2016 Fiscal Year Annual Research Report
味覚・嗅覚の感覚入力による口腔機能の出力制御メカニズムの解明
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16H05541
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古郷 幹彦 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (20205371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 晋 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (00367541)
山西 整 大阪大学, 歯学研究科, 招へい教員 (20397780)
青海 哲也 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (40713194)
宮川 和晃 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (50635381)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 咀嚼 / 嚥下 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではこれまで継続してきた当研究室での研究成果を基にして、ラットを用いて多くのトライアルを行った。視床下部外側野において統合・伝達された味覚・嗅覚入力が、咀嚼に加えて嚥下活動という主要な口腔機能の発現をどのように調節するか、またこれらの活動を形成するセントラルパターンジェネレータ(CPG)をどのように修飾するか、その脳内メカニズムを多角的なアプローチによって解明することを目的としている。平成28年度は、嚥下運動に関する研究を先行させた。味覚障害、嗅覚障害が嚥下運動に及ぼす影響について検討を行った。妊娠後期(E15~)Wistar系ラットを亜鉛欠乏飼料で飼育して出生した味覚障害および生後8-10日齢に鼻粘膜処理し4-5日経過させた臭覚障害モデルラットからin situ標本を作成した。咬筋、舌筋、咽頭筋、食道括約筋から筋活動はWire電極を留置して記録した状態で、嚥下活動の誘発を行った。嚥下活動の誘発は剖出した迷走神経上喉頭神経に対する電気刺激(2-5V,1ms)によって行った。サブスタンスPおよびセロトニンの投与前後の嚥下活動を解析すると、味覚障害および臭覚障害モデルラットにおいてもサブスタンスPおよびセロトニンが、嚥下活動開始のトリガーシグナルに対して拮抗的に制御していることが明らかとなった。嚥下活動の際の筋活動のシークエンスには変化がなかったことから、いずれの神経伝達物質受容体も、嚥下活動開始の閾値を制御しているものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
味覚障害および臭覚障害モデルラットにおける、嚥下活動のトリガーシグナルに対するNK1受容体およびセロトニン受容体の役割を明らかにすることができ、これはほぼ計画通りの進捗である。in situ標本における筋活動シークエンスの検討は予定より前倒しで行った、一方でOrexin-A、Orexin-Bの投与実験は次年度に繰り越すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には計画通りであるが、一部の研究の実施予定が前後する。まず、前述のOrexin-A、Orexin-Bが味覚障害および臭覚障害モデルラットの嚥下活動発現に果たす役割を解明した後に、嚥下活動を発現するために最小単位となる延髄スライス標本を用いて細胞レベルにおいて、味覚障害が孤束核嚥下関連ニューロンおよび三叉神経中脳路核ニューロンの細胞膜特性に及ぼす影響を調べる。これらの電気生理学的なアプローチに加えて、免疫組織学的も加えた多角的なアプローチで、研究目的を達成していく。つまり、生後1-4日齢のwister系ラットを用い、三叉神経中脳路核を含む脳幹スライス標本および嚥下活動が誘発可能な延髄スライス標本を作製する。それぞれのスライス標本に対してOrexin-A、 Orexin-B受容体の免疫染色を行い、三叉神経中脳路核と孤束核内におけるOrexinレセプターの局在と、嚥下および咀嚼関連ニューロンの局在の関連性についての免疫組織学的検討を行う。嚥下関連ニューロンについては、バイオサイチン(0.8%)を溶解したピペット内液を用いてパッチクランプ記録を行う。ギガシール樹立後細胞膜のラプチャー前にon cellモードにて、スライス標本から嚥下性活動を誘発し嚥下関連ニューロンと確認できた場合にのみ細胞膜のラプチャーを行い、これによって嚥下関連ニューロンに対する選択的なバイオサイチンによるマーキングを行う。その上でOrexin-A、 Orexin-B受容体に対する免疫染色を行うことで、これらの細胞上にOrexin-A、 Orexin-B受容体が存在するか否かを確認する。
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