2016 Fiscal Year Annual Research Report
The pathophysiology of diabetic tubulopathy and therapeutic application
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16H05315
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
脇野 修 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (50265823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 一宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30424162)
伊藤 裕 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40252457)
徳山 博文 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50276250)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 糖尿病性腎症 / 肥満関連腎症 / ニコチン酸代謝 / Rho / mDia / PHD2 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度はdiabetic tubulopathyの詳細な病態像を明らかにする。1.ニコチン酸代謝異常 2.Rho/Rhoキナーゼ経路の活性化 3. 腎虚血とミトコンドリア障害 4.SGLT2活性化とmTOR経路の活性化および尿細管細胞肥大について更に詳細な検討を加えた。まずニコチン酸代謝異常に関しては、2つの大きな変化を捉えることができた。一つは我々が注目するNMNの合成酵素であるiNAMPTのdiabetic tubulopathyにおける意義である。この発現の欠乏は糖尿病性腎症における腎線維化に関与する可能性を明らかにした。NMNは糖尿病早期より低下するが、線維化は後期の変化であり、tubulopathyの最終段階の変化と考えた。その一方でiNAMPT欠損マウスの検索でSirt6の発現低下が顕著であり、この低下が早期に認められる基底膜の肥厚に関与すると考えられた。さらにひとつの変化はNMNの早期投与の検証の開始である。STZ誘発の腎障害においてNMNを糖尿病発症4週にて投与を開始し、1ヶ月投与し投与中断し、尿蛋白が生じるかどうかを検証している。現在その減少を一部認めている。Rho/Rhoキナーゼ経路の活性化の活性化に関する検討も同時に行った。高脂肪負荷のマウスにおいて高脂肪負荷4週後で近位尿細管細胞の細胞増殖が認められ、この原因としてRhoの活性化およびその下流のmDiaの発現上昇が重要であることが明らとなった。また、腎虚血とミトコンドリア障害については肥満状態において、尿細管肥大、そして相対的虚血状態が糖尿病性腎症の早期に既に認められることがあきらかとなった。このこの状態はPHD2の活性化を引き起こしていることも明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
iNAPT欠損マウス、PHD2欠損マウス、dominant negative RhoAマウスそれぞれの遺伝子欠損マウスの供給が順調であり、この研究の最も重要な部分の結果が安定している。また研究を担当する者の技術が安定してきており、データの再現性が確保されている。そして免疫染色やimmunoblottingに利用すべき抗体も品質がよく結果が安定している。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病性腎症発症前における治療介入がその後の腎症発症に影響を与えるか否かを検証する。STZ誘導性糖尿病ではSTZ投与後8週で血糖上昇が認められ、24週でアルブミン尿の出現が観察される。そこで8週以降に一か月間インスリンで血糖を正常化したのち、インスリンの投与を中止しその後の腎症の発症の有無を検討する。すなわち糖尿病性腎症におけるlegacy effectの存在を検証する。またHFD負荷マウスでは負荷後4週でアルブミン尿を認める。そこで負荷後4週前のどこかの時期に低脂肪食(LFD)に2週間変換しその後の腎障害の発症への影響を検討し、HFDメモリーの存在を検証する。さらに尿細管の代謝異常を早期より是正する治療を検証する。一つはNMNの補充である。経口もしくは腹腔内注射を行い早期より代謝障害の是正を行う。また虚血の是正のために我々が明らかとした消化管ホルモンのグレリンの効果を検証する。またRhoの活性化を抑制する目的でスタチンの大量投与を行う。以上の検証を肥満型の糖尿病マウスのモデルであるdb/dbマウスを用いても行う。4週後には血糖の異常が認められるが、その時期に上記の治療法を試みる。体重抑制は不可能であるが、腎症の発症抑制が可能であるかどうかを検討する。また2年目にはヒト検体の収集も開始する。糖尿病もしくは肥満患者の組織をPHD2、Sirt1、Sirt6、mDIA、などの機能蛋白の発現を中心に検討する。腎症の程度との関連を検討始める。最後にSGLT2の糖尿病の近位尿細管における発現上昇についてそのメカニズム、および糖尿病性腎症の病態に及ぼす影響につき検討を加える。とくにin vitroの検討を行い、SGLT2が尿糖か血糖かのどちらに反応して発現が上昇するか明らかにする。また、その分子機序についても検討する。さらに早期のSGLT2阻害が糖尿病腎症の発症を抑制するか検討する。
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Research Products
(16 results)