答が有意に低下することが分かった。興味深いことに、自由摂食のマウスと食事制限を受けたマウスを並体結合により血流を共有させて、インフルエンザウイルスを感染させると食事制限を受けたマウスのウイルス特異的な免疫応答が回復した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
低温環境下(6℃)でマウスを31日間飼育すると腸内細菌叢が変化し、褐色脂肪細胞や小腸上皮が増殖することにより低温環境へ適応する能力を獲得することが報告されていたため(Chevalier et al. Cell. 2015)、H29年度には、抗生物質による腸内細菌叢の変化(dysbiosis)のみならず、外気温による影響を調べたところ、非常に興味深い予想に反する結果を得ることができた。具体的には、マウスを4℃、22℃、36℃で一週間飼育した後、非致死量のインフルエンザウイルスを経鼻的に感染させると、36℃で飼育したマウスのウイルス特異的なCD8陽性T細胞応答が有意に低下していた。インフルエンザウイルスは、36℃で飼育したマウスの肺で効率よく増殖していたことから、36℃で飼育したマウスはインフルエンザウイルスの感染に対する粘膜免疫応答のみが影響を受けていることが明らかとなった。次に各温度で飼育したマウスの盲腸内の糞便からDNAを抽出し、次世代シーケンサーを用いて腸内細菌叢のメタ16S rRNA解析を行った。予想に反して4℃や36℃で一週間飼育したマウスの腸内細菌の数や割合に顕著な変化は認められなかった。次に各温度で飼育したマウスの摂食量を調べると、室温で飼育したマウスと比較して36℃で飼育したマウスでは摂食量が約50%、体重が10%低下することがわかった。そこで、22℃で飼育したマウスの餌の量を自由摂食の半分量に制限すると、自由摂食のマウスと比較して、食事制限を受けたマウスではインフルエンザウイルス感染に対する粘膜免疫応答が有意に低下することが分かった。興味深いことに、自由摂食のマウスと食事制限を受けたマウスを並体結合により血流を共有させて、インフルエンザウイルスを感染させると食事制限を受けたマウスのウイルス特異的な免疫応答が回復した。
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Strategy for Future Research Activity |
生まれつき常在菌を持たない無菌マウスにおいても同様に、インフルエンザウイルス特異的免疫応答が減弱しているかを確認するために、C57BL/6無菌マウス(三協ラボサービス)とSPF マウスに非致死量のインフルエンザウイルス(A/PR8)を経鼻的に感染させて、感染7, 14, 21 日後の血中のウイルス特異的IgG, IgA 抗体価をELISA 法で、肺のウイルス特異的CTL をH-2Db Influenza NP Tetramer(MBL)による染色後のフローサイトメトリー解析で、肺胞洗浄液中ウイルス力価はMDCK 細胞を用いたプラークアッセイ法で測定する。これにより、SPF マウスと比較して無菌マウスでインフルエンザウイルス特異的免疫応答の低下が認められた場合、ヒトの糞便懸濁液またはSPF マウスの糞便懸濁液を無菌マウスへ投与して、腸内細菌を6週間かけて生着させる(それぞれを、ヒト腸内細菌移植マウス、SPF 腸内細菌移植マウスとする)。インフルエンザウイルス感染後、ヒト腸内細菌移植マウス、SPF 腸内細菌移植マウス、無菌マウスと比較して、ヒト腸内細菌移植マウスやSPF 腸内細菌移植マウスでウイルス特異的なIgG, IgA, CTL 応答が回復するかを確認する。また腸内細菌叢由来代謝産物が、インフルエンザウイルス特異的な免疫応答に影響を与えている可能性を検討するため、Abxマウスに、酪酸、酢酸、プロピオン酸、吉草酸、乳酸を投与し、非致死量のインフルエンザウイルスを感染させて、感染7, 14, 21 日後の血中のウイルス特異的IgG, IgA 抗体価をELISA 法で、肺のウイルス特異的CTL をH-2Db Influenza NP Tetramer(MBL)による染色後のフローサイトメトリー解析で、肺胞洗浄液中ウイルス力価はMDCK 細胞を用いたプラークアッセイ法で測定する。
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Research Products
(27 results)